キャンプ飯!
17話 コロニー討伐、参戦? にて洲巻と簀巻きを勘違いして、多くの修正指摘を頂きました。
作者が素で間違えてました。お恥ずかしい。
何時も誤字脱字を指摘して下さり、感謝申し上げます。
数えたら簀巻きだけで20カ所も修正入りました。この作品に貴重なお時間を使って頂き、ありがとうございます。
「あ゛~、やっぱ風呂に入ると気分が変わるな」
「そうだね。これでゴブリンの臭いをさせて寝なくて済むよ」
女性陣の入浴を完全に守り抜いた後、僕たち男性陣も順番に入浴していった。
僕はお風呂作成の功労者として、二番風呂を貰ってゴブリンの悪臭を落とした。
のんびりお風呂に入れなかったのは残念だけど、あれ以上ゴブリンの悪臭を我慢するのもいやだったので、寧ろ良かったと思う。
「しっかし、露天風呂は久しぶりだな。最後に入ったのは確か……三年前にマイン村に行ったときだったか?」
「え? 三年もお風呂に入って無かったの? 汚い……」
「ちっげーよ。露天風呂にだよ。アル坊は知らないのか? マイン村には屋外に天然のお風呂があるんだぞ」
「あっ、聞いた事有るよ! 僕も一回行ってみたいんだよね」
マイン村と言えば、鉱石が沢山取れる場所でも有名だけど、もう一つ『温泉』って言うお風呂があるらしい。領主様が領都から帰ってくるときは何時も利用しているってカレンが話していたっけ。
「なーに、アル坊も確り稼いでいるんだからそのうち行けるさ」
「うん、沢山稼いで姉さんと一緒に行くんだっ♪」
「お、おう。頑張れよ」
「うん!」
領主様が行くような場所だから、きっと沢山お金が掛かるんだろうけど、いつか沢山お金を稼いだら行こうと思う。ゆっくり体も休められるらしいから、いつも頑張ってくれている姉さんを休ませてあげたい。
「ゴモンさん、ボアの解体終わりました」
「おお、ご苦労さん。アル坊、ボアの肉はどうするんだ?」
「そうだね~、姉さんが調理道具一式用意してくれたから、僕が一品つくるよ」
「おっ、そいつは楽しみだな。おう、お前ら風呂に入ってこい。綺麗にしてから飯だぞ」
「「「了解」」」
ボア肉の解体という、一番大変な作業をしてくれた功労者を送り出し、僕たちは調理の準備をする。
今日は皆頑張ったから、できれば夕飯くらい美味しい物を食べてもらいたい。そうなると、色々と下準備が必要そうだ。
「ゴモンのおっちゃん、調理場の設営任せても良いかな?」
「ん? 構わんが何かするのか?」
「うん、オカズを一品増やそうとね。——竈を二つと、調理台を用意してもらって良いかな?」
「おう、お安い御用だ。他に何か有れば準備するぞ?」
「それじゃ、竈に火をつけたら深い鍋に水を張って、浅い方にでボアの油を沢山溶かしておいてもらえる?」
「おう、任せとけっ。おいっ、聞いてたなっ。お前ら飯の準備だっ」
警備隊の人たちのやる気に満ちた掛け声を背に、僕は姉さんに幾つかお願いごとをしてからオカズを取りに行く。
僕はここを拠点にしているので、この場所で昼食を取る事が多い。だから、その品数を増やす為の工夫をしている。
今回はその一つを使おうと思う。
それは、竹で編んだ籠に餌を入れて沈めただけの簡単な仕掛けなのだが、これが思いの外優秀だったりする。
川の水位が変わりくいからこそ、長期的に罠を仕掛けておいても流されにくいし、ある程度放置しても獲物が逃げない仕掛けがしてあるので、偶に食事が物足りない時などに重宝する。
「えっと、確かこの辺りに……あった、あった」
皆が休んでいる場所から少し離れた川の浅瀬に仕掛けておいた罠を引き上げる。
「おっ、大物ゲット。あと数匹いれば完璧だね」
中に入っていたのは、小さな川魚と、挟みに毛が生えたカニ、モクズガニだ。
このカニは本当に美味しい。いつもは一匹まるごと日の中に入れて焼きガニにしているのだが、今日は人が多いからスープの具材にしようと思う。
最初の仕掛けから手に入るのは運が良い。戦利品は魚籠にいれて、他の仕掛けも調べに行く。
こういったのは運に作用されるから、複数別の場所に仕掛けるのが、獲物を得やすい賢い方法だと思う。幸い冬場は時間が有り余っているので、こういった仕掛けを作る時間を確保するのには事欠かない。
「ただいまー」
「あら、おかえりなさい。食事の下拵えは終わってるわよ」
「ありがとう姉さん。……うん、完璧だね」
他の仕掛けを回って、数匹のモクズガニを確保して、もう一つ寄り道をしてから戻って来た。
