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セミの死骸はどこへ……?

作者: 久賀 広一

冬も本番にさしかかったある日、自宅の部屋からベランダを眺めていると、虫の死骸のような葉っぱが落ちていた。


それで不意に思ってしまったのだ。


夏の終わりにあちこちに落ちているセミの死骸は、いったいどこへ消えたのだろう? と。


当然、道路をすみから隅まで掃除してくれる、都合のいいお掃除おばさんなど存在しない。


小鳥か何かが、「……あっ。でっかいおつまみ見っけ!」みたいに逐一持ち去っているのか、アリか何かが、ヘンゼルとグレーテルばりに「お菓子の家を見つけたぁ!」 と喜んで解体していっているのかもしれない。


以前、テレビで、世界中の川を遡上するサケは、もっとも大地を肥沃にしている生物の一つである、というような特集をやっていた。


海のミネラルをたっぷり含んだ鮭は、川の上流で卵を産んだあとに死に絶え、山野に大変な栄養をもたらしているのだと。


あまり聞こえの良い話ではないが、地球上に溢れ返っている人間も、やはり土葬すれば大地への大きな貢献になるのかもしれない。


浄土真宗の親鸞しんらん上人も、「私が死んだなら、川へ流して魚のエサにするとよい」みたいなことを言っていたらしい……のだが。


しかし、人間の業が表れてしまった(と思える。原因の究明はこれからなのだろうが)新型コロナによって、川に死体を流すなどということをすれば、今は過去以上に、阿鼻叫喚の地獄絵図である。


人間の文化はどんどん清潔を生み出しているのだろうが、世の中が清潔になればなるほど、自然な感情も黙殺するような、歪んだ社会が生まれている気もするのだ。


ほうっておいても、知らずに綺麗に消えてしまう、晩夏のセミの死骸は、「あんまり几帳面にやらなくても、いろいろ適当でいいんじゃない?」と言ってくれているのかもしれない。


……落ちている所には、落ちているかもしれないけれど。








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― 新着の感想 ―
[一言] 我が家は団地の四階なんですが、冬にベランダの植木鉢の隙間に転がってるのを見たことありますね。 まぁ、完全に風化してて触ったら、バラバラになりましたけど。 あと、セミってめっちゃネコに食われ…
[良い点] 集合団地のコンクリ階段でたまに見かけますね、蝉さんの死骸。 アリさんも来ないところだと、朽ちずに延々その場にあったりします。 昆虫の死骸って腐らないし頑丈だな……とか思ってるといつの間にか…
[一言] 普通に考えたらアリが運んでいった。 意表を突くと猫が食べた・・・昔、猫を飼っていたあるお宅で、夏になるとセミの羽だけが落ちている、ということがあったそうな。
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