ストルブァンド①
読者がまず最初の妖精を何にするか迷っているなら、筆者はストルブァンドを強くお勧めしたい。
ご存知の通り、ストルブァンドは井戸や小川に住み着く大変大人しい妖精である。
妖精飼育初心者でも扱いや入手が容易という点で、ストルブァンドに勝る種は無い!
さらに彼らはその体紋や翅紋も美しく、我々の目をも楽しませてくれる。
捕獲の際には清らかな水辺に阿片を混ぜた魚のすり身を仕掛けて置けばよろしい。
月夜に仕掛けを設置して近くの茂みから観察していれば、彼らがクルクルと踊る様を見ることが出来る。
阿片入りの飼料には、彼らとのその後の関係性をスムーズにする作用もあり一石二鳥である。
最初の二週間ほどは毎日阿片入りの飼料を与え、そこからは阿片入りの飼料をお預けにすればよろしい。
彼らは必ずや読者諸賢が思い描く、理想の伴侶となってくれるだろう!
さて、ここで妖精を迎える時に最も大切な処置について話ておきたい。
それは《《翅を毟る》》ということだ。
阿片で眠る間に翅を氷水に三十分ほど漬けてやれば、その後の出血を最小限に止めることができる。
中には美しい翅を除去することに抵抗を感じる読者もいるであろう。
これはいつでも議論の中心となる難しい問題ではあるが、私は敢えてこの方法を強く勧めたい。
なぜならば、妖精飼育において最も大切なことは、終生妖精を適切に管理することにあるからだ。
平易に言えば「逃げられてしまえば飼育どころではない!」ということである。
彼等のどの種にも共通することだが、信頼関係を築くまでの間は脱走への執着が凄まじいということを覚えておいてほしい。
これを防ぐためにも、筆者は翅の除去を強くお勧めする。
翅を失うは、妖精を喪うに劣る。
まさしく我々が繰り返し聞かされてきたガウストの言葉通りだ!
妖精飼育の第一歩、それはその翅を氷水に漬けて毟り取ることなのだ!