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13.わかったこと - トーヤ -

「考えるんだな。何か意味があるとは思わないか?」

オウシュの言葉から、4人は聖闇球までの道のりを黙って歩いていた。


サヤはラーゴを肩に乗せ、真剣な表情でテクテク歩いている。

その後にご機嫌そうなオウシュが続き、アヤメさんが続く。


オウシュの言葉はサヤに向けられてたものだったけれど、俺にも向けられているように思う。

そう、何十億年前という間、俺は生きてきたけれどこんなイレギュラーはない。


今まで何も考えずとも自然な流れで転生したティアである救世主を迎えに行き、闇の神殿で装置ルチレイティに力を注いでもらい、そして救世主が元の世界へ帰りたいといえば帰すし、残りたいといえばこの世界で快適に過ごせる場所を提供した。


俺にとってそれが役目であり、ティアの役に立つのであればそれが史上の喜びでもあった。

感情がないと言われていたけれど、俺にとってティアが全てだったから。


けれど、オウシュに言われて気付いてしまった。

今の俺にそれが耐えられないだろうことを…。


いつか、サヤがいなくなる。

そのいなくなる理由が、サヤが元の世界へ帰るか、サヤがこの世界に留まり寿命の時まで見守れるかなのだろうが、いずれにしても俺にとってはサヤと分かれるのが少しだけ早いか遅いかの違いだ。


今までは、過去の救世主達にこんな思い入れなかった。

魂は同じでもやはりティアとは違う存在と感じていたから。

しかしサヤは他の救世主とは異なり、ティアとも違う、俺にとっては掛け替えのない存在になっている。


ティアとも比べられないくらい大事なサヤ。

ティア以外では知らなかった感情。


どうしてそうなったのか。


それはわかっている。


イレギュラーで子供の姿になり、サヤと姉弟として過ごしたあの時間がそうさせた。

サヤに振り回されながら過ごした時間は楽しかった。

一緒にイタズラに成功したときは笑って、一緒に世話をしていた動物が死んでしまったときは泣いて、サヤの横暴さに怒ることもあれば、迷惑をかけて謝ることもあった。

様々な喜怒哀楽を経験した。


そして生まれた人格トーヤ。


思えば、サヤに初めて「トーヤ」と呼ばれたその時から人格が生まれたのかもしれない。


ティアが身体を作ってくれた大事な人なら、サヤは人格を与えてくれた大事な人。


気付いてしまった。

だが、気づいたとしてどうしろというのだろう。


今回救世主であるサヤを迎えに行き、そして記憶を回収し異世界へ戻ってきたときの何とも言えない違和感。

いつもと同じはずなのに、喜びと不安という感情が入り乱れていることに気付いてはいたけれど、それについては無意識に考えないようにしていたのだと思う。

それを考えると、俺は案内者としての役目が果たせないかもしれないとどこかで思ったのかもしれない。

しかし異世界へ戻って来て、オウシュに問いを投げかけられ、嫌応でも自分の明確な不安に気付いてしまった。


怖い、サヤがいなくなる瞬間が。

道久もいなくなるだろう。

オウシュもいずれいなくなる。


今の俺に大事な人を失った世界に耐えられるのか………。


“孤独”という言葉が頭をよぎる。


俺は無表情に、けれど心では不安で押しつぶされそうになりながら歩いていた。


そう俺は無表情だったと思うのだが…


スッパーーン!!!


突然、背中を叩かれた。


「!!??」


俺は大体誰がしたのか想像しつつ、歩みを止めて後ろへ振り向く。

すると想像通りの人が立っていた。


「くっらーい!!何塞ぎ込んでいるのよ!バカね!」


サヤの顔が怒っている。

しかもぶつくさ何か言っている。

----「なんでこんなに背が高くなっているのよ、頭届かないじゃない」


サヤは頭を叩きたかったんだね。

そういえば、小さい頃そんな風に叩かれていたな。


あの頃は結構痛かったけれど、今は……うん、今も痛いな、背中に紅葉型の跡がついていそうだ。


「トーヤ、私わかったわ」


サヤが少し怒ったようだけれど決意した表情で俺を見つめる。


わかったってオウシュが言っていた“意味”の話だろうか。

……えっ!それ、正直、さすがに早すぎないか?


