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Space Shop! ~売られた地球を買い戻せ!~  作者: こっこ
第三章 子供も逃げ出す大冒険?
75/86

Episode:75

「計測器持った?」

「おばさまじゃあるまいし、持ってるに決まってるじゃありませんか」


 そんなやり取りをしながら、エルヴィラたちは外へ出た。

 イノーラが機械を作動させる。


「どう?」

「まだ弱すぎて。もう少し強くなれば……」

「なら、もう少し」


 少しずつ、慎重に近づく。


「あ、もう少しで分かりそうです」

 そう言って姪っ子がもう一歩進みだしたとき、いろいろなことが一度に起こった。


 通信が来たという知らせが入り、イノーラの計測器が波長を捉えた旨を告げ、エルヴィラの背筋を嫌なものが這う。


「イノーラ、ダメっ!」


 彼女の身体を横抱きにするように抱え、一足飛びに宇宙船の方へ戻り――斥力ベルトを付けていなかったら出来なかった――同時に叫んだ。


「イノーラ、船のエンジン始動! 離脱っ!」

「は、はい」


 あまりのことに思考が停止しているのだろう、姪っ子がすんなりと従う。

 航行法違反だが、ハッチが開いた状態の船が動き出す。そこへエルヴィラは、イノーラを抱えたまま滑り込んだ。


「全速で大気圏から離脱っ!」

「おばさま、いったい?」

「いいから早くっ!」


 有無を言わさず指示を出す。

 気迫に押されたのだろう、イノーラが急いで船の高度を上げた。その間にエルヴィラは、さっきからうるさく鳴っている通信要請の方に答える。


「ごめん急いでるの、何か用?」

「いや、気になる情報、手に入れてな」


 例の情報屋だ。ただ幸い今は映像を出すシステムがないので音声だけで、それがありがたかった。


「何かそこの致死性のヤツ、休眠してるだけって話が出て――」

「今、逃げてるっ!」


 確証があるわけではないが、多分間違いない。なぜならハッチの向こう、既に見下ろす距離になった地上で、植物らしきものが次々と枯れているのだから。


「お、おばさま、何が……?」


 まだ事態を飲み込めていない姪っ子に、エルヴィラは顎で地表を指し示した。

 イノーラが顔面蒼白になる。


「ど、どうしましょう」

「ともかく逃げる! やつら、惑星の外へは出てないから、そこまで行けば逃げられるからっ!」

「はいっ」


 船がスピードを上げた。常に何かがズレている姪っ子も、さすがに状況を理解したのだろう。

 情報屋の心配そうな声が聞こえた。


「お前ら、大丈夫なのか?」

「分からない、でも逃げきる!」


 イノーラが踏み出した際に一瞬でも反応が遅れていたなら、どうなっていたかわからない。

 同様に外からでも動かせる操船端末をイノーラが勝手に作っていなかったら、やはりどうなったかわからない。


 だがそういう幾つもの偶然を重ねて、今は無事だ。ならばまだ、運は逃げていない。


「操縦室行くよ」

「はい」


 二人で慣れた操縦室に入り、席に腰を下ろすと、全方位モニターが船の周囲を映し出した。


「うわ、なにこれ」

「微妙なエネルギーの差異が、視覚化されたものです」

「ひぃ……」


 黒い不定形の這いよるモノ。視覚化された〝それ〟は、そんな風に見えた。

 それが、追ってくる。

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