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「物語の幕間〜彼氏・彼女の日常」(セーラー服と雪女 第19巻)  作者: サナダムシオ


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㉑ 彼の意図

 雪子はゆっくりとその場から後ずさると、光学迷彩で馬車に擬装してあった、黄色いビートルに戻って来た。


 彼女は、運転席に座ると、深呼吸をした。

 そして、出来るだけ冷静さを保とうとした。

 今のはナニ?

 一体全体どういう事なの?


 アドルフ・ヒトラーの、政治的指導者への第一歩を後押ししたのは、あのサン・ジェルマンだったって事?


 これは是非とも早急に、本人にその意図を確かめなくては!彼女はそう考えると、直ちにビートルのセンターコンソールに、出発地点の座標を入力したのだった。


 名護屋テレビ塔の亜空間レストランには、サン・ジェルマンが、いつもと変わらぬ笑顔で待っていた。


「おや、お早いお帰りですねえ?」

「…伯爵、一つ訊きたい事が有るの。」

「どうしました、そんなに血相を変えて?」


「アナタがアドルフ・ヒトラー少年に、政治的指導者になるよう、促したの?」

「…。」

「一体、何だってそんな事を…。」

「…。」

「何とか…言ってよ!アナタの返答次第では…アタシ…。」


「私の返答次第では、どうされますか…私を殺しますか?」

「…。」


「私が如何に不老不死と言えども、頭を胴から切り離して、炭化するまで焼けば、復活は不可能になります…どうします?やりますか?」


「そんな事…大好きなアナタに…出来る訳無いじゃないの!」

「…それを聞いて、ホッとしました。では、私の言い訳を聞いて頂けますか?」

「そんなの…当たり前でしょ!」


「では神に誓って言います…神が存在したらですけど。私はあの時が、掛け値無しの、アドルフ・ヒトラーとの初対面だったのです。」

「…そんな?」


「当時の彼は、傷つき易い繊細な心を持った、ただの絵描きに憧れる少年でした。そして当時の私は、まだ駆け出しの、タイムトラベラーでした。」

「…。」


「私はただ、そんな悩める少年に、良かれと思ってアドバイスをしたのです。信じて下さい。私の意図は、それ以上でも、それ以下でもありません。」

「…信じ…たいわ。」


「私とて、まさか将来的に彼が、あんなに残虐な行為に走るような暴君になるとは…夢にも思わなかったのですよ?」

「そう…なのよね?」


「そしてまさか、ほとんど全ての並行宇宙の自分が、同じ行動をとるなんて…想像出来ると思いますか?」

「それは…確かに…。」


「そして、更に言い訳をさせてもらえるのなら…。」

「何?何なの?」

「あの大虐殺のきっかけを与えた者が、他に居るはずなのです。」


「それって、どういう…?」

「アレと同じ事ですよ。」

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