思わず目を見開いて驚いている俺に、サヤは少しバツが悪そうに言う。


「オウシュの言う意味とかそういう難しいことはわからないわよ。……そうじゃなくて、そうね。わかったというよりも、決めたの!」


俺を見つめるサヤの眼差しはとても真っすぐで眩しく思う。


「トーヤをぜっったい一人にしないからね!」


「…!」


「だっておかしいじゃない。何十億年もずっと一人でいるなんて。前のトーヤはどんな気持ちかはわからないけど、今のトーヤは無理よ、絶対。だってあなた気付いてる?前まであんなにみんながあなたに憧れを持って競ってあなたの傍にいたのよ。全然一人の時間なんてなかったじゃない。んー…寝るときくらい?…とにかく無理だし、私が許さない」


サヤは相変わらず怒っている。


「そもそも、女神ティアだっけ?私と魂が一緒だというけど……。信じられないわ。どうしてそんなことトーヤに頼めたの。感情がないとかよくわからないけどトーヤは生きているのよ。生きているんだからそんなの辛いに決まっているじゃない」


サヤはどうやらティアに対して相当腹を立てているようで。

今も「本当意味わからない。自分だって寂しくかったくせに、トーヤが寂しいと思うかもとどうして考えなかったの。女神だかなんだか知らないけどバカよ」と先ほどよりも小声だが文句を言っている。


