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Space Shop! ~売られた地球を買い戻せ!~  作者: こっこ
第四章 道に迷えば屑が儲かる?
80/86

Episode:80

「星系政府に言われては困る。そ、そうだ、金を払うから、我々を第四惑星へ降ろしてくれ」


「それこそ、星系政府に掛け合わないと。あの星は原則、立ち入りが禁止ですから」


 エルヴィラたちがネメイエス政府に頼めば、あの英雄扱い振りからして、たぶん許可が出るだろう。

 が、頼む気はなかった。何故かはよく分からないが、「それをやってはダメだ」という気がするのだ。


 たぶんゴレモラサ人はどこかに残った記録の断片から、あの惑星に「何か重要なもの」があると判断し、そこから出てきた自分達を狙っているに違いない。


「ダメだ、星系政府に知られてはダメだ!」


「……でしたら尚更です。ここは発生星系で、星系内のすべての権利はネメイエスに帰属します。なのに勝手なことをしたら、私達がどれほどの損を蒙るか」


 ゴレモラサ人が黙る。


 権利の境界を侵すのは、銀河文明ではご法度だ。だからこれを正論として出されたら、強要は難しくなる。それを承知の上での、エルヴィラの台詞だった。

 そして彼等が黙っている間に、小声で地球語を使ってイノーラに話しかける。


(近くに船団、居た?)

(はい。六光年の距離にヨーヨーア人が。それから銀河第十五区商連社が十八光年のところに)


 上々だ。これなら助けを求められる。


 銀河第十五区商連社は、いわば商社だ。大規模に輸出入等をしていて、構成員も複数の星系から来ている。そしてもうひとつのヨーヨーア人は、珪素系生物だった。


 エルヴィラからしてみれば、どちらを選ぶか明白だ。


(イノーラ、ヨーヨーア人の船団近くへワープ用意。あたしは交渉するフリして、時間稼ぐ)

(りょ、了解……)


 意図が分からないのと、かなり危険なこととを頼んだせいだろう。姪っ子の声が震えている。

 一方ゴレモラサ人は、哀願するような調子――翻訳機がそうしているわけだが――で話しかけてきた。


「もし我らの要望を聞いてくれたら、権利をやろう。だいたいのことは出来るぞ。船団が欲しいか? 交渉優遇権か?」


 第二ソドム人を名乗るだけあって、出してきた条件はかなり魅力的だった。だがそういう利権をヘタにゴレモラサ人から受け取ったら、それをネタにどこでどう強請られるか分からない。

 とはいえ、単に突っぱねても話が面倒になるだけだろう。


「そうですね……では交渉だけはしてみますから、その対価として、この船に銀河航行権を付与していただけませんか? たしかあれは、推薦さえあれば割と簡単に取れたかと」


 銀河航行権というのは、各星系の領有宙域を申請なしで航行できる権利だ。地球で言うなら「ビザ免除」が近いだろうか。ただあくまでも「航行」が可能なだけで、それ以外のことは一切出来ない。


 それでも持ち出したのは、簡単に取れる割に、エルヴィラたちには見返りが大きいからだ。


 ソドム人をはじめ銀河の有力種族は「持っていて当たり前」なのであまり感じていないようだが、エルヴィラたちは銀河政府に加盟していない地球出身なので、この権利がない。

 だからどこかの星系へ行くたびに宙域外で申請をし、許可が下りるまで待機していなければならなかった。


 それでも用事があって行ったなら我慢もできるが、目的地へのルートの関係で「ただ通りたいだけ」の場合は悲惨だ。酷いと何日も待たされた挙句、許可が下りないことさえある。

 それが全て無くなるのだから、エルヴィラたちにはかなりの恩恵だった。


「ほう、そんなものでいいのか?」


 尊大な口調でゴレモラサ人が訊いてくる。

 と、イノーラが地球語で囁いた。


(おばさま、ゴレモラサ艦隊のエネルギー値が、おかしな動きをしています。何か仕掛ける気かもしれません)


 予想通りだ。


(イノーラ、もう飛べる?)

(はい、いつでも)


 準備が万全なことを確認して、エルヴィラはゴレモラサ人に返した。


「銀河航行権だけで構いませんよ、交渉するための対価ですから。成立した暁には、改めて別の報酬を頂きます」

「それは出来ないな。航行権を報酬に、何としても着陸許可を取ってもらおう」


 同時に、ゴレモラサ人の砲門に灯がともる。

 間髪入れずエルヴィラも叫んだ。



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