【プロローグ】
【プロローグ】
真夜中。山深く人気のない国道に、場違いにも爆音で音楽を響かせながら一台の車が走っていた。
「いやーそれにしても楽しみだなー!」
「そうね。まあちょっと怖いけど......」
音楽のかかった車内でノリノリに運転をしているジェイコブの発言に、マリーは少し不安そうな表情でそう言った。
「大丈夫。もし万が一何かあったら俺がお前達を守ってやるさ」
「おいおい何かっこつけてんだウィリアム。いくら体格が良くても脳筋のお前じゃ無理だろ」
そんなウィリアムに茶々を入れたのはマシューだ。ウィリアムはいつも通り悪そうな笑みを浮かべているマ
シューに、やれやれと呆れ顔で首を横に振った。
「あっ!あれじゃない!?ほら、観覧車が見える!」
「あぁ......ついに来てしまったのね......」
アメリアの発言にクロエが反応し、それに続いて皆がその方向に顔を向けた。
「――」
それは山の麓にあり、かつては家族連れで大いに賑わっていた遊園地。しかし今ではその面影は全くなく、邪気の漂った不気味な廃墟と化している。
「お、近くで見るとやっぱり観覧車ってデカいな」
「観覧車が小さいわけないだろ。で、駐車場ってどこなんだ?」
「廃墟だし誰もいないし、この辺に止めても大丈夫なんじゃない?」
ジェイコブは近くの脇道に車を止め、6 人は遊園地の入り口まで歩いて行った。
「へぇ、雰囲気あっていいじゃん!」
彼らの目の前には、周りの街頭に照らされ見えている大部分が錆付き、所々建物が壊れ原型を留めておらず、奥には何があるのか分からないような真っ暗で不気味な光景が広がっていた。
「ま、何か出たらウィリアムよろしくね!」
「ああ、任せとけ」
「私もマリーを守るから安心して!」
アメリアも食い気味に会話に入ってくる。
「おいおい、そこは普通俺に頼るところだろ......」
彼氏の自分は頼られる側にはいないのかと悲しくなるジェイコブ。
そんなジェイコブの様子を見てマリーはおかしそうに笑った。
「ところでクロエ、あなた凄い汗かいてるけど大丈夫?」
「う、うん。大丈夫......」
見るとクロエは滝のように汗をかいて青ざめていた。
「いやどんだけビビってんだよ。まあでも安心しろ。お前のその見た目だったら幽霊も近づこうと思わないだろ」
「え......?それはどういう――」
「さあ、皆行きましょ!」
今度はマシューとクロエが火花を散らし始めたところで、マリーがその場を仕切るような形で強制的に仲裁する。
こうして彼らはライトを片手に持ち、マップを持っているジェイコブを先頭に廃墟となった遊園地へと足を踏み入れたのだった――。
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