俺はそんなサヤの様子に目を丸くして見ていた。


その視線に気づいたサヤは「何よ」と俺を睨む。


「トーヤもトーヤよ。何で怒ったりしないのよ。怒りなさいよ、こんなの」


「いや、だって俺の役目だったから…」


「やーくーめー!?役目なんて知るか!そんなの私が壊してやるわ!」


少し鼻息を荒くして言うサヤを俺は半ば呆然と見ていた。


「な、なんでサヤはそんなに怒っているの?」


俺の問いにサヤはさも意味がわからないという眼差しで俺を睨む。


「……弟がいじめられてたら怒るに決まっているじゃない」



………いじめ。



「……クッ!クッ……フッフフフ、アハハハハ!」

俺は堪えられず、声を立てて笑ってしまった。


サヤはポカンと見つめている。


「アハハハハ!」


笑いが止まらない。

こんなに笑ったのは久しぶりだ。

うーん、ここまで笑えたのは、サヤが小学生だった頃以来かな。


でも本当に気持ちが清々しくて愉快だった。

異世界へ来てから、不安という始めての感情で渦巻いていた心がきれいに洗われたようだった。


サヤなら本当にどうにかしてくれそうで、信じることができた。

昔から結構滅茶苦茶なことをしていても、結局はいつも良い結果を出すのがサヤだった。

俺の大切な姉。

正直、サヤを姉とかは思ったことはなかったけれど、姉弟っていいものなのだなと思えた。


それにしてもイジメって…

それは要するにティアが俺をいじめているということで……そこがまた俺にはおかしくて。

涙目になって笑う俺をサヤは納得いかない顔で見ている。

だが、あまりにも俺が笑いを止めないので、一緒に笑い出した。


「そうよ、トーヤ。笑っていて!」


そう言って、サヤは俺の目の前に来ての頭を撫でようとする。

でも二人の背は昔みたいに近くない。

小柄なサヤは一生懸命つま先立ちして俺の頭を撫でようと手を伸ばす様子に、俺は堪らずサヤを抱きしめた。


「……ありがとう、サヤ」


そう、サヤは異空間で俺のことを話したあの時も心配していた。

サヤは勘が鋭いから俺の奥にある不安に気付いていたんだろう。

あの時も頭を撫でていた、俺が弱っていると思って。


笑いが止まり、涙だけが流れる。


そうか、俺はこんなにも不安だらけだったのか。


サヤを直に身に感じ、ようやく安心できたのか涙が止まらなかった。


サヤが俺の腕の中でフガフガ言っている。

長身の俺に抱きしめられ、足が浮いてしまった状態のサヤは身動きができない。


涙が落ち着きそっとサヤを離すと、サヤは大きく息を吸い込んでいた。


「く、苦しかった…」


少し顔を赤くし、深呼吸をしている。


「ん、でも…。トーヤ、いい顔になった。良かった」


俺の顔を覗き込み、ふんわりと笑った。

俺も笑顔を返す。


「……で?話しは終わったか?」


いつの間にか、俺とサヤを観察するのに良い位置に腰を落ち着かせているオウシュがいた。


…ずっと見ていたのか。


思わず羞恥で顔を赤くする俺だったが、それはサヤも同じなようで二人して顔を赤くしていた。


「二人の世界を作るものだから正直妬いたが、でも面白いものが見れた」

ニヤリと口の端を上げ、オウシュが立ち上がり、サヤに近づいてくる。


「サヤ、いいんじゃないか?俺も意味を考えろと言ったが、別に深く考えろとは思ってないよ。そもそも意味なんてものの本質は案外短絡的なものだ。俺はどうも難しく考えがちになるんだが…。俺は、サヤのそういう考え方、好きだよ」

そう言いながら、優しい眼差しでオウシュはサヤの髪を撫で、そして、

「それは別として、何か方策は考えているのかい?」

意地悪そうな顔をして問いかける。


「……まだそれはないけど、どうにかするわ。私、術とか結構得意なのよ。何かしら良い方法を探し出してやるわ!」


オウシュはなおもサヤの髪を撫で、何とも言えないとろけるような笑顔で言う。

「じゃあ、俺も協力してやるよ」


サヤと少年版オウシュは、顔の高さがほぼ同じだ。

少年版とはいえ、オウシュの美貌は罪なのではないかと思うほどのもので、そのオウシュの笑顔をまともに受けたサヤは顔を赤らめた。


「お、お願いするわ」

パッと髪を撫でるオウシュの手を払い、少し睨むようにサヤは答えた。

道久に言われたことを思い出し、抵抗しているのか。


そんな様子を見て、俺は不意に頭によぎる。


サヤはオウシュが好きなんだろうか、それとも道久?


男と触れ合い顔を赤くするサヤは、以前に見た記憶がない。

そもそもサヤが関わっていた男性は、主に父親と俺と道久。

他は遠巻きに見るだけで……いや、道久が邪魔して近寄れなかったというのが正しいか。

せいぜいサヤと接触した男といえば、稽古のときに手合わせした者くらいだろう。

サヤが男慣れしていないことは明白だ。

だから赤くなるものだとも思うが、サヤはオウシュに対し好意らしきものを感じる。

この短い期間の中で、嫌いではなく少なくとも好きの部類には入っているだろう。

道久には元々好意はあったが、それは多分俺に対する好意と似ているもの、いわゆる姉弟。

けれど、道久のサヤに対する態度があからさまになった。

それに対して戸惑っているものの、嫌ではなさそうだし。


サヤの性格からして、本当に嫌だったら攻撃するはずだ。

というか、身体が勝手に拒否の行動に出るだろう。


でもサヤは好意を持った者には甘くなるから、オウシュと道久に対してどうしていいかわからないといったところが現状かな。


俺は恋愛とかよくわからない。

サヤを大切にしたいという心はわかる。

サヤが幸せになれるのなら、それでいい。


しかし、サヤは恋愛がどうもすごく苦手みたいだから、苦労しそうだ。

俺でも手助けできればいいが……。


そんなことを考えてサヤを見ていたら、睨まれた。


「ほら、聖闇球のところに行きましょ!」


サヤが颯爽と道を歩いていく。

いつの間にか宙で見守っていたのか、ラーゴが上から羽を羽ばたかせてサヤの肩に止まった。


俺はサヤの後ろ姿に安心感を抱きながら、前へ進んだ。


******************


「おい、トーヤ」


聖闇球のある神域へのもうすぐ着くというところで、不意にオウシュが話しかけてきた。


顔を向けると、質問される。

「おまえ、創世の頃はユニコーンの時も人型の時も黒かったのに、どうして今は違うんだ?」


「あ、そういえば、闇のユニコーンだって言っていたね。さっき見たユニコーンはどちらかというと光のイメージが強いし、今も髪は金に近い茶色だし、瞳も真っ黒というよりは少し青が入っているし……」


