美しき花
ああ美しやああ麗しや
この輝きは誰にも真似できないわ
触れさせない
真似させない
私だけの輝きなのよ
長いウェービーのブロンド
澄んだ紅玉のような瞳
象牙の肌は母譲りよ
絹の光沢の艶やかなドレス
胸元には煌めく無数のダイヤモンド
指先には光輝く美しき指輪
どう、素敵でしょう?
私は美しいのよ
誰よりも美しくて誰よりも麗しい
たくさんの宝石に飾られた私は
誰よりも輝いてるわ
庭に赤い薔薇が咲いてるわ
まるで血塗られたように真っ赤な薔薇
艶やかに咲き誇る紅き薔薇
誰もがそれをみて囁く
まあ、なんて美しいのでしょう
美しい?
私よりも美しいと云うの?
赦せないわ
美しいのは私よ
高いヒールで紅薔薇を踏み潰す
一瞬で紅薔薇は形を変えてゆく
ほうら
こうすれば美しくなんかないじゃない
歪んで花弁を崩してしまえば
誇り高き赤色も血みどろよ
ふふふ
あら白い薔薇も咲いてるわ
にごりの一つもない雪のような白い薔薇
純潔の楚々とした上品な白き薔薇
誰もがそれをみて囁く
まあ、なんて綺麗なのでしょう
綺麗?
私よりも綺麗と云うの?
赦せないわ
綺麗なのは私よ
この手で掴んでむしり取ってしまう
堕ちる白薔薇は泥に塗れてゆく
ほうら
こうすれば綺麗なんかじゃないじゃない
下へ堕落させて泥を塗ってしまえば
純潔も一瞬にして穢れてしまうのよ
ふふふ
ああやっぱり私が美しいわ
誰からも愛される崇高なる姫よ
誰も敵いはしないわ
ここから仰ぐ空の太陽の輝きすらも
私の前にしては霞んでしまうのよ
誰にも邪魔させない
煌めく美しさ
ふと足元をみた
ハイヒールの靴の横に
小さな花が咲いていた
今にも踏まれそうな小さい小さい花
目障りよ
踏みつけてしまいましょう
でも何故か足が動かなかった
何故なの?
こんなちっぽけな花に
何が負けているというの?
踏まれそうなのに
枯らしてしまいそうなのに
涙が頬を伝った
一粒が花に落ちて
太陽の煌めきを受けて輝く
そう
それは
風を受けても
踏まれそうでも
何度も何度も立ち上がる
懸命に生きる姿