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秀次の陳情
「お呼びでしょうか、秀次様。」
宿老一豊が赤子を抱く秀次を見て声をかける。
「よくきた、伊右衛門、千代よ。」
幸太朗は一豊をじっと見た。
震える小さな手は秀次の袖を掴むように見えたという。
「二人に...すまないが頼みがあるのだ...」
秀次は二人にまず頭を下げると二人は慌てた
「あ、頭をおあげくださいっ!秀次様...!!
お訊きしますから!どうか!」
そういうと秀次は渋く深い声で二人に言った。
「わしは...太閤により死ぬのだろう?
だから頼みがある。この子を...この子を匿ってくれぬか?」
深く頭を下げたまま続ける
「まだ産まれて僅か。
この子だけは...この秀次の子だけは...遺したいのだ...!!
太閤のことだ...秀頼を立てるのにわしは邪魔であると
わしも、その近者も、消し、安泰とする...
しかし、そうは...いかぬ...いかぬのだよ!!」
グッと頭を上げ 真っ赤に染まった目。
二人を睨むように見て
「わしには遠慮はいらぬ...この子を...この子を頼みたい...!!」