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Space Shop! ~売られた地球を買い戻せ!~  作者: こっこ
第四章 道に迷えば屑が儲かる?
77/86

Episode:77

 惑星の滅亡の理由を知った数日後、エルヴィラとイノーラはこの星系を離れる事にした。

 もともと偶然に近い形で、宇宙蝶にこの星系へ連れてこられたのだ。本来から言えば、壮大な寄り道だった。


 ――思いもかけず大仕事を引き受け、惑星の調査までしてしまったが。

 とはいえ儲けられたのだから、万事問題なしだろう。


「いろいろ、ありがとうございました」


 例のネメイエス外交部の交渉担当に、挨拶をすると、満面の笑顔(合成映像だが)が返ってきた。


「移住先を見つけてくださったあなたがたは、我らにとっては救世主ですよ。

 これからも何かありましたら、遠慮なく言ってください。出来る限りの事はします」


 何やら背中が痒くなるような台詞を言われる。情報屋が「救世主」と言った時は半信半疑だったが、本当にネメイエスの救世主にされてしまったようだ。


「船の具合はいかがですか? 旅立つにあたって、足りないものはございませんか? 星系中の者が心配しております」

「あ、いえ、大丈夫です、はい」


 しかも話の内容からするに、数日の間に星系中に噂が広まってしまったらしい。


(勘弁してほしいんだけどなぁ……)


 これならどんな要求も通るだろうが、自分はそんなご立派なモノではないから、どうにもこそばゆかった。


「これから、お二方はどちらへ?」

「地球にでも寄ろうかと。一度顔を出しておいたほうが、何かといいでしょうし」


 本当はそんなつもりはないのだが、当たり障りの無いことを答えておく。


「そうですね、お二方は地球出身でいらっしゃるわけですし。宇宙図はございますか?」

「ええ、あります。ありがとうございます」


 まさに至れり尽くせりだが、やはり落ち着かない。早々に立ち去って、ほとぼりを冷ますほうがよさそうだ。


「名残惜しいのですが、できたら中継ステーションにも立ち寄りたいので、これで失礼します」

「これはお引止めして申し訳ないことを! 旅の幸運を祈っております」


 そこでやっと、通信は途切れた。


「つっかれたー! あぁもう救世主とかナニソレ」

 持ち上げられて悪い気はしないが、それにしたって救世主は無いだろう。


 自分は間違っても、そんな品行方正な人間ではない。単に商売のチャンスと見て挑み、モノにしただけの話だ。

 なのに救世主だなんて、どこをどう取ったらそうなるのか。


「いいじゃありませんか。これからネメイエスの方相手なら、取引が楽なのですから」

「そーでもないってば」


 この辺が交渉下手のイノーラだな、とエルヴィラは思う。

 いくら向こうがこちらに対して好意を持っているからと言って、一方的な取引ばかりしていれば、いつか破綻する。

商売は、それではダメなのだ。


好意を持ってくれている相手に対しても、サービスする。それでこそ長いお付き合いになって、儲けは大きくなる。

 だがこの辺の事をイノーラに説明しても、よく分からないだろう。彼女に理解出来るのは、数字で記述できるものだけだ。


「さ、行こうか」

 と、姪っ子から横槍が入った。


「本当に地球へ行きますの?」

「あれは社交辞令。いきなり〝見つけた座標に〟なんて言えないって」

「そうですか……」


 微妙に不満気だ。


「座標行くの嫌?」

「そういうわけじゃありませんわ」


 口ではそう言っているが、やはり不満そうだ。


(ちょっと可哀想なことしたかな)


 恐らくは今のネメイエスとのやり取りで、地球に行くかもしれない、と思ったのだろう。

 姪っ子にとって、地球は夢の星だ。もしかしたらそこへ行けるかもしれないと、ヌカ喜びさせてしまったらしい。


「ごめん、地球はこれが終わったら寄ろう」


 素直に謝る。こういうことをヘンに誤魔化しても無駄だというのは、エルヴィラは今までの経験で思い知っていた。


 商売相手ももそうでない人間関係も、こういうときはヘタに隠さず言い訳をせずぶっちゃけて、最初から謝ったほうがずっと早い。

 だから頭を下げる。


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