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21.お仕事いろいろ - 道久 -

足早にシールヒ中央の屋敷を出た俺とオウシュは、そのまま人気にない小道へ向かう。


サヤは追いかけては来ていないようだ。

そういう行動をとっているのだから、そうじゃないと困る。


しかし、こいつはとことん気にくわない。

俺が白銀の仮面をつけた少年を睨むと、少年はそれがまた面白いようで笑う。


「それで?道久。俺に望みがあるのだろう?」


そのニヤついた顔がむかつくので、正直に文句を言った。

「頭が良い奴は嫌いじゃないけど、お前はむかつくんだよ」


この美貌に膨大な力、そして明晰な頭脳。

ただの頭でっかちでなく、器用さを合わせ持っている。

そして極めつけはその地位・権力。


俺が欲しくてやまない装備を、しかもフル装備で持っている奴なんて、ムカつくしかないわ。


「俺はおまえを気に入っているよ。さっきいった言葉も嘘じゃない。道久と酒を交わしたいと思っている。お前と飲む酒はうまそうだ」


「嬉しくないね」


そう悪態をついても、オウシュは余裕の表情で笑うものだから、余計にむかつくんだよ。

ひたすら上から目線をひしひしと感じる。

これが大人の対応か?いやジジィの対応か?


俺は溜息をつき、気を取り直した。


「そうだよ、今の俺にはできないこと。オウシュ、おまえ神鬼代表なんだろ?ってことはなんか印籠とかもってるんじゃないか?」


果たしてこの異世界で“印籠”が通じるのかわからないが、とりあえず聞いてみた。


「よくわかったな。持っているよ、神鬼の印籠」


………そのまま“印籠”の意味が通じるとは思わなかった。


「お前の言う、身分証明みたいなものであっているのだろう?これを見せれば大概の町や市、国のトップは俺を貴賓として対応するだろうな」


そう言いながらオウシュが徐に取り出すのは、真っ白だがほのかに光を帯びる石だった。

石をよく見れば、三角形に丸というなんともシンプルな模様が刻まれていた。


「あまり使ったことはないが、道久は使いたいのだろう?大方サヤにばれずに手っ取り早くトリヒに人員を派遣するといったところか」


本当、こいつ嫌いだよ。


「その通りだよ。あいつに人員を派遣することがバレれば、あいつ自身が行くっていいかねないからな。だからあいつに知られずにてっとり早くを考えると、オウシュの権力を使うのが一番やりやすい」


そう、やろうと思えば自分でも町長に会うことはできるだろう。

正式でも不正でも。

だが、それには時間が要する。

正式に申し込んだとして、あの窓口の混乱を見ると、思ったいるより内部も混乱しているだろうから、町長まで連絡が行くには時間がかかりそうだ。

不正で会いに行ったとしても、俺の空間移動なら町長のいる場所へ飛ぶのはたやすいが、そんな怪しい男の言うことを素直に聞くとは思えない。

ましてや、何も身分証明もない男の話など、俺だったらまず聞かない。

言うことを聞いたとして、その後、目をつけられるのも得策とは言えない。


自分が町長にという案はいろいろ問題が多すぎる。


その点、オウシュの神鬼代表という権力はものすごく有効的だ。

心底むかつくが。


「いいよ、自由に使うといい。ただし、とっとと終わらせ、さっきの話の通り酒につき合え。それが条件だ」


「………なんでそんなに俺を気に入っているんだよ。お前サヤが好きなんだろ?ライバルなら普通毛嫌いするだろうが」


「サヤは好きだよ。あんな女はいない。だがそれとこれとは別だ。道久もサヤと同様他にはいないからな。気に入ったものを簡単に手放すのはもったいないだろう?」


不敵な笑みを浮かべるオウシュは、仮面を被っていても妙な怪しさを放っている。

無駄にフェロモンだすな。


「俺は貪欲でわがままなんだよ」


そこでキメるな、キモいって言ってやろうか。


………やめた、それじゃただのガキだ。

明らかにオウシュは俺をガキ扱いしているのも気にくわないが、それに合わせる必要もない。


「その条件飲んだ。すぐに終わらせるから、印籠とお前の顔貸せ」


俺の言葉に悠然とうなずくオウシュ。


もう、突っ込むまい。


「ああ、ちょっと待て、その前にアヤメを呼ぶ」


そう言うとオウシュの角が一瞬赤く瞬いた。


あれか、神鬼特有の角アンテナだな。


「あと5分もすれば来るだろう」


「……アヤメは何してんの?」


「アヤメ?言っていなかったか?あれは町にある俺の肖像画全ての処分を命じている」


俺は思わず顔を引きつらせる。

「……嫌がらせだろ、それ」


俺の言葉に、オウシュはさも当然だろうと笑顔で応えた。


あれだな、あの「オウシュ様は町へ入って早々に行列を作られたので町から退散致しました」というアヤメの発言に対しての嫌がらせ。

俺、あのとき吹き出したからな。


退散ってなんだよ、要するにその状況はオウシュにとって、予想外だったんだろ?


