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仮面の中  作者: 高見 リョウ
デート
10/12

2-5

 週が明け月曜日になり、大杉剣士とのデートがあと1日と迫っていた。この日由姫は、「マスコミ学入門」という講義を受けていた。この講義は比較的受講者も少なく、かなり集中して先生の話を聴くことができると言われていた。

 由姫は簡単に単位の取得ができる講義など受講はしなかった。せっかく学費を払って、大学という高等教育機関で学ぶことができるのに、それを無駄にはしたくなかったからだ。それに、今の世の中高学歴とはいえ、多くの企業は大学名を隠して就職試験を行うため、有名大学とは言ってもそれはブランドでしかないのだ。そんなわけで、由姫は大学からが本当の勉強だと思っていた。

 この日、「マスコミ学入門」では驚きの課題が出された。その課題は、本日から、この講義が終わる4か月後までに、自分が興味を持った人間に対して取材を行い、その人物についてのレポートをまとめてくるというものであった。ご両親や家族はダメで、それ以外の友人や先輩、その他の人物に許可をとって取材をすることがルールであった。

 由姫は少しばかり困っていた。対して取材をする対象が思い浮かばなかったからだ。普通ならゼミの指導教員である小日向先生が思い浮かぶであろう。しかし、現在由姫は小日向先生と話す気にはなれないでいるのだ。まだあの、「由姫は人間を愛せなくなっている」という言葉が脳裏をよぎってしまう。

 だとすれば窪田藍佳だろうか。しかし、由姫は最近の藍佳の自分に対する態度に、少しばかり違和感を覚えていた。それは、剣士と初めて会った日からである。あの時、ブサイクな剣士を拒絶したことから藍佳は激高した。由姫は正直に言ってあのような藍佳を見たことがなかった。その態度が次に会った時には180度変わっていた。普段は優しい藍佳であるが、あんなに優しい藍佳を、由姫は見たことがなかった。なんだか意識的に優しくふるまっているように感じたのだ。

 由姫は大学の廊下を歩いている時、壁に大きく張り出されていたカレンダーに目をやった。このカレンダーはすべての月を一斉に見ることができるカレンダーだ。これを見ると、4か月後はまだまだ先のような気がした。由姫はもうしばらくしてから取り掛かっていこうと考えた。


 火曜日になってしまった。今日の夕方、由姫は剣士とデートをするのだ。男の人と一緒に出掛けるのは、結構久しぶりであった。いくら恋愛対象外のブサイク系男子とはいえ、あまりに手を抜いたメイクで行けば失礼に当たると思い、ばっちりとメイクを済ませて家を出た。

 大学へ行く道中、由姫は男の人に視線が自分に向いているのをいつも以上に認知していた。由姫はよく人から、「由姫は可愛いから、気を付けた方がいいよ」と言われていた。自分では自分の事を可愛いとか思ったことがなかったが、自分は可愛い部類に入ることを大学に入って自覚した。一度友人にこんなことを言われた。「由姫は可愛いから男が寄り付かないんだね、もう彼氏いるなとか…」それに対して由姫は否定をしなかった。確かに、可愛いことによって、反対に可愛いことによって彼氏ができないことはよくある話かもしれない。可愛い芸能人に限ってスキャンダルが少ない。事務所が守っているだけだろうか。

 この日の講義は長く感じた。なぜ長く感じるのか由姫には分からなかった。時折、心臓が強く打つのを自覚した。教授が話す言葉なんて耳には入ってこなかった。必死にパワーポイントに書かれている文字をノートに写していった。テストになったらここから勉強すればいいと自分で切り替えることができた。長い講義の時間が終わり、由姫は剣士との待ち合わせ場所に移動した。


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