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03.道久 - プロローグ -

プロローグ回はこれで最後です。

※プロローグは主に説明・紹介。

今回は道久ことミッチー回です。

黒髪王子、というか腹黒王子なのかな?

サヤとトーヤは俺の幼馴染だ。


サヤには知らせていないが、生まれたときからサヤを守護するために様々なことを教育され、サヤは俺にとって主となる人、そう教えられてきた。

それは、しろ家が代々優秀な巫女を守る忍者の家系であるからだ。

予知ができる巫女は悪用しようと外部から狙われることが多い。


そういうこともあり、物心つく頃には既にサヤと一緒にいることが多かったのだが、途中からトーヤとも一緒に過ごすことになる。

サヤの予知でトーヤを見つけたのだと親父に聞いた。

『トーヤという存在により莢様は将来この場からいなくなるが、お前もその時は一緒に行き、お守りしろ』

と当然のように言われた。

当然のように言われたわけだが、俺もそれは当然だと思っていたので、特に驚きも何もなかった。

ふーんってな感じ。


サヤの守護者として教育されたせいで洗脳されているとか、そういうのはないと思う。

まぁ、洗脳って自分で気づかないものだから、断言できずに「思う」止まりなんだけどな。


そういうのを取っ払っても、サヤという人物を気に入っている。

ついでに言えば、トーヤも気に入っている。


サヤは残念クールビーティーな女。

見た目、艶やかで真っすぐな黒髪に、宝石のように輝く黒い瞳、若干釣り目なので冷たい印象をうけるせいか、近寄りがたい美人さん。

でも実際は、猪突猛進で、術のオタク女。

ついでに、鍛錬もオタク寄りか。


昔から鍛錬と術の研究ばかりしているようで、学校へ行き、授業が終われば即帰宅して、修行に励む毎日。

それは幼少の頃からで、幼少のサヤの『遊び』は俺とトーヤを術の実験につきあわせたり、『お父様のマネ~♪』とばかりに正拳を放って来たり、その正拳には気がこもっていて、見えない波気となり、もろにくらって気絶したり……。


気絶はきつかったなー。今考えても吐き気がする。

トーヤも文句一つ言わなかったけれど、結構なジャイ○ン莢には、たまに青い顔しながら振り回されていた気がする(笑)


とはいえ、そんなサヤの『遊び』は、俺も、多分トーヤにも楽しかったのは事実だ。

サヤが主な主導権を持っていたとはいえ、反抗もしたし、サヤの行動パターンから自分の思う通りの方向へ誘導もしたしな。

いきなり何もないところから火が生まれたり、水が出てきたり、風が吹いたり、土人形が踊ったり、そんなことがありえないことがサヤの周りでは常識に行われている。

というか、サヤが簡単に遊びと称してそれらを行ってしまうのが異常なのだが、それがまたとても面白かった。

親父に『莢様を止めるのもお前の仕事だぞ』とよく拳骨を食らったことは、まぁしょうがないかと思う。

それだけの悪ふざけをたくさんしていたわけだし。


サヤが中学生にあがった頃だろう。

そういう遊びをすることがなくなり、代わりに莢は術の研究に没頭していく。

いつかいなくなる自分の代わりに、他の人でも術が使いやすくなれるようにするための研究。


サヤが使う術はサヤオリジナルな術なので、普通の修験者では使えなかったりするためだ。

学校が終わればすぐ帰宅のスタイルは変わらず、そういったところもあり、周りの者は莢を遠目に見ているようだった。

友達になりたくても、話しかける隙がないというか。

莢も親友を作りたいとかはないようだから、まぁ、俺も気にしなくっていいかと思っている。

本人は気づいているかわからないが、いつか異世界へ行くということが念頭にあるから自然と距離を置いているのだろう。

守護者としては、主人に友達いないってどうよってところで若干心配になったけれど、サヤの毎日は楽しそうなので俺も気にしないことにした。


もちろん、サヤに言い寄ろうとする奴、妬みで嫌がらせしそうな奴らは、俺が絞めていたけど。


サヤの守護者としてサヤを見守る行動はしていたものの、特に護衛する必要もない、すっかり暇になった俺にはトーヤがいた。

トーヤもサヤと基本似たようなライフスタイルなのだが、トーヤはその爽やかでやわらかい雰囲気から、人からよく話しかけられた。

そして、トーヤは人に頼まれると断ることが苦手なようで、何かと面倒事を引き受けていた。

加えて成長に合わせて人気が高騰していき、しまいにはトーヤの取り合いといったことも多々起こるようになった。

トーヤは老若男女全てに人気がある。

もちろん、男の中には妬み、嫉妬している奴らもいるのだが、あの完璧男に立ち向かおうとする奴など出てくるわけもなく、むしろ、トーヤに手出ししようものならトーヤファンに何をされるかわかったもんじゃないと、内心は気に食わないと思っても関わらないようにしていたようだ。


