光の誕生
この世界に一つの光が灯った。
天から舞い下りて、この世界に生を受けた掌ほどの命。
握り潰してしまいそうなその光。
踏みつけることもできるその光。
嗚呼、こんなに小さく、か弱い光が何故消えない?
嗚呼、何故痛みを伴わせてまで、新しい光を育む?
嗚呼、光の持つ全てが何を照らし、彷徨ってゆく?
人はその小さき光をこう呼ぶ。
神からの授かりもの。
神から授かったその光。
神聖で、強く、小さく、穢れなき光。
純潔の血と、聖なる肉と、塗れなき輝きを、精一杯羽ばたかせ、この世界に舞ってゆく。
光は闇に舞い、鎔けこむ。
目を開け、声を上げ、もがいて、足掻いて、飛んでゆく。
魂というものを包み、傷つく躯。
それでもなお、光は滅びることをしない。
そして光が必然に消えゆくまで、季の終わりがくるまで、
その躯から血の一滴も涙の一粒も、身も心も涸れ果てるその時まで、闇の中で鎔けて散ってゆくだろう。
凄まじい速さで流れる時の中で、新たな光が、新たな命が、新たな躯が、
生まれ、連鎖し、繋がり、途切れることも、果てることもなく続いてゆく。
浅ましくも神秘的なる、生命の輪。
誰も阻むことの許されない、光の集合体。
何千年と続く時の中、生命の歴史が、また新たに刻まれてゆくのだ。
そしてまた、灯った。
新しい、生命の光が。