表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Space Shop! ~売られた地球を買い戻せ!~  作者: こっこ
第一章 世話焼き飛行は損のモト?
9/86

Episode:09

「まぁどっちにしても、あと二、三日はここへ釘付けだしね」

「誰かさんのおかげで」


 すかさず突っ込まれたが、エルヴィラはこれは無視し、宇宙蝶の映像を最初へ戻す。


「これ見てると、やっぱりお互いに、なんか話してる気がするんだよねぇ」

「状況から見て、話していないほうが不思議だと思いますけど?」

「珍しい、あんたがそんなロマンティックなこと言うなんて」


 エルヴィラの言葉に、ワケの分からないことをという顔で、イノーラが説明し始めた。


「光り方に、ときどき同じパターンが出てましたわ。それも複数の間で、決まった順のやり取りで。これは意思疎通ではありませんの?」

 姪っ子の言葉に慌てて解析をすると、言うとおり数パターンが確認された。


「よく見てたね……」

「普通は分かります。それにあの生物が遭難信号に反応するのは、今までの事例でよく知られていますわ。だとすれば互いに信号を送り合っていても、何も不思議ではないと思いますけど」

 我が姪ながら頭の回転は本当に速いと、エルヴィラは感心する。


「いっそ、あたしたちも遭難信号でも出してみようか」

 思いついて言ってみると、イノーラから雪原のごとく冷たい視線が帰ってきた。


「必要がないのに遭難信号を出すのは、禁じられてますわよ」

「冗談だって。でも遭難信号出せば、あの蝶たち寄ってくると思うんだよねぇ」


 まぁ実際にはイノーラの言うとおり、その信号は出せない。どこかの誰かが受信したら大騒ぎだ。

 ならばそれに似た、何か違うものを使うしかないわけだが……さて何があったかと、エルヴィラは考え込む。

 答えを導き出したのは、イノーラのほうだった。興味を持ったらしい。


「テスト用の通信帯で、遭難信号を出してみます?」

 確かにその方法なら、クレームは来ない。万が一どこかの誰かが受信しても、機体に無茶をさせたので念のためにテストした、と言えば問題ないだろう。


「やれる?」

「おばさまじゃあるまいし、出来もしないことを言ったりしませんわ」

 さっき服のことを言った腹いせだろうか。今日のイノーラはやけに突っかかる。


(まぁ、いいんだけどさ)

 ひとたびどこかの惑星なりステーションなり、ともかく他者のいるところへ出たなら、エルヴィラの独壇場だ。


 頭は抜群にいいが、どうにも社交性に欠けるイノーラは、交渉や駆け引きが苦手だった。

 良くて折り合いがつかず決裂、最悪の場合は言ってはいけないことを次々指摘して、相手を怒らせてしまう。


 それを姪っ子は自分でも分かっているのだろう。他人に対しては信じられないほど大人しい。典型的な内弁慶だ。

 これもペットとして飼われていた弊害だろうと、エルヴィラは思う。



「通信帯チェック完了、信号、送信開始」

 イノーラの淡々とした報告があって、信号が流された。

「どうなるかなー」

「どうにもならないかもしれませんわ」


 相変わらずの掛け合いをしながら、観測用カメラからの映像を見守る。

 意外にも、事態が動くのは早かった。観測用カメラに映る宇宙蝶が、いくらも経たないうちに、ちかちかとまたたき始める。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