第17話 死霊魔術師の戦い
□アルムスフィア聖王国 国境付近 レイメイの丘:《死霊魔術師》一ノ宮和樹
俺が「死霊魔術」を発動したのを感知したのか、俺が顔を上げるとグレイトマンムートが上空から高速で接近して来ていた。
「なっ! ヤバい! クソッ!」
俺は急いで死霊魔術によって構築された魔力のパスを使って、秀一達の死体に退避の命令を出して自分もそこから退避した。それから間もなくして空からグレートマンムートが降ってきて、周辺の地面を大きく揺らした。
「ブモォォォォォォ!」
グレイトマンムートが俺に向かって威嚇してくるなかで、俺はある違和感を感じていた。何かがおかしいと。俺が違和感の正体を突き止めようと思考を巡らせていると、グレイトマンムートが黒いオーラを纏って突進を始めた。俺はそれを全力で躱しつつ魔力のパスを使って陽菜には敏捷性向上の歌を歌うように命令した。秀一と翔吾には昴の高位炎魔術によって、グレイトマンムートのヘイトが昴に集中しないようにするためのヘイト集めと壁役になるように命令した。どうやら死霊魔術を使用した相手のステータスのような情報が魔力のパスを通して俺に伝わってきているようだ。ちなみに薫子ちゃんはもしものときの保険として下がってもらっている。
「......見せてやるよ。禁忌とされた死霊魔術師の戦いってやつを。大切なものを奪ったお前を俺は絶対に許さない!」
「ブモロォォォォォォ!」
そして命令を受けた勇者パーティーは攻撃を開始した。俺は戦闘能力は皆無、つまり足手まといになるため薫子ちゃんと一緒に離れた場所から戦いを見ている。今のところはうまくヘイトを分散させつつ高火力の魔法をぶつけていることに成功している。
少し目を離したそのとき、秀一がグレイトマンムートの牙によって突き上げられた。そして黒いオーラを牙に集中させて秀一の体を腹から突き刺した。秀一の体から大量の血が溢れ出す。普通の人間であればそれで即死して終了だ。そう。普通の人間であれば。
しかし今の秀一達は俺の死霊魔術によって蘇生されている死体だ。既に死んでいるために死という概念が存在しないのだ。秀一は腹を突き刺されたまま聖剣でグレイトマンムートの牙を切り落として地面に着地する。そして腹に刺さった牙を引き抜くと腹に空いた大きな穴は修復されて、たちまちに怪我などしていなかったかのように綺麗さっぱりとなくなっていた。これがどうやら「時の柩」の能力のようだ。つまり時の柩を装備している死霊魔術師によって蘇生された死体が傷付くと、その損傷箇所を復元してくれるらしい。
これによって名前の通りのゾンビ戦法が使える。大事な友達の死体をこういう風に使うのはどうなのだろうとも考えたが、これは秀一達の死体であって秀一達ではないと自分に言い聞かせて割り切った。
ゾンビ戦法が使えるためヘイト分散は上手くいっているのに、グレイトマンムートはあれだけの高位魔術を食らってもまだピンピンしていた。
「グレイトマンムートはただの獣のはず! 何で魔術に耐性があるんだよ!? それによく考えたら何でグレイトマンムートが空から降って来たんだ!?」
疑問に思った俺はすぐに意識を脳に集中し始めた。
ほぼモブ化しちゃった和樹。主人公のはずなのに!
今回は話が長くなったので2話に分割しました。