その質問にサヤも乗ってくる。


「うん?ああ、俺もよくわからないけど、救世主を向かう時の異空間を飛んだ際に、だんだん黒の色素が抜けたようだよ」


俺はさほど気になっていなかったので、特になんてことのない風に答えた。


「……ねぇ、オウシュ。これも何か意味があると思う?」

そう疑問を投げかけるサヤにオウシュは唸りながら言う。

「……。意味があるかもしれないし、ないかもしれない。俺は過去が見れるがそれは祖先の見た映像までだから、祖先が出会う前の女神がトーリヤータを作ったときのことは見れない。……予想にしかならないが、女神は自分の傍に置くために闇属性にしたと思う。もしくは、自分が闇の女神だからか。どちらにしても、女神がいなくなった今は、体内の闇が必要とならなくなったので闇の要素は消えた。……進化。いや?退化か?」


そう言って、俺はオウシュにじっと見られた。

正直居心地がよくない。


「さすがに映像では個々の本質を見ることはできないから比べられない……。正直、闇の要素が有る無しでトーヤの力にどう影響するのかわからないな。今も闇に対処できる力は持っているし…」


そう唸るオウシュに俺は気にせず言う。

「意味なんかないんじゃないか」


「………おまえ、自分のことなのに。……能天気だな」

少し呆れた視線をオウシュから受ける。


いや外見なんてどうでもいいと思うのだが……。


「トーヤはちょっとズレているところがあるからね」


サヤに言われるのは不本意だ。


「そういうサヤの瞳は今金色だけど」


反撃のように返す俺にサヤは「えっ?」という表情をする。


「あれ、知らなかったのか?」


俺が問うと同時くらいに、オウシュが「あ、言ってないな」という言葉を口に転がしていた。


「うそ、そうなの?」

と言って、顔をペタペタ触るサヤ。


しばらくして、

「…ん~。………まぁ、いっか支障ないし」

とその問題を放り出す。


鏡もないので確認もできず、いや、やろうと思えば“精霊に頼んで水鏡を出す”なんてこともできなくないと思うのだが…。


「うん、おまえたち、やっぱり似たもの姉弟なのだな」

オウシュはサヤにも若干の呆れた眼差しを送りつつ、でもまぁ、嬉しそうな顔だ。



「ほら、もう着く」

俺は見えてきた聖闇球を囲んでいる七柱の片鱗を指し示す。


ここまで来る間、ほぼ闇の気配がなかった。

先ほどオウシュの神鬼の魔石により見た映像と比べると嘘みたいな状態。

オウシュを助ける際サヤは力を使ったようだけど、あれは思ったよりも範囲が広かったようだ。


そして森の小道を抜けようとしたところ、


「止まれ!!」


甲高く響く声が森を木霊した。


ほぼ同時に小さく低い声でオウシュがつぶやく。

「アヤメ」

その声に反応して、一番後ろに控えていたアヤメさんが動く。


「うきゃ!」


そして、小さな悲鳴。

アヤメさんが難なく、その声の主を取り押さえたようだ。


正直、このパーティーで危機になることがあるのだろうか。

ここに道久が入れば、更に隙がなくなりそうだ。


聖闇球に近づくと、聖闇球が納められている台座の前に、にアヤメさんと取り押さえられている少女がいた。


「はなせ!」

威勢はいいが、動けないようだ。


灰色の髪に青にも緑にも見える瞳、少し薄汚れているがかわいらしい少女がいる。

少女は犬か猫のように三角の形をした耳がぴょこんと出ていた。


獣人族のようだ。


チラリと横にいるサヤを見ると、嬉しそうに瞳を輝かせている。

肩に乗っていたラーゴはサヤの肩から離れ、その囚われの少女に飛んで行った。


「な、なんだ、この生き物は!?」


ドラゴンを見たことがないのだろう。

しかもサヤ仕様のドラゴンだ。

知っているはずもない。


少女は自分の周りを飛ぶ未知なる生物=ラーゴに警戒していた。

確かに嬉々として少女の周りを飛ぶラーゴは、彼女からしてみたら捕食者の目と変わらないのかもしれない。

ラーゴはというと、サヤの気質からしてただ単に獣人の少女とお友達になりたいとかそんなところだろうが。


「ラーゴ、こいつ食っていいぞ」

その様子に気付いたオウシュが意地悪な笑みを浮かべて言った。


そう言われたラーゴは宙で弧を描くのをやめて、オウシュの顔を不思議そうに見ている。

