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「物語の幕間〜彼氏・彼女の日常」(セーラー服と雪女 第19巻)  作者: サナダムシオ


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⑬ 酒井弓子の願い

 酒井弓子は、もともとごく普通の女の子だった。

 いやむしろ、どちらかと言うと、少女時代は白血病を患ったせいもあり、病弱であった。


 だから不死身でもなければ、不老不死でもない。

 ただ少しだけ、ヒトのウソが見抜ける才能に恵まれているだけだった。


 それだけでは、何かと生きて行く上で不便だろうと、後から真田雪子という超能力者に、念動力の使い方を教えてもらったのである。


 因みに彼女のパートナーは真田雪村。

 元々は、同じく普通の少年であった。


 しかしそれは過去のことで、現在は以前憑依された四次元人の影響で、すっかりニンゲン離れした能力を身に着けてしまっていた。しかもその正体は、鳳凰らしい…本人には自覚無しであるが。


 そんな万能感を持った彼ですら、実は不老不死ではない。

 将来ちゃんと85歳で亡くなる予定だ。

 亡くならないと、時空を遡って、アノ真田雪子が生まれないという、ややこしい運命なのだ。


 だから弓子との大切な逢瀬の時間は、有限で貴重なのだった。

 どこかの誰かさんのように、不老不死ではないのだから…。


 なのにお人よしの彼は、ヒトに頼られると断れない。

 文字通り世界の果てまで行って、助けてしまうのだ。

 今まで何度もそんな事を繰り返して来た。

 だから最近の弓子は、らしく無い事に、少々イライラしていた。


「ねえ、雪村さん…。」

 ある日彼女は提案した。

「ちょっと伯爵から、ビートルを一台借りてきてよ。」


「いいけど、どうして?」

「たまにはアナタと、誰にも邪魔されない所に行きたいの。」

 もっともなハナシである。

「年末年始くらいは、私のワガママに付き合ってくれてもいいんじゃない?」


「そうだね。うん、そうしようか。」

 彼は基本的には、弓子ファーストの思考なのである。

 ただいつも、何かと邪魔が入るだけのことであった。


 だから彼も、心のどこかで、早くそうしたかったのだ。

 それは1990年12月28日の金曜日。

 午前9時のことだった。


 そこで早速、彼はサン・ジェルマンから赤いビートルを借りて来た。


 ソレは本来、彼の下の妹専用の仕様だったが、幸いな事に、由理子も兄から使用目的を訊いて、そういう事だったらと、快く譲ってくれたのだった。


 由理子もまた、基本的には、兄思いの妹なのである。いやむしろ、つい先日までは、極度のブラコンと言っても差し支え無い程であった。しかしながら、それは大好きな杉浦鷹志の出現で、改められる事になった。だから現在は、目出度く普通の兄思いの妹となっている。

 

 因みに彼には、もう一人兄思いの上の妹がいるが、安定した職業に就き、成人して実家を出てからは、すっかり自由人である。そしてつい最近まで、何の音沙汰も無かったのだった。

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