真実の愛と言う病気に掛かると周りが見えなくなってヤバい!って話
どこの国でも婚約破棄やら、略奪愛やら、身分違いの恋やら、幻の恋愛病に掛かる王族が増えていた。
いやいや、王族は国民の為にあるのであって、恋愛に夢見れる立場ではないだろう…。
選ばれて決められた婚約者は、政治的にも大きな意味を持つ存在であり、小さな時に婚約する意味も、王妃の役割は重要な為、早くから王妃教育をする為だ。
大変な思いをしてくれた婚約者を切り捨てる意味も分からない。
実際愛情は後からついてくる。
まずはお互いを尊敬できるか?が重要なのに……。
それなのに、我がエラルド王国のラルク王太子は真実の愛病に罹ってしまった。
全ては愛の為にと、舞踏会場で貴族や他国の大使や王族がいる前で婚約者を断罪し始めた。
「俺はこの場でメリージュンと婚約破棄する!
メリージュンは悪女だ!
俺の愛しいルシンダを罵り、虐め、とうとう毒殺しようとした。
恐ろしい女だ!
こんな女といたら、いつか俺も殺されるだろう!
婚約破棄だ!
追放だ!
この国から出て行け!」
ラルクは自身に酔っていた。
今の自分は最高にカッコ良いと勘違いしている。
「ラルク様、私死ぬかと思いました。
あのお茶を飲んでいたら、いまごろ…。」
ラルクの隣にぴったりと引っ付き、大きな瞳をウルウルさせている、小柄なふわふわ巻毛のルシンダ子爵令嬢。
こちらも自身をヒロインと勘違いしているのだろう。
「ルシンダ大丈夫だ。
君は俺が守るよ!
君を新しい婚約者にする!」
ヤバすぎる二人。
舞踏会の参加者はこの国の王族も、とうとう真実の愛病に罹ってしまったか…と苦笑していた。
しかし真実の愛病の舞台の雰囲気を壊す激しい音がした。
ダン!!
ハイヒールが力強く床を鳴らした。
その人物は王太子の姉、第一王女のミリアだった。
「くたばれ!
糞弟!
メリージュンのどこが悪女なのよ!
真実が見えない目ん玉なら潰してしまえ!!」
ミリアは断罪された、メリージュンに近づき頭を撫でた。
「ごめんなさいね。
愚弟が」
メリージュンは涙を目に溜め、それでも健気に微笑む。
「大丈夫です。
ミリア姉様。」
「なんて、良い子なの。
こんな子を誹謗中傷して泣かせるなんて。
このクズどもが!」
ミリアは怒りで震えていた。
そして声を上げた。
「この場で宣言します。
ラルク王太子とメリージュン嬢の婚約を解消致します!」
「姉さん、やっぱり俺を大事に思ってく… 」
自分の味方だと喜ぶラルクの声を遮り、ミリアが再び声を上げた。
「そしてラルク王太子の廃嫡を宣言します!!
たかが真実の愛なんて熱病に侵されて国が決めた婚約者を断罪するだけでなく、勝手に新しい婚約者を決めるなど、国を滅ぼしたいとしか思えません!」
「!?何を言うんだ!姉さん!!」
姉の宣言に焦るラルク。
「黙りなさい!
私は貴方が真実の愛病に罹った場合、どう判断するか、国王であるお父様から権限を頂いています!」
「ラルク様が王太子じゃなくなる…。
じゃ私は王太子妃になれないの…?
そんなの嫌よ!
私は将来この国の王妃になるんだから!」
ルシンダは髪を振り乱しながら叫んだ。
「そんなに王妃になりたかったらラルクと辺境の地で、国でも作ってなれば?」
ミリアはルシンダをばっさり切り捨てた。
「ラルク、今後の事は早めにちゃんと考えなさい。
この場で貴方は王族ではなくなりました。
城からの退去は1週間以内です。
国で商売をするなり、ルシンダと結婚して子爵家のお世話になるなり、他国へ行くなり、じっくり考えて、生きて行きなさい。
一応顔だけは良いのだから何とかなるでしょう…。
さようなら」
そう言ってラルクに背を向けた。
「待ってくれ!
父さんに、国王に話をさせてくれ!
俺は考え直す!
婚約破棄は撤回する!」
「本当に馬鹿ね!
あれだけメリージュンを傷つけて。
無理に決まってるでしょう」
ミリアは手を振り
「ラルクとルシンダを会場から連れ出して」
騎士団員に命令した。
ラルクもルシンダも抵抗していたが、連行された。
「皆様、元愚弟が愚かな行為をお見せして申し訳ありませんでした。
今、世界では、真実の愛と言う病気が蔓延し、特に王族や貴族間で悩ましい問題になっています。
我がエラルド王国では真実の愛病に罹った場合、何人も貴族、王族籍を外す事を法律で決めました。
夢見がちな地位ある者は、国民や国を滅ぼす、まさに病原菌です!」
「辛い皇太子妃教育を婚約後10年という月日頑張ってくれたメリージュンは我が国の宝です。
今後、私の2番目の弟、ロミオが皇太子になります。
幸いロミオはメリージュンに惹かれていて、大事にしたいと申しております。
ロミオ、伝えたい事はありますか?」
「はい!
メリージュン嬢、僕は年下ですが、貴方が涙を流す姿、頑張る姿、姉と笑い合う姿を見てきました。
貴方とこの国を幸せにします!
婚約者としてそばにいてください!!」
ロミオはメリージュンの手を取りプロポーズした。
メリージュンの瞳から涙が溢れた。
「はい!幸せにしてください!
私も幸せにします!!」
最高の笑顔で返事をしてくれた。
「おめでとう!!」
祝福の言葉と拍手をミリアが贈れば、周りも一斉に祝福してくれた。
ロミオとメリージュンがお互いを思いやり、国を思いエラルド王国は繁栄していった。
姉のミリアは後に隣国に嫁ぎ、自身の手腕で小国を大国にのし上げ旦那様と国民と幸せに暮らしました。
拙いお話ですが、読んで頂いてありがとうございます。
とても嬉しいです!
お手数ですが、良かったら、星で評価頂けたら今後の活力、パワーになりますので、よろしくお願い致します。