オウシュはラーゴに向かって意味有り気にうなずく。


オウシュはイタズラ好きだな。


俺がちょっと呆れ顔でオウシュを見ているが、視線に気付いているだろうにオウシュは我存ぜぬだ。


「ひぃぃ!ごめんなさい!ごめんなさい!私なんて美味しくないです!お願い食べないでーー!!!」

少女が涙目で必死に訴えている。


「ちょっとオウシュ、からかうのやめなさい」

そう言って、少女に近づくサヤなのだが…。


「……!人間の女か!おまえ風情が私に近づくな!くさいんだよ!」

と涙目のままなのだが、威嚇するかのようにサヤに暴言を吐く少女。


サヤは少女の言葉にショックを受け、一瞬固まった。

そして、おもむろに自分をクンクン嗅ぎだしている。


俺はサヤの肩に手を置くとサヤが不安気に見上げてきた。

「臭くないから大丈夫」

俺が笑顔で告げるものの、獣人の少女に言われたことがよほどショックなのか、まだクンクンしている。


するとオウシュが鋭い視線で低い声を発する。

さっきとは別人のように恐ろしい形相だ。


オウシュ、サヤが悪く言われて途端に切れたな。


「獣め。おまえごときがどの口を言う。皮を剥いでやろうか」

本気が入っている怒気に少女は顔を蒼白にさせた。


「オウシュ様、今こいつ粗相をしましたよ。やはり獣ですね」

アヤメさんもかなり剣呑な雰囲気を醸し出している。

アヤメさんの目線が「くさいのよ」と冷たく言っているようで恐ろしい。


「ちょ、ちょっと二人ともからかうのやめなさいってば」


慌てて止めようとするサヤにオウシュはきょとんとした表情で返す。


「ん?本気だが?」


アヤメさんもアヤメさんで、剣呑な表情のままに考えを口にしている。


「オウシュ様、こんな獣の皮を何にお使いになさるおつもりで?少額でもよろしければ換金も可能かとは思いますが…。まぁ若い娘ですし、そういうご趣味の方々にそのまま売りとばした方が良いかもしれませんよ」


「こんな臭い奴が売れるものか。皮を剥いで綺麗に洗った方がましだろう」


二人で怖いことを言っている。


「そうですか…確かにその方がよろしいかもしれませんね。わかりました。では強制的に獣化させましょう」


アヤメさんが何か行動に起こそうとするとき、

「だ、だめだってば!」

サヤが慌てて止めに入った。


この二人、本当にやってしまいそうだ。


「大丈夫よ。そんなことしないから」

サヤは、そう優しく声を掛けながら少女に近づくが、

「あ……、この子気絶してる」

そう、少女は真っ青な顔をして気絶していた。


「ええ、私の最後の言葉が止めでしたね」


アヤメさんはつまらないとばかりに獣人の少女に冷たい視線を送りつつ、拘束していた手を緩めた。

手当てしようするサヤを制して言う。

「サヤ様、触れるのはお待ち下さい。粗相をしたのは本当ですから、綺麗に致しますので」


そうして、嫌そうに少女に手をかざすと、何やら唱えたようだ。

すると、フワッと風のようなものが少女を包み、消えた。


「もう大丈夫です。無理やり起こしましょうか?」


アヤメさんの言葉にブンブンと首を振るサヤ。


「いいの、後で話を聞きましょう、ね?」


サヤ、アヤメさんをちょっと怖がっているかもしれない。


アヤメさんはサヤに向かってニコリと微笑むと、極自然に懐からロープを出し、少女を縛り始めた。

サヤは有無を言わせないアヤメさんの行動にアワアワしている。


俺はその様子に思わずクスリと笑ってしまった。

サヤはそれに気付いたようで睨まれた。


「ちょっとトーヤも何で止めないのよ」


俺はサヤの言葉にただニコニコと笑顔を返すだけだった。


だって、俺も怒っていたからね。

お読み頂きありがとうございます。

トーヤはサヤが役目を気にしないでいいと言ったから一気に気が楽になりました。

最初のトーヤのイメージとこれからのトーヤのイメージは変わるかもしれません。


※アップ直後ですが、トーヤ視点なのに“俺は”ではなく“トーヤは”と別視点で言ってしまっている部分に気づき、修正しました。すみません(9/11朝)。


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