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Space Shop! ~売られた地球を買い戻せ!~  作者: こっこ
第四章 道に迷えば屑が儲かる?
83/86

Episode:83

「それは何の座標だ?」

「分かりません。ただ第四惑星の住人が発見した、とても重要なもののようです。

 だから行ってみようと思っていたところ、いきなりゴレモラサ人から『見つけたものを渡せ』と言われて、砲撃されてしまって……」


 途中だいぶ端折ってあるが、嘘は言っていない。


「まったく、あの連中は。対価が必要なことをなかなか理解せん。まぁ炭素系だから、ルールが守れぬのも無理はないが」


 炭素系のエルヴィラとしてはカチンと来る台詞だが、指摘しなかった。それを言ってしまうと、「やはり炭素系だ」と非難されてしまう。


 本当はそんなもの炭素珪素関係なく、その人と種族によるはずなのだが……。

 そんな思いを抱きつつも、違うことをエルヴィラは口にした。


「ゴレモラサ人が言っていた『見つけたもの』というのは、その座標かと。どう思われますか?」

「おそらくそうだろうな。何かでその惑星に有ることを知って、狙っていたのだろう」


 見解がまとまる。

 そして来るべき質問が来た。


「で、そなたらはこれからどうする? 当分は守ってやれるが、永遠には無理だ」

「それは理解しています。ですので、その座標へ向かおうかと」


 瞬間、宇宙船の操縦室にかすかに羽音のようなものが響いた。ヨーヨーア人が興味を惹かれたときに出す独特の音を、集音機が拾って伝えてきたのだ。

 脈ありと踏んでエルヴィラは持ちかける。


「もし差支えなかったら、一緒に行っていただけませんか?」


 ヨーヨーア人の船団がなぜここに居たかは知らない。が、興味を示したなら可能性はある。


 炭素系のことをいろいろ揶揄していたヨーヨーア人だが、珪素系の中ではかなり高速で動くせいなのか、「軽率」なことで有名だ。

 ゴレモラサ人のようにキレて交渉のテーブルをひっくり返したりはしないが、よく好奇心に駆られて衝動的な行動をとる。


 それが岩のようなどっしりした種族が多い珪素系の中では、短慮で軽率と取られていた。

 ただあくまでも「珪素系の中で」であって、遙かに高速で動き衝動的に振舞う種が居る炭素系と比べれば、よっぽど深慮と言っていい。


(価値観の基準って、いろいろおかしいよね……)


 そんなことを思いながら、エルヴィラは交渉を続ける。


「一緒に行っていただけるなら、もちろん座標はお教えします。ただ、目的地に着くまでは他言しない、という条件になりますが」

「それだと上へ報告が出来ぬ。困るな」


 異議を唱えるヨーヨーア人に対し、エルヴィラは「もっともです」と言いながら更に続けた。


「報告されてしまうと、まだ近くに居るゴレモラサ人が通信を傍受するかもしれません。そうなったら、先回りされてしまう可能性もあります。場合によっては、あのソドム人に知られてしまうかもしれません」

「それは有り得るな……」


 ここでもソドム人の悪評が有利に働く。

 誰もがソドム人の悪辣さを知っているから、引き合いに出すと話が予想通りの方向へ行きやすい。


「どうでしょう、座標に何があるか確認してから、上に報告していただけませんか?

 そうすれば一緒に行って頂く報酬として、座標そのものをお教えします」


 そして考える暇を与えぬように、エルヴィラは畳みかけた。


「上への報告は、『護衛を引き受けた』と言えば済みますよね?」

「それもそうか」


 好奇心のほうが職務に勝ったようだ。


「では、こうしよう。

 我らはヨーヨーア本星調査艦隊だ。そしてこの辺境の地にて『二人の地球人』から救助を請われ、護衛を引き受ける。報酬は過去に記された座標だ。

 但し到達前は危険回避のため極秘とされ、到達後に艦隊外のヨーヨーア人が座標を知ることになる」

「異論ありません」


 これだとヨーヨーア人側のほうが多少不利なのだが、当人たちには「好奇心を満たす」という目的があるため、不利を気にしていない。

 商売人としてはどうかと思うが、当人たちがそれでいいと言っているのだから、これ以上気にする必要もないだろう。

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