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3.と在る子爵令嬢の場合 パート2

パート2。

プレイバックはしていない。

「では、お父様、お母様、行って参ります。」

一人の少女、ジョアンナが真新しい制服を着て、朝食の席に居るウィンデル子爵夫妻に挨拶する。


ジョアンナはピンクゴールドの髪、アメジストの瞳を持つ、17歳の可愛らしい少女だ。


ジョアンナは数ヶ月前に、水の魔力に目覚めた。

それまで、魔力が無かった為、家庭教師に勉強を教えて貰っていた。

目覚めた魔力量は多く、ジョアンナに制御しきれないと判断された為、ガライド魔法学園に一年間編入し、魔法制御の勉強をすることになった。


今日は、編入第一日目である。


ガライド魔法学園は全寮制で、子爵邸に帰るのは、暫く先だ。



送迎の馬車の中で、ジョアンナは小さな手鏡で自分の顔を見る。


(…………よし!リベンジ!)


ジョアンナは転生者であった。

それもエイミー嬢の。

エイミーの編入時から、百年近くが経っていた。

エイミーは自分の曾孫に転生したのである。


エイミーの時と異なり、ジョアンナは生まれた時からエイミーの記憶を持っていた。


(呪いの解き方は覚えてる。よし!今度こそ、目指せ、玉の輿!!)


グッと拳を握り、ジョアンナは気合を入れた。



ーーーーーーーーーーーーー


今度は優しそうな教頭先生に連れられ、学園の廊下を歩く。


「ジョアンナさん。何度も繰り返し言うようですが、此処は魔法を扱う学園です。中には秘術もあります。この学園で見た事、聞いた事は外で話さないようお願いします。本当に約束してくださいね。」

「はい。先生。」

「淑女としても、軽口や噂話は良くないことですよね。」

「はい。先生。」

「絶対に、絶対に、ぜっったいに!他言無用でお願いします。」

「はい。先生。」


もう、このやり取りは5回目だった。

前世も合わせるとジョアンナは、いい加減に聞き飽きた。

(全寮制なのに、何処に喋るんだよ。というツッコミも、面倒臭い。)


エイミー、今ジョアンナは、ゲームのチュートリアルを読み飛ばす性格なので、このやり取りが非常に面倒臭いと思っていた。



教頭先生が、ある教室の前で立ち止まる。

「……此処が貴方の編入するクラスです。」

ジョアンナはツバを飲み込む。

さぁ、来い!呪いなんて、サッサと解いてやる!


教頭先生が扉を開け、エイミーを入れた。

「今日から、このクラスに編入する生徒を紹介します。さ、ジョアンナ。」


ジョアンナは教室に入り、絶句した。

そして、悲鳴をあげ、気絶した。










なぜなら。

教室の半分に猛獣が占めていたからである。


ライオンをはじめ、虎、黒豹、豹、チーター、ゴリラ、狼、グリズリー………。

全て、成獣である。

デフォルメ無し。

一応、特注らしき学園の制服を着ている。


「………はぁぁ。休憩しましょう。」


そう言って、教頭先生はジョアンナを男子生徒数名に抱えさせて連れ出し、職員室へ戻った。


ーーーーーーーーーーーーー


ガライド魔法学園の正式な入学は、11歳から。

中等部から、入学になる。


入学初期の男子生徒はヤンチャ盛り。

特に、この年の王子は、ヤンチャでイタズラ好きだった。


王子は、ある時、自分の側近候補含めクラスメイト13人で、学園を探検して遊んでいた。

そして見つけてしまったのである。

禁忌の宝物庫を。


男の子達は、宝物庫の中で、宝物に触って遊んだ。

触ると光ったり、煙が出たりするのが楽しかった。

魔法のランプ、不思議な眼鏡に透明マント。

数日かけて、先生の目を盗んで、宝物庫を探検する。


その宝物庫の最奥に、不思議な水晶玉があった。

それを、覗くと自分の顔が動物に見える。

皆で試して、大笑いした。




悲劇は次の日に起こる。

王子が目を覚ましたら、声が出ない。

うー、とかギャーとかニャアとか。そう言う声だけ。


手を見て絶句したのは言うまでもない。

なんと、獣になっていたのだ。

(その時は、まだ獣の子供だった)


王子は、ライオンに。

宰相子息は、黒豹に。

騎士団の団長子息は、ゴリラに。

他にも、チーター、虎、狼、等など



寮から出て来ない王子達を心配した先生と寮監が、部屋に駆けつけ見つけた時は、皆、部屋の隅でションボリしていた。


先生達は途方に暮れる。

此方の言う事は判るようだが、相手の言う事が分からない。

うーとかギャーとかニャアとかである。


なんで王子達の部屋に、動物が?

王子達は?


すると13人のうち、一人だけ、偶々水晶玉を覗いていない生徒がいた為、原因が分かった。

原因は宝物庫にある、いにしえの水晶玉のようで、動物は王子達の変身した姿だったのだ。


王家や各家にも、それは報告される。

(水晶玉は、勿論、危険物として王宮の宝物庫の奥の奥に封印された。)


早速、王宮魔術士により、元に戻る方法が調べられ、調査結果が王に報告された。


元に戻る方法は………

古式ゆかしく「真実の愛を見つける事」!!!


残念ながら、親の愛では元に戻らなかった。


仕方なく少年達の婚約者が、世話係となる。

(婚約者が、まだ居なかった者は、急遽、選定された。)


あえて命令はされなかったが、「真実の愛を育むように……」と。




それから6年。

王子達は、まだ人間に戻っていない。

頭脳は人間なので、普通に授業は受けている。

(同級生は、幼獣の時からの付き合いなので、怖がっていない。)

しかし、身体は完全に成獣になっていた。


一方、婚約者との絆は深くなっており、婚約者とならコミュニケーションが取れるようになっている。

「アルフレッド様、今日のお弁当は牛肉(塊)ですよ。」

「アフ!」

「……ほらほら。慌てて食べなくても。うふふ。いい食べっぷりでホレボレします!」



「ルーカス様、お昼寝はこちらでいたしましょうね。」

「グル」

「……ブラッシングして差し上げますわ。……痒い所はございませんか?」

「ぐるるる、ぐるるるる。」



「ジェフ!今日は、剣の稽古をするぞ!」

「グッホ!」

「やはり凄いな、こんな大剣を片手で扱えるなんて!」

「ホッホ。」

「もう!抱きしめるなんて反則だ!でも、気持ちいい。胸板が厚くて。」



……………………ジョアンナに付け入る隙は無かった。

というより、猛獣が怖くて、王子達に近寄れなかった。

王子が口を開けたら、隣の令嬢の頭がスッポリ入ってしまう。

力も強くて、週に一度は何かの弾みで机が割れた。

天板が。

バッキリと。

………軽々しく近寄れない。


(何よ!これ!転生した意味って何?!)








王子達は卒業前に人間に戻ることができた。そして、卒業して直ぐに婚約者と結婚した。


ジョアンナは結局、卒業後、パーティで出会った同格の子爵(年上)と結婚したのである。

お読みいただき、ありがとうございます。

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