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第25話 一方、『武器』を手にした黄昏の盟約

「なんというか……『三賢精』やはり、賢いのう……」

「ギデオン。敵を褒めたい気持ちはわかるけど……」

「組織の頭脳の部分がしっかりしている。それがどれほど、兵を安心させるか。という話じゃ」

「なるほど」


 ゲートの建設現場。


 悪霊たちは、定期的に精霊世界に戻り、『精霊力』を補充しないと存在を保てない。


 そのため、精霊世界と現実世界をつなぐ『裂け目』……を模した『ゲート』を作り、『行き来できるポイント』を増やす。


 効率的に陣地を広げるため、どの場所に作るのか。というのは非常に重要な点で、リリアたち『黄昏の盟約』は、そのゲートの反応を見つけ次第、壊しまくるというモグラたたきがこれまでのものだった。


「敵の超火力が『本物』なら、戦略を変えるまで。か……」


 ゲートの建設現場。


 すでに、悪霊たちは誰もいない。

 まだゲートそのものは完成していないため使えないが、悪霊たちは『強制帰還』の精霊術があるため、それで精霊世界に帰ったようだ。


「……このゲートを攻撃することはできない。このゲートは今、『悪霊たちがとらえた人間たち』につながってる。この『場』そのものがつながっているため、傷をつけたら、人間たちからエネルギーを吸い上げて修復を行う」

「吸い上げたら、人間たちはいずれ死ぬだろうということじゃったな……精霊術。魔法よりも多種多様じゃな」


 目の前にあるゲートは、今までは、その場で攻撃して潰していた。


 その時は、接続力が弱い『木片』を武器に当てて攻撃していたため、本来なら超火力の攻撃でもゲートにはなかなか傷がつかず、壊すのは大変だった。


 しかし、ユグドラシルの武器があれば、ゲートも壊すのは簡単だ。


 だが、今、『ゲートを傷つけること』はできない。


 このゲートは、『悪霊がとらえた人間』につながっており、傷がついたら、それを人間たちから何らかのエネルギーを吸い上げて自己修復する性質を持つ。


 そのため、ギデオンたちの超火力で攻撃すれば、それだけで、『つながっている人間たちは死ぬ可能性がある』のだ。


「精霊術。なかなか多種多様じゃが……一つ引っかかる。何故、ゲートにその術をつなげたのかということ。悪霊本体につながっておれば、ワシらは悪霊にすら攻撃ができなかったはず」

「ゲートという、『大型の施設』にしか機能を組み込めない可能性はある。となると、とらえているというのも、『吸い上げる機能がある部屋』に閉じ込めているというだけで、ゲートと個人がつながっているわけではない可能性もある」

「ふむ……三賢精の一人が、確か『ゲートの発明』でその地位にいると誰かが言って負った記憶はあるが、そいつが『ゲートに機能を追加した』と考える方がよさそうじゃな」

「それくらいの技術力がないと、これほどの精霊術はすぐに仕込めないはず。このゲートはまだ完成してないから、精霊世界とはつながっていない。でも、遠くにいる現実世界の人間とつながりを持つ機能はある」

「明らかに、これまでと求められる機能の性質が違うか。組み込めるとなればそのレベルになるじゃろうな」


 ギデオンもリリアも、特別、賢いわけではない。


 しかし、これまで戦ってきたことで、悪霊側の情報は持っている。


 そこから、なんとなくだが、わかっていることがある。


 要するに。


 悪霊側は、目的を達成するための技術として、ゲートなどを開発するだけの『科学力』を持っている。

 それそのものは日進月歩であり、決して技術が完成しているわけではない。


 何らかの制約があり、そしてそれは、『技術』であるがゆえに、『人間でいうところの魔道具』と似たような制約と機能を持っていることが多い。


「まずは、人間とつながっている精霊術がどんなものなのか。調べる必要があるようじゃ」

「もしも、吸い上げる部屋に閉じ込めておく必要があるなら、今度はその部屋を探し出して壊せば、ゲートを攻撃しても問題はない。ただ、ゲートと人間がつながっていれば本当に『厄介』だけど……」

「まぁ、そこは探し出してから考えるほかあるまい」

「確かに、悪霊たちも、ゲートそのものを動かせるわけじゃないし、場所は地図に記録しておこう」

「記録する……のはいいが、『悪霊が来たら感知する魔法』とかはないのか?」

「そんなものはない。必要になると思ってなかったし」

「……ワシらも行き当たりばったりじゃな」

「否定はしない」


 3000年。ルールが変わらなかったのだ。


 確かにそこに組み込まれる技術は、ある程度の進歩があった故の、『今の戦場』なのだろう。


 しかし、ユグドラシルの加工技術がないというのは、それだけで、『悪霊側も何にリソースを使うのか』を決定的にするのだ。

 時間も資源も無限ではないので、これまでは『高性能のゲートの開発』に目を向けていたが、これからは『特殊機能があるゲート』が出てくるという、そんな話に変わっている。


 それだけの話であり……黄昏の盟約も、悪霊たちも、『今は手探り』であることに間違いはない。


 お互いにとって最も効率的な戦略は何か。


 その上で、どちらが相手を上回るのか。


 敵に攻撃が通用しなかったけど、これからは通用するようになりました。だから無双できます。

 とは、ならないのである。

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