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「物語の幕間〜彼氏・彼女の日常」(セーラー服と雪女 第19巻)  作者: サナダムシオ


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⑥ ただ今謁見中

「我が犬族の歴史を語ってやる。」と言って話し出した犬王アヌビスが、途中でボンヤリしだした。


 彼は目の前の、赤い髪のメイド服を着たハダカ猿族のメスに、ウットリと見惚れていたのだった。


 今はまさに、そのニンゲンの謁見中である。

 その娘は、猫王ミケーネが、「面白いニンゲンを見つけたから、犬王にも会わせたい。」と言って連れて来たのであった。


 その者は、ヘブライ語を理解していたので、意志の疎通には事欠かなかったが、それ以上に、他種族に向けてのテレパシー能力が、抜きん出ていた。


 ナルホド確かに面白い。

 それに、何だか、ちょっとカワイイ。


 興が乗った犬王は、ベラベラと言わなくてもイイような秘密まで、喋ってしまった…ような気がした。


 後でミケーネに聞いたのだが、彼女に対しては、どんな嘘も無意味なんだそうな…道理で素直な気持ちになってしまうはずである。


 彼女の名は真田由理子。

 ハダカ猿族が世界の覇権を取った、並行宇宙からやって来た。因みに、彼女の姉も兄も、特殊なチカラを持つ能力者だという。


 特に兄は、アノ惑星大移動を行なった、張本人なんだそうな。

 先程、そう自己紹介を受けたばかりだった。


 なのにもう犬王は、舌を出してハァハァ言いながら、ブンブン尻尾を振る自分を、押さえきれなくなっていたのだった。


 ひょっとして、彼女のカラダから、何らかの中毒性のあるフェロモンでも、出ているのではあるまいか?

 今、彼女が両手を広げて「おいで」と言ったら、彼はもう、後先考えずに、走って行きそうな気持ちだった。


 何だ、この感情は?犬王は自分で自分が分からなくなりそうだった。つまり混乱していたのだ。


「な、面白いだろう?」

 彼女の隣で、ミケーネがしてやったりの顔をして、すっかり彼女の虜になっている彼にそう言った。


「お、おお、確かにな?」

 犬王はそう言うのがやっとであった。 


 そうなのだ。

 由理子は"人たらし"である前に、"動物たらし"でもあるのだった。


「可愛いワンちゃんね?」

 優しい眼をした彼女が、出し抜けにそう言った。

 犬王は、思わず王座から立ち上がり、二三歩前に歩き出してしまったが、そこで辛くも踏み留まった。


 しかし、彼女がそう言うのも無理も無かった。

 何故なら彼の見た目は、額に白い麻呂眉毛の生えた、黒い柴犬だったのだから…。


「あら、怒ったのなら、ごめんなさい。王様に対してカワイイなんて失礼よね?」

「わ、分かればイイのだよ。」

 強がって誤魔化す犬王。


 だが彼の内心は、彼女に抱きつきたくて仕方がないのであった。

 それを見ながら、クスクス笑うミケーネ。

 まったく、ワルイやつである。


 しかし、この娘なら、ひょっとして、あの野蛮なハダカ猿族と、我々犬族との、橋渡し的な役割が出来るのかも知れないな。


 犬王アヌビスは、大真面目に、そう思ったのだった。



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