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粉砕男とデモンフローグ

Fとクラナ。久々の再会にれな達は大喜びだった。

Fは事務所のソファーに腰掛け、クラナはれみと一緒に人形遊びを楽しんでいる。

Fは戦いの時と変わらず重々しい表情だが、この和やかな雰囲気に身を投じているのは確かだった。彼の肩からは外よりも力が抜けており、警戒を解いているのが見て取れる。

葵がFの前にお茶を出しながら、穏やかに笑う。

「最近また闇姫が派手にやらかしてるらしいわね。協力してくれてありがとう」

Fは黙ってお茶を受け取りつつも、僅かに頭を下げた。

そこへ、れなが割って入る。

「闇姫め…またあのクソ野郎が迷惑をかけてるのか!次会った時は…バラバラに引き裂いてくれる…」

闇姫の名前を聞いただけで鬼の形相を見せるれな。

彼女と闇姫は、ある事情で凄まじく不仲なのだ。この和やかな雰囲気の中でも、もし闇姫が現れればたちまち戦いが勃発するだろう。

また近い内に、実際に顔を合わせる事になる…そんな予感がしていた。


「そういえば、粉砕男はどうした」

Fがふと呟く。

粉砕男。れな達の仲間の一人の名前だ。彼はつい最近まで事務所にいたのだが、ある依頼の為、遠出しているところだった。

そういえば連絡がない。彼が戻ってきてくれれば、テクニカルシティの守りは安泰だと言うのに。



その頃…。




あちこちが崩壊した石造りの遺跡にて。

二メートルもの大柄な体格の大男が、緑衣の人物達と戦いを繰り広げていた。

「くそ、数が多いな」

彼こそが粉砕男。ある人物に作り出された人工生命体だ。

この遺跡地帯に現れた怪しげな教団の教徒達を倒してほしい、という依頼を受けてここまでやって来た。

あの教徒達は日頃怪しい儀式を行い、その影響で周囲のモンスターが凶暴化しているらしい。彼等を放置すれば、モンスターによる被害が多発するばかり。粉砕男は急いでこの地に足を踏み入れたのだが…思った以上の激戦区に少々驚いていた。

敵の数は多い。彼等は銃を手に建造物の裏側から攻撃してくる。

対する粉砕男は外見通りパワーが自慢だ。この力で遺跡を破壊して教徒達の移動範囲を狭くする事は容易いが、この遺跡を作った古代人への敬意がそれをさせなかった。

彼は一先ず石の壁の裏に隠れ、教徒達の様子を伺う。教徒達は粉砕男を見失い、互いに話し始めた。

「おい。あの大男しぶといぞ。あの方に何と報告する?」

「…俺達は世の裏で暗躍するのが本業。存在を知った者は死んでもらわないといけない。何としても殺すんだ!!」

声を揃えて掛け声を発し、恐らくは次の作戦を練り始める教徒達。次は何をする気だろうか…。

物陰から少し顔を覗かせると…。


「ぐお!?」

思わず声をあげた。



…教徒達は巨大な投石機を用意してきた!!

大きな音が鳴り響き、発射される巨大な岩石!それは遺跡の壁を容易く破壊し、瓦礫を散らしていく。粉砕男は遺跡を壊さないように気をつけていたというのに、敵はやりたい放題だ。粉砕男は残った壁の裏に隠れていくが、見境なく岩石が飛んでくる。

これ以上破壊させる訳にはいかないと、飛んでくる岩石に直進していき…拳を突き出して破壊した!