想像したらおかしかったのだ。


しばらくするとアヤメが来た。

「お待たせしました。オウシュ様」


「状況は?」


「順調に進んでおります」

そう言うアヤメは若干やつれている気がする。


あの肖像画、どうも大量複製されているようで、思っているより出回っているんだよな。

御気の毒様。


「ふーん。とりあえず、今はトーヤとサヤの元へ行って宿を案内してやれ」

有無を言わせない言葉。


「御意」

それが当たり前の主従関係。

アヤメがそのまま、また姿を消す。


「なぁ、宿ってとってあったの?」


「アヤメのことだからとっているだろう」

信頼関係と言えば聞こえはいいが、どちらかというと、とってなければ許さないとばかりの言い様だな。

それをむしろアヤメは喜んでしているのだろうから、いいのだろうけど。


「さて、行くか。シルフィア」


「はい」

妖艶な笑みを浮かべながらシルフィアが現れた。

そして小さな扉を出す。


「ほう、サヤがいなければそれは出せないと思っていたが…」

オウシュがつぶやいた。


「ええ、サヤ様がいなければあの大きさは出せませんよ。これは2人‥‥頑張れば3人までは潜れる扉でございます」

シルフィアはにこやかに答える。


やだな、俺。

このシルフィアのオウシュに対する柔和な態度って俺もオウシュを気に入っているってことだよな。


チラリとシルフィアを横目で見れば、満面の笑顔が返ってきた。

肯定するかのように。


考えるのやめとこ。


そして俺とオウシュは扉を潜った。



******************



町長との対面は無事終わった。


本当、簡単だった。

最初は、突然現れた俺達を警戒…いや、むしろビビりまくっていた町長も、「この紋所が目に入らぬか」とオウシュが印籠を見せればすぐに察したようで、今度は別の意味でビビりまくりながらも町長は接待してくれた。

