6月20日 AM8:35 職員室
初投稿です。登場人物の名前など慣れないところもあると思いますが、ぜひよろしくお願いします。また趣味の範囲内ですので投稿期間がまちまちですのでご了承ください。
職員室というのは生徒にとって特別であり続ける。決して好意的な意味ではない。その扉を開けるだけで肩に重荷がかかり、閉めると一気に肩の荷がおりる。殊に船引導子にとっても例外ではない。
「…というわけだ。よろしく頼むぞ、船引。」
「お言葉ですが、叢雲先生。私も受験生という身分、そうそう暇な時間を作れそうに無いのですが。」
叢雲聡、この高校の古典教員である。年齢は30前後らしいが、見た目を勘定に入れたら50をゆうに越えているのではないかと思わせる。
「そうはいってもなあ、五百旗頭の件をそのまま放っておくわけにはいかんでね。もうすぐ公開模試も控えている。全国上位常連の彼がいないとなると困ったことになる。」
導子は深くため息をつく。
「私も模試を控えてるんですが?」
「勿論、君の心配はしてないよ。」
叢雲は鼻で笑いながら答える。彼の瞳はすべてを見透かしているのかもしれない。導子は観念したように肩をすくめた。
「…分かりました。お引き受けいたします。但し、生徒会長殿が模試を受けられるかどうかどうかまでは責任を負いかねますが。」
ひどくビジネスライクな口調で対応する。導子としては意趣返しのつもりであった。
「心配ない、好きなようにやってくれ。期待してるよ。」
良くも悪くも彼にとっての導子の評価は高いようだ。導子は軽く会釈すると職員室を後にした。職員室の扉を閉めても両肩にかかった重荷と彼女を縛る鎖は、はずれることは無かった。