⑭ 彼女の行きたい場所
「ところで弓子さんは、どこへ行きたいんだい?」
彼女を助手席にエスコートして、運転席に座ると、隣を見ながら優しく尋ねる雪村。
「そうねえ。ベタにディズニーランドなんてどうかしら?もちろんアメリカ合衆国カリフォルニア州アナハイムのね!」
「おお、THE元祖ディズニーランドか。イイね~。たまには羽根を伸ばしに行こうか。」
雪村はナニ食わぬ顔で返事をしたが、内心とても驚いていた。
「せっかくタイムマシンを借りたんだから、未来のディズニーに行きましょう。アナタ、みんなのために働き過ぎなんだもの、たまにはそんなムダ遣いも許されるでしょう?」
「…そう…だよねえ?」
雪村はいよいよ顔色を変えつつあった。
「じゃあ早速参りましょう!」
久しぶりに休暇らしい事ができそうで、弓子はノリノリだった。
「未来のいつにする?」
「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2の、更に10年後なんてどうかしら?」
それは奇遇にも、彼の上の妹と同じ発想だった。そして更にそれは…。
「日付は今より少し戻して前乗りの12月23日で。」
「了解!」雪村はそう言うと、早速センターコンソールの操作パネルに以下のように入力した。
2025年 12月23日 火曜日 16時00分
北緯 38度 81分
西経 117度 92分
しかし、平静を装いながらも、彼は内心ドキドキしていたのである。
「3泊ぐらいしたいんだよね?」
「あら、凄いわね。どうして分かったの?」
「…いや、何となくね。それじゃあ、レッツゴー!」
雪村は時空転位装置のスイッチを入れた。
…さて、コレは、この時点から数時間前の出来事である。
雪村は、サン・ジェルマンから赤いビートルを借りるために、名護屋市の久屋大通公園内のテレビ塔にある、亜空間レストランを訪れていた。
タイミング良く、そこには杉浦鷹志、真田由理子、サン・ジェルマンの三人が揃っており、前述のように、すんなりとビートルを借りる事が出来た。
しかしながら、雪村が驚いたのは、帰り際にサン・ジェルマンから言われた事だった。
「弓子さんはきっと、2025年のクリスマス前後の時空の、本家ディズニーランドに行きたい、と言いますよ。」
「えっ、そうなんですか?」
「ですから、その時空でのディズニーランドホテルの予約を取っておきましたよ。23、24、25日の3泊です。もちろん、朝食、夕食、アーリーエントリーに、ファストパスもつけてね。あと、この使用限度無制限のクレカも、持って行きなさい。」
彼はそう言って、雪村に黒いカードを渡した。
「何から何まで、ありがとうございます。でも予想がハズレたら、どうするんです?」
「ハズレるものですか。私を誰だと思ってるんです?」
サン・ジェルマンはそう言うと、ニヤリと笑った。
「アナタは充分に働いた。ゆっくり二人で休みを満喫して下さい。今回の手廻しは、私からの、ほんのお礼の気持ちですよ。」