といって、こちらは長居するつもりはない旨を伝えたので、高級茶が出ただけだが。

トリヒの村の状況を話せば、すぐに復興の為の人員を手配してくれた。


本当、楽なものだ。


そして、早々にその場を後にした俺とオウシュだが、約束通り酒を交わすことになった。

何が悲しくて、男二人、しかもムカつくな男と一緒に酒を飲まないといけないのか……


どうせなら、サヤやトーヤと飲みたいものだが、この後俺は用事がある。

………サヤもトーヤも酒は飲みそうもないが。


「で?お前はどんな酒を好む?」


自然に調子でオウシュが聞いてきたので、咄嗟に答える。

「濃いやつ。辛口」


あ、やば。

酒のメニュー見て考えてたら、口が滑ってしまった。


オウシュはそれを聞くと、自然に手を挙げ何やら酒を注文する。


そして俺に改めて向き直るとニヤニヤした顔で質問をしてくる。

「あちらでは未成年ではなかったのか?」


確信犯だろ、絶対。

っていうか、オウシュが気持ち悪い。

そういう鎌を掛けるなら女にしてろ。

まさか男女両方いけるくちとかじゃないよな。


思わずちょっと引きながらオウシュに疑いの眼差しを向けると、さすがにオウシュが不機嫌そうな顔で返してきた。


「変な勘違いするな。俺はサヤだけだ。お前は、サヤとは雲泥の差だ。安心しろ」


「だから、何なんだよ。俺はどうせ飲むならサヤと二人で飲みたいよ」


「同感だ。だが、サヤは『色恋沙汰は一切受け付けません』宣言しているだろう?むやみやたらに誘うのもな」


オウシュは見た目よりは、サヤに紳士的な態度であると思う、俺なんかよりよっぽど。


「で?俺?一人で飲めよ」


「………大人びているようで、そういうところは子供だな」


「俺は14しか生きてないからな、当たり前だろ」


オウシュにとって俺のその言葉は驚愕だったようで。


「いや、いくらなんでも……」


「じゃあ、言い方を変えれば、今年15歳。サヤが一つ上の16だよ」


「サヤはわかる。だが、お前はおかしいぞ。さすがに20代だと思っていた」


「知るかよ。お前今さっき俺が子供だっていったじゃねーか」


「そう思う時もないわけではないが……。お前の世界では俺のようにある年齢から姿が変わらないような奴はいないのか?」


「いねーよ。………お前、俺を何だと思っていたわけ?」


「俺と同類。変人」


「………」

思わず固まってしまった。


まさか、オウシュ本人の口から自分を“変人”という卑下する言葉が出てくるとは思わなかったからだ。


ふとオウシュの手元を見れば、強そうな酒のグラスがある。

いつの間に飲んだのか、ほぼなくなっていた。


いや、待て。

オウシュが変人だとしても俺は違うぞ。


「俺をお前の仲間にするな」


「そうか?お前が俺に近くないと?」


すっと俺を睨み付ける目が鋭い。


「俺はずっと自分がおかしいと思っていた。周りがあまりにもバカすぎる。力がなさすぎる。口だけは達者で愚かな者が多い。それは道久、お前も思っていたんじゃないか。どこか達観して物事を見てはいなかったか?」


オウシュの言葉は理解できる。


頭に過去の俺がよぎる。

面白いように、俺の外面に騙される大人たち。

子供も大人も、俺から見れば十分に幼くつまらない。


3歳過ぎた頃には既にそう思い始め、気付いてしまった。

自分が異常過ぎるのだと。


頭が良すぎたのだ。

周りから見たら、随分くそ生意気でひねくれたガキに見えていただろう。

同世代の子供など、俺に恐れて近付きさえしなかった。


「………で?そうだとしても?」


俺は問いに問いで返した。


「素直じゃないな。………まぁいい。俺は羨ましいと思うよ。だってお前は幼い頃にはサヤに出会っていたのだろう?」


俺はサヤと出会ったあの時のことを思い出した。

サヤに出会って、俺の考えが一変したあの時。


俺の表情で肯定と受け取ったオウシュが言葉を続ける。


「俺もお前も周りから見たら浮く存在。だが、サヤは俺達よりもよっぽど異常だ。サヤに比べたら俺もお前もよっぽど普通で、異常なサヤを見ているといろいろ考えるているのがバカらしくならなかったか?」


そう、サヤは異常だった。

それなのに、サヤはその異常を吹き飛ばすくらいの底抜けの明るさを持っていた。

その明るさを目にして、自分こそつまらない人間だったと思い知らされた。


「……本当、お前嫌い」

俺はオウシュを横目で睨み、酒を煽る。


そんな俺をオウシュは笑う。

「同族嫌悪だよ、それは」


「なんでそう思うんだよ」


「俺がサヤに惹かれる理由を考えた結果というべきかな?俺は女で遊んだことはあったが、飽きて長くはつづかないし、100歳になる頃には女遊びにも飽きていたよ。サヤは一目惚れというやつであったが、それは認めてもなぜ惹かれるのかを考えていた。これは一つの理由のうちにしかならないだろうが、そうだな……。サヤは息をするように莫大な力を行使しているのに、そんなこと露程にも思わず、自分の信念を貫いている。考えているのは、どうすれば自分の望むことを実現できるか。力なんてものはそれをこなすための道具に過ぎない。サヤは悪く言うとバカなんだが、良いバカだ。俺は好きだ」


同感むかつくんだよ!!