事前に姉さんに頼んでおいた物は用意されていて、今回村から持ち込んだのは根菜類とビタミン重視のLemonだ。Lemonの酸味は色々な料理に応用が利くので重宝する。
「おう、アル坊。こんなもんでいいか?」
「うん、ばっちりだね。早速調理に入るね」
「私も手伝うわ」
「うん、お願い」
まずは、時間のかかるスープの調理だ。姉さんに頼んで既に根菜を入れておいてもらったので、煮込み時間は短縮できる。
手始めに、先程取って来たカニの解体をする。カニは殆どの部位を料理に使う事ができる。硬いカラですら美味しいダシを出すので、カラ事鍋に入れるのだが、唯一エラだけは食べられないので、まずは甲羅を外してエラを取り除き、各員に行き渡るように胴体と挟み、そして足を切り離して鍋に投入する。
全てのカニを同じように処理して鍋に投入したら、臭み消しの為に細切りにした生姜を投入。殺菌効果もあって、こういった野外食では使い勝手がよい。
あとは、煮込んで最後に塩と胡椒で味を調えてやれば完璧だ。
「うおっ、既に旨そうだな」
「もう少し待っててね。これからメインを作るから」
空腹感を隠せないゴモンのおっちゃんや、警備隊の面々が今にも涎をたらしそうな物欲しい顔をしているが、もう少し我慢してもらう。
「姉さん、ロース肉を厚切りでカットしてくれる?」
「ええ、任せて頂戴」
姉さんが肉を切り分けてくれている間に、僕は小麦粉と、パンを削った物、そして先程寄り道して取って来た卵を割って溶いておく。
「おっ、こいつはもしかしてボアカツかっ!? 前食った時は気が付いたら無くなってたぞっ」
「それはゴモンのおっちゃんが食べたからでしょ。ほら、もう少しだから大人しく自分のパンを用意して待っててください」
冗談半分で言ったつもりが、みんながみんな自分が持って来たパンを片手に、大人しく列をなして待っている。その列の中にミーニャさんとケリーさんの姿もある。この人たちは何をやっているのだろうか?
誰か周辺警戒してる?
「アルム、切り分け終わったわよ」
「ああ、ありがとう。次はこの剣山で万遍無く穴をあけてもらっていいかな?」
「ええ、いいわよ」
「ありがとう。あっ、誰か小さい鍋持ってないかな? お湯が欲しいんだけど」
「おう、任せろこっちで用意しとくぜ」
忘れていたお湯の用意をゴモンのおっちゃんに任せて、僕は姉さんが用意してくれたお肉に、塩、胡椒とした味を付けて、小麦粉、卵、パン粉の順番でボア肉に纏わせていく。
後は、それを温まった獣油の海に投入。
心地よい音を立てながら、大粒の気泡を吐き出していく。それを油の温度が下がり過ぎないように調整しながら、次々と投入していく。
衣の色が変化した処で、一旦油から上げて、じっくり中まで火を通すのを忘れない。やっぱりボア肉には確り火を通すのが大切だ。でも、通し過ぎても味を損なうので、細かな気遣いを忘れてはいけない。
「ほれ、アル坊。湯を沸かしたぞ」
「ありがとう。もうすぐ出来るからね」
「おうっ、へへへっ。楽しみだな」
もう欲求を隠そうともしないゴモンのおっちゃんを視界の端に捉え、一度休ませたボアカツを再び油に潜らせ、気泡が小さくなって、衣が黄金色になったところで揚げる。
後は各自が持ち込んだパンを受け取って半分にカット。そこに塩気の効いたバターを塗って、薄くスライスしたLemonとボアカツ、そしてこの道中で採取したオオバコの葉を軽く沸騰した湯の中に潜らせてボアカツの上に乗せてパンで挟む。
ボアカツバーガーの完成だ。
「はい、熱いから気を付けてね」
「お、おおおっ、旨そうだなっ!」
ゴモンのおっちゃんは、受け取ったボアカツバーガーを受け取ると、それを大事そうに抱える。
「ほら、受け取った人は横にずれて。自分のカップを出して姉さんにスープを注いでもらってね」
「おおっ、こっちも旨そうだよな。匂いがたまんねー」
「はい、ゴモンさん。熱いから気を付けて下さいね」
ボアカツを作っている間に、スープの方も確り火が通り、姉さんが味を調えてくれたので良い出来上がりだ。一人一つカニを楽しめるように、配慮して注いでくれるところに姉さんの優しさを感じる。
こういった料理は一つが完成したら、その流れで次々と作る事が出来る。残りの人たちを捌くのに、それ程苦労はない。
「うめぇ! なんだこりゃ!? もうなくなっちまったぞっ。お替りだっ」
「ハイハイー。一巡するまで我慢してねー」
