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Space Shop! ~売られた地球を買い戻せ!~  作者: こっこ
第四章 道に迷えば屑が儲かる?
81/86

Episode:81

「イノーラ、ワープ!」


 どうせこの攻撃は当たらない。

 >何しろ他星系内で勝手に武器を使用したら、銀河連盟から厳しい追及を受けるのだ。


 ただ抜け道はあって、一発だけなら誤射で押し通せる。

 その際に相手艦を撃沈するとまたややこしいのだが、それさえなければ厳重注意だけで終わりだ。


 だからそれを逆手にとって、一発脅して交渉を有利にし、後で誤射と言い張るヤツが居る。

 この船を買ったときから懇意にしている、偏屈な整備屋が教えてくれた話だった。

 その種明かしを知っていれば、この一発は怖くない。


 ――もっともそれでも、ひやひやしたが。


 ただ幸い予想通り攻撃は外れ、船はワープした。

 全方位スクリーンが一瞬暗転し、すぐに先ほどまでとは全く違う景色を映し出す。


 ゴツゴツした感じの宇宙船軍が、ほど近くに停泊していた。

 そしてすぐに、緊急通信が入ってくる。


『貴船の行動、航行協定違反であるぞ!』


 即座に通信回線を開き、エルヴィラは返した。


「申し訳ありません、攻撃を受けているのです! 助けてください!」


 協定違反になるような危険行為をしたのだから、文句が来るのは当然だ。ただこちらは、それどころではない。


「ゴレモラサ人の船から、撃たれました。幸い被害はありませんが、こちらへ逃れてきた次第です。記録されていませんか?」


 こちらの記録データを送りつつ問いかける。

 しばらくの沈黙。


『記録は確認した。ただ、そなたら炭素系生物は助けられん。後々問題になる』


 向こうからの返事は予想されたものだった。


 この銀河では、炭素系と珪素系はすこぶる仲が悪い。似て非なる点が多すぎて、何かと衝突を繰り返している。

 だがそれを乗り越える切り札が、エルヴィラとイノーラにはあった。


「その件は承知しています。ですが私たちは、ベニト人のドドアムキヴに助けられた、例の『二人の地球人』です。どうかまたお助けを!」

「なんと、本当か?!」


 切り札の効果は絶大だった。


 珪素系生命体の中では、地球人ペットの立ち位置は非常にややこしい。

 というのも「敵対する炭素系の下等さぶり」を表すものとして見られているからだ。


 もちろんだからといって、虐待されたりはしない。

 それは岩のように長命で堅牢な珪素系として、プライドが許さないのだという。


 ただエルヴィラたちの飼い主は少々変り種で、単なるペットととしてではなく、我が子のように扱ってくれた。

 そして銀河の高度な教育を与えてくれたのだ。


 この話が珪素系の中では、大変な美談として広まっていた。

 どうも「下等な炭素系がやったくだらない真似から、子供達を救い出した」ということらしい。


 しかも話が広がったあとは、地球人ペットを迎えて教育を与える珪素系がずいぶん増えたという。

加えて元祖とも言えるエルヴィラたちは、その後銀河市民権を取り、船を手に入れて独り立ちした。


 そのことが「炭素系の連中は、高い知能を持つ同じ炭素系の種をも虐待する」と――まぁ事実だが――され、「炭素系生命体の下劣さの証拠」として話の広がりに勢いを付けたらしい。


 エルヴィラとしては色々複雑な思いもあるのだが、ともかくこれを利用しない手はなかった。


「炭素系のゴレモラサ人から、追われているんです。助けてください!」

『了解した』


 思惑通り、今度は歯切れのいい答えが返ってくる。


『船団の中に入られよ。珪素系の名に賭けて、炭素系の暴虐から今回もそなた達を守ろう』

「ありがとうございます」


 これで一件落着だ。

 今頃ゴレモラサ人は歯噛みしているだろうが、こういう流れになってしまえば非は向こうにある。

 泣き寝入りするしかないだろう。


「イノーラ、あとは向こうの船団の指示に従ってね」

「了解です」


 エルヴィラたちの船は、ヨーヨーア人の船団内に導かれていった。

 指定された位置にほとんどの誤差なしで船が止まると、すぐに通信が入る。


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