「その表情、少なくともお前がサヤに惹かれている理由の一つには入っているんだろう?ほーら、同族だ」

いつの間にか、2杯目を飲み干したオウシュが3杯目を注文する。


こいつの何が嫌なのかわかった。

確かに同族嫌悪だ。

だが、そう簡単ではない。

俺が欲するものをたくさん持つオウシュ。

そしてその中でも“経験”だ。

俺はオウシュみたいな奴は自然と避けるのに対し、こいつは逆に近づいてきて俺の反応を楽しんでいる。

歴然とした対応の違い。

俺が子どもな対応に対し、余裕の大人の対応。


しかも今気付いたが、オウシュは俺が先にサヤに出会っていることに嫉妬し、その嫌がらせで俺が不快とするポイントを突っついてきている。


俺がイライラMaxで酒を飲み、酒と飯を適当に注文する。

もう、さっさと腹を満たしてここを退散しよう。

逃げたと思われようが、何だろうがかまわない。


そんな俺に対し、オウシュはとても愉快そうだ。


「すまんな、ついつい遊んでしまった。お前の反応、面白くてな」

クツクツと笑うオウシュの手元の酒は、5敗目に突入していた。


「礼を言おう。良い酒のつまみになった」


俺は届いた飯を一気に口へ掻き込む。

最後に酒も一気に流し込む。


「ごちそうさん。じゃ、俺行くから」


そう言って立ち上がる俺にオウシュが言った。

「ちょっと待て」


すると不意に小さな白い石を投げてきた。

咄嗟に受け取る。


「それは神鬼の印籠の小型版だ。俺が気に入った者しか渡していない。神鬼でもアヤメと後1人にしか渡していないものだ。何か困った時使うといい。お前の力量に下級冒険者の称号は合わないよ」