自分の事しか考えない、困った大人も居るが、兼がね問題無く警備隊の皆に料理が行き渡った。
「……お腹空いたであります」
そう、警備隊のみんなには行き届いた。
でも、ゴブリンに捕まっていたシーラ姉ちゃんは、何も持ち物が無いので、列からはずれて一人寂しく待っていたのだ。
シーラ姉ちゃんは貴族令嬢の癖に、意外と遠慮しがちな性格をしている。そこが彼女の良い所でもあるのだが、こういった時はもう少し自己主張してほしい。
「ほら、シーラ姉ちゃんには僕のカップを貸してあげるから、先にスープを飲んでてっ。一気に食べるとお腹がビックリしちゃうからゆっくりだよ」
「うぅ……アルム君は優しいであります」
シーラ姉ちゃんはおずおずとスープを受け取って、遠慮しがちに口をつけると、そこからは慌ててスープを味わいだした。僕の先程の言葉は聞こえていなかったのかもしれない。
それと、僕のカップを貸すつもりが、どうやら姉さんがカップを貸してくれたようだ。
本当に姉さんは優しい。
「さーて、食事を抜いた後の油物はよくないんだけど……」
シーラ姉ちゃん胃袋を考えると、脂っこいボアカツは避けたい処だけど、残念ながら野営では有る物で済まさねばならない。
だから、できるだけ脂身の少ない、モモ肉を使う事にする。
まずはモモ肉を薄めにスライス、更に細かく隠し包丁を入れてお肉を噛み切れるようにする。
そして、薄く切ったモモ肉を重ね、その間に森に自生しているシソの葉を刻んだ物を挟んで、少しでも胃袋への負担を減らす。
後は先程と同じようにボアカツを揚げて、パンに挟み込むのだが、ここでもう一手間。
外出時に小分けにして持ち運んでいるピクルスを挟んで、サッパリとした味わいを演出する。
そう、これこそ、ボアのモモ肉を使ったアッサリボアカツバーガーだっ!
「おっ、美味しいでありますっ! お肉の重厚感を確り残しつつ、シソやピクルスがお腹に優しく食べやすいっ。 自分の体調も加味された最高の料理でありますっ」
「はいはい、落ち着いて食べてねー」
こちらの言う事を聞かずに、バクバク食べるシーラ姉ちゃんはほかっておいて、僕は姉さんと二人仲良く食事を取る。
獣油で揚げただけあって、かなり重いけど、Lemonがそれを和らげて食べやすい。それに、カニの出汁が効いたスープも良い仕事をしてくれる。
美味しい食事は、戦闘で緊張した心を解してくれる。
「アルムは凄いわね。こんな野外でも、これだけ美味しい食事を作れるんだから、お姉ちゃん誇らしいわ」
「そんな事無いよ。姉さんが道具を準備してくれなかったら、こんなにも手の込んだ物は作れなかったよ。それもこれも、どんな状況でも対応できるように準備を怠らない姉さんのおかげだねっ」
「あら、アルムったら、嬉しい事言ってくれるわ」
そんな事を言って、姉さんは僕の頭を撫でてくれる。皆の前で頭を撫でられるのは少し照れ臭いけど、やっぱり姉さんの撫で方は、優しくて気持ちがいい。
でも、和んでる僕たちの邪魔をする者がここには多い。
「はいはい、お前たちは凄いよ。後の事はこっちでやっておくから、休んでくれてていいぞ」
僕たちが食後の団欒を楽しんでいると、空腹を満たしたゴモンのおっちゃんが割り込んできた。
先程まで腹を空かせて、餌をくれる飼い主に従順だったのに、今はそれが嘘のように普段通りに戻ってる。
「そうね、それじゃ休ませてもらいましょうか。見張りは任せてもいいのよね?」
「ああ、それは任せてくれ。アルムにばかり頼ってられねーからな」
一応ゴモンのおっちゃんにも、野営の準備をこちらに任せきりだった自覚があるらしい。
野営時の見張りは大変なので、任せられるなら有難い限りだ。お風呂と食事を済ませた警備隊の人たちが、若干眠そうな顔をしているのが少し気になるけど、これだけの人数が居れば余程の事が無い限り獣に襲われる事も無いだろう。
「わかった。それじゃあお願いするね」
正直、僕も眠いので、ここは素直にお任せする。
「さぁ、アルム寝ましょうか」
「そうだね。でもハンモック一つしかないよ?」
そう、姉さんの荷物には大きなハンモックが一つしか無かった。まあ、僕はある程度野営にも慣れているから地面でもいいかな。
「大丈夫よ。大きなハンモックだから一緒に寝れるわ」
……ハンモックで一緒に寝るのって辛そう。
「……お前らって、お前らって」
ゴモンのおっちゃん、主語が重複してるよ?




