第11話 伝説になれない者
□アルムスフィア聖王国 レイメイの丘:《勇者》光ヶ崎秀一
「やめろぉぉぉぉ!」
俺は発射された弾丸の如くグレートマンムートへ向けて飛び出した。俺は必死な顔で聖剣に魔力を込めて全力でそれを振り下ろそうとする。だが、グレートマンムートの突進によって発生している衝撃波によって俺は馬車まで吹き飛ばされる。
そして突進を続けたグレートマンムートは大樹に激突した。グチャリという生々しい音と共に。俺は起き上がると目の端に涙を浮かべながら全力で大樹のもとへ走った。俺は大樹にたどり着くとその惨状を目の当たりにしてその場で崩れ落ちる。誰の目から見ても翔吾は死んでしまっている。
陽菜や先生は既に顔をくしゃくしゃにして大泣きしている。昴はその場で静かに泣いていた。俺の目からも一滴の涙が零れ落ちたが、俺のなかでは悲しみよりも怒りのほうが勝っていた。俺はもう一度立ち上がり聖剣を力強く持ち直す。
そして歯を食いしばり、全力の殺意をグレートマンムートへと向けた。陽菜はいつの間にか泣き止んでおり、もう一度俺に歌で援護をしてくれている。更に俺の聖剣が青白く光り出す。隣を見ると昴が何かしらの魔法をかけてくれたようだ。
「秀一君、絶対に翔吾君の仇を取りましょうね」
「ああ。もちろんだ!」
昴が目から涙を浮かべながらそう言った。俺は自分の涙を拭ってから飛び出した。グレートマンムートもこちらへ全力で突進を仕掛けてきた。回避するために左へ飛び出そうとしたところでグレートマンムートはいきなり盛大に横転する。何が起こったかわからないが、俺は全力でグレートマンムートに何度も攻撃する。
その途中で足に魔法で出来たロープのようなものが地面から出て巻き付いていたのを見つける。おそらく昴の魔法だろうと思い、心の中で感謝しながらも何度も何度も俺は斬ったり刺したりを繰り返した。少しずつグレートマンムートに傷を与えることが出来たため、俺はそこで自分が持っているほぼ全魔力を聖剣に注ぎ込む。
「これで終わりだ! 翔吾やアルデラさん達の仇! うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
俺はほとんど全魔力を注いだ聖剣を一気に振り下ろした。
「ブモォォォォォォォォ!」
聖剣の光の一撃によりグレートマンムートはそのままピクリとも動かなくなった。俺はそれを確かめるとみんなのもとへ走って勝利を伝えた。
「やりましたね! 翔吾君やアルデラさん達の仇取れましたね」
「ああ。 そうだな」
昴に対して俺はそう答えながら大樹の根元に横たわる翔吾の亡骸を見ていた。
「とにかく1度お城に戻ったほうがいいのですよ」
「それより先に翔吾達をしっかり弔いたい」
俺は大樹のもとまで歩いていく。そして聖剣にもうほとんど残っていない魔力を注いて、大樹のすぐ側に突き刺す。するとそこに人1人がはいれそうな穴ができたので俺はそこへ翔吾の亡骸を入れた。1度手を合わせてから穴を埋めようとしたその時だった。
上空から大きな黒いオーラを纏ったグレートマンムートが1匹降りてきたのだ。
「おい嘘だろ......。何でもう1体こいつが出てくるんだよ!」
「もう無理ですよ。もう1体なんて倒せるはずないです」
「嘘よ。なんでこんなことになるの?」
「早くみなさん馬車に乗ってくだほしいのです!」
しかし、俺の怒りはどうやら沸点を超えてしまっていたらしい。頭では撤退するのが正しい選択だとわかっていても俺はこいつを生かしたまま撤退することなどできなかった。気づいたときにはもう体が勝手に動いていた。何かに突き動かされるかのようにただ夢中で俺は剣を振り続けた。
「うぉぉぉぉぉぉぉ! おるぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「秀一君早く戻ってくるのですー! 先生は秀一君にまで死んでほしくないのですー!」
先生からの必死の声が耳に入ってくる。それでも俺はこうすることしかできないからこうするのだ。翔吾やアルデラさん達を守れなかったから、俺はこうすることで勝手な自己満足に浸っているだけなのだ。
グレートマンムートは体中に溜めた黒いオーラを身に纏わせる。また一気に解放するつもりなのだろう。俺はニヤリと笑うと、生命エネルギーからもありったけの魔力をかき集めて聖剣に注ぎ込む。おそらくこの一撃で仮にこいつを倒せたとしても俺は死ぬだろう。だが、残りのみんなを守れるならばそれでいいと俺はそう思えた。
遂にグレートマンムートは黒いオーラを一気に解放する。その瞬間俺は自身の命を魔力に変換して文字通りの全身全霊の一撃を思い切り叩き込んだ。そして聖剣の光とグレートマンムートの黒い闇のようなオーラが衝突し周囲にとてつもない強さの衝撃波が猛威を振るう。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! 喰らえぇぇぇぇぇ!」
「ブモォォォォォォォォォォォォォォ!」
そして最後は俺は眩しい輝きの中にいた。痛いはずなのに痛みは全くなく、ただやり切った感だけが残る。
「あぁ。俺は死ぬんだな。奴を倒せたかわからないのが残念だな」
俺は頭を掻きながらため息をつく。
「和樹、助けに行けなくてすまない。お前は生きてくれよな」
今出来る最高の笑顔でそう言った後、俺の意識はそこで途絶えた。
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