そう言われて観察すれば、ただの小石に見えたそれは、先ほど見た神鬼の印籠と同じく白く淡い光を放ち、三角と丸の文様もしっかりと刻んであった。


「どーも、素晴らしいご配慮を」


俺は口ではお礼を言いながら、思いっきり睨みつけていた。

しかし、この小型印籠はもらっておく。

どんなムカつく奴にもらったとしても、あるに越したことはない。

ものすっごく不本意だが。


「ああ、あともう一つ。救済終わったら俺と戦えよ」


俺は背中に聞こえるその言葉に対し、振り返りもせずに出口へ向かった。



******************



「敗北ですわね。ご主人様」


不意にシルフィアの声が聞こえた。


「うるせーよ」


「オウシュ様の前ではご主人様はまるでお子様のよう」


「オウシュなんかに様つけるな」


「そうでしたわね」

と言いながら、フフフと楽しげに笑うシルフィア。


確かに俺とオウシュは似ている部分が多々ある。

ある意味、俺が成長したときの理想形ともいえる……認めたくはないが。


そういうところもイチイチ俺の神経を逆なでる。

ああ、このイラつきどうしたものか。


………


俺は一人の気配に気づいた。

いろいろ都合のいい奴の気配。


「おーい、ストーカー」


するとストーカーになりつつある、ヒュリヤが現れた。


「誰がストーカーですって!たまたま通りかかっただけですのよ!」


そう叫びながらひょっこり現れたヒュリアは俺に食って掛かる。


俺は無視し、質問する。

「サヤは?」


「サヤ様はもうおねむですのよ」


「ああ、寝たからこちらに来てみたのか」


「だから通りかかっただけですわ!サヤ様もたまたま見かけたのですのよ!!」


「おし、んじゃ、ちょっと行くぞ」


ヒュリヤの言動は基本無視することにしている。

それぐらいが丁度いい。

俺に恐怖を抱いているせいか、質問には素直に答えるしな。


俺はヒュリヤの首根っこを摑まえ、一気に空に駆け抜けた。


「ィヒイィヤアアァアアアァァァァ――――――!!」



---ちょこっと閑話---------------------------------------


日がすっかり落ち、星が輝き賑わうシールヒの町に、女性の、この世のものとは思えないような悲痛に満ちた悲鳴が響き、しかしそれもほんの一瞬のことで声はすぐに遠ざかる。

何事だ見に行った町人もいたようだが、その発信源とおぼしき場所に行っても何の気配すらせず、悲鳴もその頃には消えていて、幻聴だったのではと思ったようだ。

だが、後に町人どうしで話してみれば、外にいた町の者は一瞬だけだがその声を確かに聞いていた。

身の毛のよだつような女性の悲鳴を……。


後にシールヒの怪談の一つになるのだが……


それは後日談となる話。

ちなみにこれは、後にシルフィアがくれる情報。


いつのまにか、俺の術式を少しできるようになっていたシルフィアが、自分の精霊の一部と術式を組み合わせたものを町に張り、簡易的な情報を収集していたそうだ。


「だって面白そうだったのですもの」

不適に笑うシルフィア。

「サヤ様が万が一何かあったとき、すぐに駆けつけたいですからね」

その理由は後付けなんじゃないのか。


そう思った俺は多分間違っていないだろう。


------------------------------------------


「ヒィィィィエェエエェェ―――――――」


相変わらずヒュリヤの間抜けな悲鳴が耳につく。


いい加減耳が痛くなってくるので、前に施したものと同じ術をヒュリヤにかける。


「…………!!」


ヒュリヤにとっては何も変わらないのだろうが、悲鳴は無くなり俺が楽になった。


さて、もう少しすっ飛ばそう。



俺がオウシュと飲んだ後、何の用事があったかと言えば、次の移動先へ視察だ。

今のうちにしておけば、次の日の早朝にする予定の冒険者登録が終われば、シルフィアの転移の門ですぐに移動できる。

一度行かなければ発動できないが、一度行けさえすれば、その場所へ簡単に移動できるのだから便利だ。

そして、今の俺には風と闇の精霊で、町と町を移動するなんてそう時間をとることもない。


ただすごい勢いですっとばしているので、巻き込まれているヒュリヤにとっては運が悪いとしかいいようがない。

こういう移動というのは、自分でやるのと人がやるでは体感速度など感じる部分が違うから、随分体に負担がかかるだろう。

獣人だから大丈夫かと思ったんだが……。

自分でやっておきながら少し同情。

でも速さ緩めないけど。


次に行くべき聖闇球は火山の近くにある。

火山の近くの町と言えばドワーフの町ということなので、そこを目指している。


空を猛スピードで駆けつつ、視認できる場所までの転移も同時に実行する。

その行為を何度繰り返しただろうか。

ようやく、火山が見えてきた。

火山という良い目印が見えたので、火山の間近すぎないよう火山付近上空に視線を移し、俺は一気に転移する。

これまでで一番遠くとなる転移だったが、問題なかったようだ。


かなり上空へ上って転移を繰り返していたので、視認できる範囲が広かったのも良かったのだろう。

思ったよりもかなり早く着くことができた。

闇の精霊が属性であるのも良かった。

夜だというのに、意識すれば昼間のようにはっきりと物を見ることができたから。


本当、隠密に向いた能力だとつくづく実感しつつ、横抱きにしていたヒュリヤを見てみる。

さすがにあのスピードで首根っこ掴んだままでは、首絞められた状態になってしまうからな。

サヤ以外はなるべく触れたくないのだが、甘んじて横抱きにした。


ヒュリヤは気絶していた。


「おい、起きろ」


俺は無理やりに起こす。


目が覚めたヒュリヤは悲鳴を……あ、術であげられないんだった。


「……!!……★◎%!?」


未だ、上空にいるので、混乱しまくっているようだ。


「お前、悲鳴あげるなよ」


脅し半分に告げると、ハッとしたヒュリヤがコクコクとうなずく。

そうして、俺は術を解く。


「大丈夫か?」


一応聞いてやろう。


「大丈夫じゃないですわよ!いきなりなんですの!!っていったいここはどこですのよ!!!」


