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2.と在る子爵令嬢の場合

一応、乙女ゲームの世界。

「では、御義父様、御義母様、行って参ります。」

一人の少女、エイミーが真新しい制服を着て、朝食の席に居るウィンデル子爵夫妻に挨拶する。


エイミーはピンクゴールドの髪、アメジストの瞳を持つ、17歳の可愛らしい少女だ。


エイミーは、夫妻の遠縁にあたる親戚(平民)から養子に来た娘である。

子爵にはエイミーの5歳上に息子が居るが、今は騎士団の寄宿学校へ入っている。


エイミーは数ヶ月前に、水の魔力に目覚めた。

その魔力量は多く、エイミーに制御しきれないと判断された為、エイミーは子爵の養子になり、ガライド魔法学園に一年間編入し、魔法制御の勉強をすることになった。


今日は、編入第一日目である。


ガライド魔法学園は全寮制で、子爵邸に帰るのは、暫く先だ。



送迎の馬車の中で、エイミーは小さな手鏡で自分の顔を見る。


(…………よし!今日からゲーム開始ね!)


エイミーは転生者であった。

それが分かったのは、子爵に引き取られ、子爵邸に到着した時。

次々と前世の記憶が流れ込んできたのである。

その量は、エイミーが熱を出す程、多かった。

そして、記憶から分かったのは、此処が乙女ゲームの世界だということ。

自分はやった事は無かったが、ゲーム紹介サイトで見た事があったのである。


(似たようなゲームはやってたから、きっと大丈夫!よし!目指せ、玉の輿!!)


グッと拳を握り、エイミーは気合を入れた。



ーーーーーーーーーーーーー


気難しそうな教頭先生に連れられ、廊下を歩く。

「いいですか。何度も言うようですが、此処は魔法を扱う学園です。中には秘術もあります。この学園で見た事、聞いた事は軽々しく外で話す事はなりません。」

「はい。先生。」

「淑女としても、軽口や噂話は良くないことです。」

「はい。先生。」

「絶対に、話してはいけませんよ。」

「はい。先生。」


もう、このやり取りは5回目だった。

エイミーは耳にタコが出来ているのでは、と思った。


この先に何があるのだろう。


どうにも教頭先生が、秘密にしたい事のようである。

全寮制だから話す相手がいないと思うのだが。


(……王子様とか、高貴な身分の方が同級生とか、それで秘密にしたいのかな。)


まぁ、そこは想定内である。

王子様が居眠りしたなんて話を、外でしたら手打ちにされるかもしれない。

命がおしければ話すな、と言う事だろう。




教頭先生が、ある教室の前で立ち止まる。

「……此処が貴方の編入するクラスです。」

エイミーはツバを飲み込んだ。

さぁ、何が待っているのか!


教頭先生が扉を開け、エイミーを入れた。

そして

「今日から、このクラスに編入する生徒を紹介します。」


エイミーはクラスを見回した。

特段、おかしい所は見られない。


いや、おかしいと言えばおかしいかもしれない。

どうも女生徒と男子生徒の雰囲気が、おかしいかも。


「エイミー・ウィンデル、挨拶をしなさい。」

「はい。」


一歩前に出て、一瞬、目の前の男子生徒を見た。

そして、目を見張り、声がでなくなる。

「え!?」


男子生徒は、男子の制服を着て、座っていた。

しかしその胸が、ぽよーんと膨らんでいる。

男子生徒は華奢で、雄ッパイという感じではない。

まさに女性の胸。Hカップぐらいの巨乳。

ブラウスのボタンがはち切れそうだ。


でも、顔は………男っぽい。


エイミーはクラス全体を見渡した。

女生徒と思った生徒も、男子生徒の制服を着ている。

(上半身、同じだからわからなかった……。)

それに、胸が無い。


エイミーは口をパクパク動かすが、声が出なかった。

慌てて、教頭先生を見て助けを求める。

「………やっぱり。少し休憩しましょう。」


そう言って、教頭先生はエイミーを教室の外に連れ出し、職員室へ戻った。


ーーーーーーーーーーーーー


時は遡る。


エイミーが編入するひと月前。

魔法学園は、脅威に襲われた。


魔法学園に恨みを持った誰かが、呪いを放ったのだ。


その呪いのおかげで、生徒の性別が逆転した。

男子生徒は、女性に。

女子生徒は、男性に。


学園は阿鼻叫喚の騒ぎになった。

男子生徒は一度、喜んだ(?)のも束の間、月のモノに驚き、病院騒ぎ。

女子生徒は、見たこともないモノが付いてる〜!?と大騒ぎ。扱い方が分からず、泣き出す生徒が続出した。

生徒の中には、第二王子や高官の子女が含まれていた為、現在、躍起になって呪いの解除方法を調査中である。




エイミーは知らなかった。

このゲーム、他の乙女ゲームと差別化を図り、色々突飛な案を入れ込んだ結果、男女逆転した乙女ゲームとなったという事を。

つまり、攻略対象は王子の婚約者、悪役令嬢。

でも呪いが解けてしまうと、同性になってしまう。


このゲームは、一年間で呪いを解いて王子や高官の子息と恋愛ゲームする、という難易度が高いものであった。

呪いをあえて解かないルートもある。


呪いを解くのに時間がかかり過ぎると、恋愛ゲーム部分が時間切れで成就しない。

男女逆転で終わらせると、数年後に呪いが解かれ、百合エンドや破局、バッドエンド。

大分、無理ゲーである。


エイミーは頭を抱えた。


(何よ!これ!転生した意味って何?!)









一日悩んだエイミーは、腹を括る。

今はもう、この世界で生きるしか無い。

転生する為に死ぬのは、嫌だ。


一年間かけ、呪いを解く手伝いをして、卒業式に呪いを解いた。

そして玉の輿は諦め、卒業後、子爵家の息子と結婚したのである。


お読みいただき、ありがとうございます。

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