トーヤは何でもできるようでいて、人に対しては不器用だ。

断ることが苦手なのも、どういっていいのかわからないからなようだ。


ジャイ○ンサヤの教育のせいかもな (笑)

サヤに害がありそうなことなら人が変わるのだが……。

ようするに、サヤ以外どうでもいいんじゃない?


俺は小さい頃、父から聞く前に、トーヤに誘導尋問でサヤがここからいなくなる訳を聞き出していたので、トーヤがサヤを異世界へ連れ去ることを知っていた。

トーヤに言わせると、トーヤは案内人ということなのでサヤが大事なのだろう。


サヤ大事のトーヤのトラブルは見ていて面白かったので見守っていたら、ある日相談されてしまった。

しょうがないから、トーヤファンクラブの結成を促し、トーヤの運動神経を買っている方々のためにトーヤ貸出日を作り、トーヤの笑顔にあやかりたい商店街の方々のために、トーヤ散歩コースを決めたり、とまぁいろいろ暗躍した(笑)

それからたまにトーヤの相談を受ける俺。

トーヤは俺の助言通りにしていたようだ。

そうしたら、すっかり周りからプリンス扱いされているトーヤが本当に面白かった。

まぁ、見た目ほんとプリンスだから全く違和感ないけど。

プリンス・トーヤが目立つおかげで、俺もいろいろ暗躍しやすくて助かったことは、トーヤに秘密だ。

忍者は情報戦も大事だからね。


そんな楽しい生活も今日でお別れになるのかーと感慨深くも感じたが、むしろそれよりも異世界という未知なる世界に胸が躍った。

忍者の家系に生まれ育てられたものの、どうにもその力を発揮できる場所がなく、正直不満だったのだ。

つまらないと言ったら親父にどやされるから言わなかったが、相当鬱憤が溜まっていた。

それでも異世界へ行くことになるとわかっていたのが、幸いした。

異世界へ行く日を目標に修業は欠かさず、真面目に取り組んだ。

異世界へ行くことがなかったら、もっとさぼりまくっていただろう。


一人で異世界へ行けと言われれば嫌に決まっているが、幸いにも気に入っている二人が一緒なのだから楽しみでしかなかった。


そして今日、この日。


俺はサヤを連れて山を歩いていた。

トーヤに頼まれていた場所へ連れて行くためだ。


サヤの気配が、だんだん気を引き締めていくのがわかる。

サヤが予知している異世界へ行く場所へ近づいているのだから、当然だろう。


ちなみにサヤの両親には報告している。

必要そうな荷物も最低限は用意している。

準備は万全だ。

サヤの気持ち以外は。


トーヤによると、異世界に行く日が事前にわかったとしても知らせるなと、サヤ本人が希望しているらしい。

サヤならそう希望するかもしれないと、俺は思った。

サヤは両親のことをとても尊敬し、愛している。

その両親に自分の泣く姿など、情けないところは見せたくないのだろう。


静かについてくるサヤを後ろに連れて歩く。

サヤの気は落ち着き、とても澄んでいた。


「サヤはやり残したことはないのか」

不意の俺の問いを口にした。


「……。ミッチーは知っていたのね」


「まぁね♪」


だって、サヤ付きの守護者だしなーという言葉は胸にしまった。

サヤ付きの守護者だから、今までずっとそばにいたと思われるのは気に食わない。


「黙っていて、ごめん」

サヤがぽつりと言う。


泣いてはいないが、少し声が沈んでいる。

俺も異世界へご一緒させて頂くことを考えると、反応がまた面白そうだなーと思いつつ、サヤの頭を小突いた。


「ッタ、…結構痛いんですけど」


サヤが涙目でにらんできたが、俺は素知らぬそぶりでサヤの前を歩いた。

サヤの沈んだ空気が戻った。


「……。やり残したことはないよ、やるだけやったと思う」

晴れ晴れとした声だった。

お読み頂きありがとうございました。

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