涙目で俺を睨むヒュリヤ。

まぁ、そうだよな。

しかし、無視。


「お前、ドワーフの村来たことある?」


「……ここ、火山ですわね。……ないですわ」


「ふーん。んじゃ、聖闇球に近い町ってどっちか知らない?」


「聖闇球に近い町……。確か、近くに湖があると聞いたことがありますわ」


さすが腐ってもモヒュケの守り人。


「お、あっちだな」


俺は視認すると、転移する。


「え、ちょ、ホワッ!」


変な声が聞こえたが、無視。

着いた先は、町の外。

町には外壁があり、検問を通らなければならない。


「おい、ヒュリヤ。お前検問通れるよな?」


突然の転移に焦ったのか、少し息を荒くしたヒュリヤが答える。

「……当り前ですわ。私これでもモヒュケでは一番の守り人でしたのよ」


フンっと踏ん反り返るヒュリヤを無視し、命令する。

「じゃあ、おまえ一人でこの町の様子見てきて。明日にはこっちくる予定だから、町におかしなことがあったら報告な。じゃ」


俺はそのままシルフィアに扉を出してもらい、帰ろうとする。


「ちょっと待って!!」


慌てたヒュリヤが俺のマントを掴む。


「突然、なんですの!あまりに横暴ですのよ!!」


ヒュリヤを見れば涙目だった。


「んじゃ、後でバイト代を払う」


「そういう問題じゃないですわ!」


「………。だってお前、ストーカー(仮)になっているじゃないか。サヤのところにいないなら、働け。どうせなら役に立て」


「なんで私が」


「タダでサヤのストーカーをさせるわけないだろ」


「ストーカーではありません!」


「じゃあ、俺達の周りをうろうろするな。勝手に転移の門使ったくせに」


「……う」


「守り人なら、救世主の為に働くのも仕事のうちじゃないか?」


「もう、私は守り人ではありませんわ」


「じゃあ浮浪者?」


「た、旅人ですのよ」


「転移の門の運賃出せ」


「……い、いくらですの?」


「貴重な術だからなー。これくらい?」

2本指を出す。


「に、二万CL!?高すぎですわ」


うん、適当に解釈してくれたね。


「出せないなら、働け」


「………」

反抗心いっぱいの目で見るので、俺が殺気を込めて睨んだら、頭を垂れてうなずいた。


「じゃあ、よろしく」


俺はさっさとその場を退散した。


ちなみに神鬼の印籠(小)を使ってもいいのだが、貴賓として迎えられても困るので使わない。

そして俺の隠密能力なら検問なんて関係ないのだが、今日はもう疲れた面倒くさい眠りたい、そして腹いせにヒュリヤに嫌がらせしたいという気持ちの方が勝った。


まぁそれも、空から感じる闇の気配は大したことがなさそうだという判断があったからだけど。




転移の扉でシールヒに戻った俺は、サヤが泊まっている宿屋を探し出す。

慣れ親しんだサヤの気配を感じ、安堵を覚える。


どうせだからサヤの眠りこけている姿でも拝んで寝ようかと、部屋の前まで移動。


軽く周囲の気配を探る。

部屋割はサヤが一人部屋のようだな。

隣りは空き部屋。

逆隣りはトーヤがいるようだ。

どうも、オウシュもアヤメも帰ってきていない様子。

オウシュは大方まだ酒に入り浸っているのだろう。

アヤメはまだ肖像画処分しているか、またはオウシュの傍仕えをしているか。


まぁ、いいや、見るだけ♪見るだけ♪


地球にいた頃も、たまにではあるが、夜中にサヤの様子を見に行くことがあった。

そのときはイタズラ心が強く、真務まのつかさ家の屋敷を守る者とサヤに気付かれないようにするスリルを楽しんでいたのだが、今にして思うと、ただ単にサヤに会いたかっただけなんじゃ……。


俺、ガキ臭ひどいな。

っていうかストーカー…、いやいや俺サヤの守護者だし、自分の主人の様子を見に行くのは当たり前だ。

職権乱用ではない、多分……そういうことにしておこう。


しかし、今の俺の能力からすると忍び込むことなど容易過ぎるな。

ドアを開ける必要がない俺は、すり抜けるようにしてサヤの部屋のドアを抜ける。

空間移動ができる俺には、視認できなくても壁1つ抜けるのは容易い。

窓から抜けても良かったが、夜中とはいえ人が通らない訳ではない。

万が一町の者に見られれば、通報されかねないので却下だ。

そうして、誰にも気付かれることもなく、サヤの眠る部屋へ侵入したわけだが。


サヤはというと、身を少し縮めて横向きになって眠っていた。

スース―と静かな寝息が聞こえる。


そっと傍へ近づき、サヤの顔を確認する。


「………」


サヤは目から涙が流れていた。

表情も少し悲しそうにしている。


俺は起きている可能性も考えたが、眠っていることには間違いはなかった。


涙は大量ではなく、時折、一滴流す程度。

俺はそっと手で涙をぬぐう。


夢なのだろうか……

今までこんなことは一度もない。


しばらく、サヤの様子を見守る。

時折流す涙。


俺はそっとサヤの瞼に口付けを落とし、そして優しく髪を一撫でし、その場を離れる。


俺は壁を通り抜け、隣りのトーヤの部屋へ乗り込んだ。

ヒュリヤです♪

今回は私が後書き致しますね。


ってか、ミチヒサはむかつんですよ!

横暴だ!ふざけんなって感じです。

そしてあのイケメン面が憎い!かっこよさ余って憎さ100倍!

うう、でもでも今日抱きしめられちゃったよ、あの温もりが…。

もしかして、あれってある意味二人でお空の散歩デート

えへ、えへ、えへ。

いやいや、でもなんで私が一人で調査なんてしなければいけないの!

ああ、でも私に送るあの冷たい視線に逆らえられない……。

ついつい見惚れちゃう……くそ!むかつく!


あれ?

この相反する気持ちが何気に気持ち良い気が…


そんなわけで、やばい方向に目覚めつつあるヒュリヤでした♪




さーて、調査すんべー。だりー。ってか私だって寝たいよねー。

でも身体が思っているより元気なんだよね……

あー、サヤ様が癒したんだっけかー。

とりあえず、お腹空いたから居酒屋にたかりに行こーっと♪

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