粉々になる岩石…その瓦礫の中から現れる粉砕男。その姿は、教徒達もしっかりと確認していた。

「出てきたぞ!撃てー!!!」

一斉に飛んでくる銃弾!粉砕男は、その巨体からは考えられない速さで動いて弾をかわしていく。とは言え、相手は銃弾、それも多数…完全に避けきるのは難しい。

腕や足を時々撃たれ、血が噴き出す。筋肉の硬度のおかげで出血を少量に抑えられたが、何度も食らえば…。

そんな考えを振り払うように、粉砕男は腰を落とし、叫ぶ。

「…ふん!!」

…銃弾同士の僅かな隙間を見つけ出した。この隙間を潜れば、高台にいる教徒達にも近づける。

勢いよく地を蹴り、煙を散らしながら飛び出す!こちらに飛び出して迫ってくる大男を前に流石に教徒達は慌てだし、必死に発砲するが…。

「ぐあっ!!」

粉砕男は体の硬度一つで彼らに衝撃を与え、気絶させた。

残った教徒達は剣を片手に襲いかかってきたが、真っ向勝負にはめっぽう強い粉砕男からして見れば蝿が飛んでくるようなもの。

彼らの剣を殴り壊し、軽く蹴りを決めて彼らも気絶させた。

ここは片付いた…あとはこの遺跡のどこかに潜んでいるであろう親玉の場所を突き止める任務が残ってる。

近くの扉を潜り、粉砕男は身重に進んでいく。


遺跡の通路を進み、苔が生えた地面に重い体重を預け、遺跡の各地に設置された松明の熱で体温が上がるのを感じる。神聖な場所だが、こんな所にあんな野蛮な連中が潜んでいたとは、何だか嫌な気分だった。


しばらく歩いていくと、部屋に辿り着く。木のテーブルに椅子が置かれていて、明らかに最近設置された物だ。あの教徒達の物だろう。

壁には妙な写真が飾られていた。

一つは…黒い蛙の姿をした怪人の写真、もう一つは青い肌の大きな怪人の写真。

両方とも顔の部分に赤いバツ印が刻まれている。この二人の怪人…粉砕男は見覚えがあった。

この二人はつい最近戦った怪人達だ。どちらも強敵だったが、れな達と力を合わせて何とか勝利を収められた。

戦いの記憶を思い返し、粉砕男の肩にグッ、と力が入る。


…そういえばこの二人には、共通の人物が部下として存在していた。その人物は戦いが終わった後も囚われる事なく、上手い事逃走していった男だった。

そいつの存在が粉砕男の脳裏によぎった時…。


「おや、奇遇ですね。粉砕男さん」

振り返る粉砕男!


後ろに立っていたのは…まさに「その人物」だった。


それは、異形の怪人…蛙のような姿をしているが、黒い鎧を身に纏っている。背中には赤い翼、そして紫の肌。悪魔のような姿だ。

彼の手には剣が握られており…粉砕男に向けられていた。

「…デモンフローグ…こんな所で何をしてる?」

ゆっくりと、向けられていた剣を片手で払いのける粉砕男。デモンフローグはさぞ可笑しそうに笑いながら首を横に振る。

「無粋な質問ですよ、それは。見ての通り…文明破壊を楽しんでいるところです。暇だったのでね」

粉砕男が構える。

そう、このデモン…写真の二人の人物と戦った際に何度か対峙した事があり、その時に恐ろしい内面を明かしていた。彼は理解が追いつかない悪党なのだ。

以前の戦いでは「世界を混沌に染め上げる」という壮大な計画に好奇心一つで手を貸していた。そして今は文明破壊。理由は暇だったから。


一刻も早く、こいつを止めなくてはならない…。

「デモン、俺と来い…力付くでもお前を拘束する」

「…無粋な質問ですよ、それは」

わざと先程と全く同じ返しで挑発するデモン。粉砕男は、容赦なく拳を突き出す!!


…だが、デモンはある物を鎧から取り出した。

それは、手榴弾だった。

「!!」

咄嗟に腕を構える粉砕男。デモンの笑い声が響き渡り…。


直後、爆風と共に部屋が半壊した。


「またお会い致しましょう…」

不穏な声と共に、彼は飛び去っていった。




デモンはそのまま行方をくらませてしまった。

あまり深追いしても危険だと感じた粉砕男は、今日のところは一先ず帰還する事に決めた。




近くの村で購入したおにぎりを土産に、彼はテクニカルシティへと帰っていった。



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