⑰ 未来への介入
「ねえ、ミケーネ。」
猫撫で声で訊く由理子。
「緊急に、ちょっとしたお願いが、有るんだけど…。」
「どうしたんだい、急に?」
「この船に、武装は装備されているかしら?」
「…まあ、自衛用にカンタンなものなら。」
「ミサイルとか?」
「有るよ。でも1発だけだよ。」
「もしかして、レールガンとか?」
「それも有るね。やはり使えるのは、出力的に一回だけ。」
「良かった。じゃあまず、アレにミサイルを1発お見舞いして欲しいの。」
由理子が件の隕石を指差す。
「イイのかい?歴史に影響が出るかもよ?」
「イイのよ。それがワタシたちの運命なの。あの"虚ろ船の事件"の時と同じなのよ。いいから早くやって頂戴!」
突然の由理子の剣幕に、恐れをなしたミケーネは、直ちに目標に照準を合わせ、ミサイルを発射した。
ミサイルは隕石に見事に命中した…が、まだ破片の一部が地球へ落下しつつあった。
「まだ直径15m以上はあるわね?次はレールガンよ!」
「はいよ!」
もうアレコレ迷っている時間は無かった。
ミケーネは直ぐ様、照準を合わせて、残りの隕石を撃った。
隕石は、更に半分ほどのサイズになったが、まだ地球への落下は続いていた。
「もう、打つ手無しなの?」由理子は半泣きだ。
「打つ手なら…あるさ。」
ミケーネが意味有り気にニヤリと笑った。
彼は宇宙船の前面バリアの出力を、最大に調整した。
「えっ、ちょっ、まさか!?」
イヤな予感がする由理子。
「由理子。キミが言い出した事だ。覚悟を決めろ!」
ミケーネはそう言うと、超電導エンジンを出力最大にした。
すると、宇宙船は全速力で、大気圏に突入した隕石を追いかけて行き、ついには追いついて、最後には後ろからソレに追突したのだった。
船内に大きな衝撃が走った。
シートベルトを付けて居なかった由理子とミケーネは、船内のアッチやコッチに飛ばされた。
まあこんな事もあろうかと、ミケーネがそこら中にエアバッグが装備していたので、二人とも大怪我はしなかったはずだが…。
しかし、それだけでは済まなかった。
確かに隕石は粉々になったが、落下と衝突の衝撃波は、ロシアのチェリャビンスク市一帯に、大きな損害をもたらしたのだ。
そこら中の窓ガラスが割れまくり、1000人以上の人々が負傷したのだった。
それでも、当初の隕石のサイズから考えれば、被害は最小限で済んだと言って良いだろう。
ソレもコレも、由理子とミケーネという、尊い犠牲のお陰でなのである…合掌。




