ストルブァンドの調教②
まず肝要なのがどのようなタイミングでこの調教を行うべきであるかという点だ。
調教はむやみやたらに行うべきではないという妖精飼育者や一般的な動物愛好家が散見されるが、私はこれに異を唱えている。
なぜなら世間一般が抱く調教に対するイメージは全くの誤りである場合が多勢を占めているからである。
私に言わせれば調教とは愛なのだ。
その後の妖精の生涯を素晴らしいものにするためにも調教は避けては通れない。
触れ合うことが出来ずに檻に閉じ込められたままの妖精など、私は見るに堪えない。
一時の感情に惑わされて調教を怠るなどと言うのは言語道断で、それは甘やかすばかりで躾をしない怠慢な親と同義なのである!
なので読者諸賢は思いついたタイミングで、あるいは妖精との関係に不満を抱いた段階で即刻調教を開始するのがよろしい!
ストルブァンドに関していえば、方法は極めて単純である。
まずは絶食により、確実にヒキガエル団子を食べさせる。
この時、少量の眠り薬を混ぜるのも効果的である。
眠り薬は薬局で買ってもいいし、手作りしてもいい。
もし近くに迷冥草が生えているならば、それを刻んで絞った汁を加えればいいのだ。
こうしてぐっすり眠ったストルブァンドを結束バンドで拘束し、透明なガラス容器に閉じ込める。
ただし間違っても眠っているストルブァンドに刺激剤を噴入してはならない。
なぜなら眠ったストルブァンドに何をしたところで、彼らはこちらの意図が理解できないからだ。
目を覚ますまで、その愛らしい寝顔を見つめながら愛を語りかけよう。
体紋を褒めてもいいし、なんなら指で優しく撫でてやってもいい。
とにかく今は待つ時である!
そうしてストルブァンドが目を覚ませば、それが調教開始の合図である。
ここからは心を鬼にしてかからねばならない。
まずは指をストルブァンドの口元に持っていく。
ヒキガエル団子で素直にならないような強情なストルブァンドは間違いなく嚙みつこうとするだろう。
ここでさっと手を引き、唐辛子ガスを容器に封入する。
するとストルブァンドは全身の皮膚を襲う焼けるような痛みでのたうち回ることになる。
最初は意味を理解させる程度に封入量を調整し、直ちにヒキガエルガスを封入する。
すると麻薬成分で痛みが和らぎ、ストルブァンドに考える余裕が生まれる。
ここでもう一度指を差し入れ、ストルブァンドの理解度を確かめるのである。
また噛みつこうとするならば、手順を最初からやり直せばよろしい。
コツとしては、言葉が通じないなどという頑固な思い込みを捨てて、優しくこちらの願いを語りかけながら行うことである。
彼らは人間の言葉を魂で理解し、望む通りの行動を取るようになっていくだろう。
そうして従順になったストルブァンドをあなたは優しく褒め、愛で、可愛がればよろしい!
そして反抗や問題行動がぶり返した時にはこの調教の手順に戻ればいいのである。
あの悪名高きマサングド孤児院のシスター、ゴルドゥバァーが遺した言葉はある意味間違いではなかったのだ。
『何度でも繰り返す。貴様が望郷の未練を断ち切るまで、何度でもだ』
シスター・ゴルドゥバァー著
『獄中から子供らに愛を籠めて』より抜粋