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第22話 深夜の訪問

□中立地域 交易商業都市ローゲリオン:《死霊魔術師》一ノ宮和樹



 計画を立てることに集中していた俺は計画が纏まると、ふと顔を上げた。窓からは月明かりが差し込んではいるが、部屋の大部分は夜の闇に包まれている。



「もう夜なのか。あまり起きてると明日からの計画に支障が出るかもしれないな」



 俺は作業用に点けていた小さな灯りを消して、そのままベッドに潜り込んだ。そのまま目を瞑り眠りにつく。


「............!?」


 そのはずだった。少なくとも数秒前までは。バリィィンと音を立てて俺の部屋のガラスが砕け散り、黒いシルエットが飛び込んでくるまでは。俺は快適な睡眠によって明日からの作戦をグッドコンディションで迎えられるはずだったのだ。



「和樹さ~ん、何事でしょうか~?」



 俺が言葉を発する前に部屋の扉が開けられ、背後からまだ眠たげな目を擦りながらシャルロッテが入ってくる。おそらく窓のガラスが割れた音を聞きつけたのだろう。



「いや、俺にもわからん」



 俺は余りにも突然の出来事に顔を歪め、時の柩を準備していつでも戦闘ができる状態を整える。俺の部屋に入ってきた侵入者は被っていたフードを脱ぐと月明かりに照らされてその姿を現した。その正体はまさしく兎である。正確には兎の耳と尻尾の付いた青髪の獣人族と呼ばれる種族の女の子だった。



「突然お邪魔して申し訳ないありません。ですが、どうかお願いを聞いていただけないでしょうか?」



 その女の子はその白いスカートを夜風にはためかせながら頭を下げる。俺はシャルロッテと顔を見合わせると、シャルロッテがコクリと頷くので取りあえず話だけでも聞くことにした。



「取りあえず話だけ聞く。どうするかはそれからだ」

「ありがとうございます! 私はシムシアと申します。実は......」



 そして俺は話を聞くと、シムシアが謎の集団に追われていて、ここに匿ってもらえないかというのがシムシアのお願いであるということだった。



「断る」



 話を聞き終えると俺はシムシアにはっきりと告げた。



「そんな......。どうしてでしょうか?」

「逆に何故俺が内容に見合う益もなくお前を助けなければならない? 俺からすればお前は人の部屋の窓をぶっ壊した挙句、面倒くさい頼み事をしてくる図々しい糞兎だ」

「はぅぅ。そんな酷く言わなくても」


 シムシアが泣きそうになっているのを知らんふりして、俺はシムシアを部屋から摘み出そうとする。その時だった。



「和樹さん、女の子を虐めて泣かせた挙句、追い出そうとするなんて何を考えておられるのですか?」



 シムシアの肩に手をかけた時に、後ろから背筋を一瞬で凍らせるような恐ろしい気配を感じて振り向く。そこには笑顔を貼りつけたシャルロッテが尋常じゃない雰囲気を漂わせていた。



「いや。うん。こいつを追い出して早く寝ないと明日の計画にも響くから......な」



 おそらくこれはとても怒っていらっしゃるであろうシャルロッテ(様)に俺は全力で弁解を図る。



「しかしなぁ......」



 めんどくさそうに頭を掻きながら思案する。このタイミングで厄介事に巻き込まれるのは実際百害あって一利もない。



「危ない!!」



 その時、シムシアが外からの僅かな物音に気付き叫んだ。俺が窓の方へ振り向くと、俺の目前には闇夜に照らされて輝く銀のナイフが俺の頭へ迫ってきていた。

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