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Space Shop! ~売られた地球を買い戻せ!~  作者: こっこ
第三章 子供も逃げ出す大冒険?
73/86

Episode:73

「――そういうことなんだけど」

 エルヴィラの説明に、イノーラはしばらく無言だった。


「どう思う?」

「どう思う、と言われましても。何に対してどう思うのか、主語を言っていただかなければ分かりませんわ。

 先日も同じことを言いましたのに、もう忘れまして?」


 思わぬ方向性の返事が返ってきた。何というかこの姪っ子、本当に情感というものには縁が遠い。

 違う意味でため息をつきながら、エルヴィラは訊き直した。


「今の話、本当だと思う?」

「壮大な創作という可能性もありますけど、あの状況で出来たら違う意味で才能を感じます。ですから、恐らく事実ではないかと」


 何やら回りくどい言い方だが、要するに「真実だろう」と言いたいらしい。


 エルヴィラも、これに関しては疑う気はなかった。このネメイエス第四惑星が壊滅したのは事実だし、言い伝えや見つかった資料とも辻褄が合う。


 正直信じたくはないのだが……。

 そう思うエルヴィラの耳に、思わぬ言葉が飛び込んできた。


「それよりもおばさま、私その実験場とやらが、見てみたいのですけど」

「え?」


 冷静な姪っ子がそんなことを言うとは思わず、一瞬頭の中が固まる。


「実験場って……つまり、この災害の根本だよね?」


「ええ。でも見つけた報告からは、ある程度時間が経てば無害のようですし。

 それに私たち自身が何も問題なく過ごせているのですから、推測通り無害化したと思われますわ。

 ですから、その現場を見てみたいのですけれど」


 エルヴィラは考え込んだ。

 確かにイノーラの言うとおり、現在は無害化しているのだろう。だったらそう危険ではないはずだ。


 ただ、エルヴィラとしては気が進まなかった。本能的な恐怖と言っていい。


(でもねぇ……)


 毒舌の姪っ子だが、これで案外「ねだる」ということをしない。


 彼女は物心ついた頃には親から引き離されて、ペット生活が始まっていた。

 だから自分の境遇を他者と比較することもできず、ただただあるがままに受け入れるクセがついてしまっている。

 自主性が少ない、自我が薄い、とも言えるかもしれない。


 だがそのどれも、イノーラに罪はないのだ。彼女は与えられた理不尽な運命に適応しただけだ。

 そんな姪っ子が、珍しく「行きたい」と言う。それを無碍には出来なかった。


(時間が経ったら問題ない、って言うしね)


 だいいち本当に問題があるならイノーラの言うとおり、自分たちなどとっくに死んでいるだろう。


「――分かった、行ってみよっか」

「では、準備をしてきますわ。そこまで船を動かさないと」


 エルヴィラが身を翻してリビングルーム(と言ってもかなり狭いが)を出て行く。毒舌が返ってこなかったところを見ると、相当行きたかったようだ。


 ダメと言わなくて良かったと思いながら、エルヴィラも立ち上がった。

 駆動音から察するに、珍しくイノーラが船を動かしている。だが居住空間に居ると、音以外では全くわからなかった。


 その辺の慣性制御は銀河では当たり前だが、地球では地上を走る車でさえ、発進や右折左折、停車のたびに振り回されていた。そんなエルヴィラからすると、驚異の技術だ。


 操縦室へ入る。


「遠くありませんから、すぐ着きますわ」

「そだね」


 心なしか姪っ子の口調が、浮き立っているように聞こえた。よほど見てみたいのだろう。

 不思議に思って理由を訊いてみる。


「なんでそんなに見てみたいの?」

「おばさまは見てみたくありませんの?」


 質問に質問で返された。逆に言うならそのくらい、イノーラにとっては「見に行って当然」のものらしい。

 とはいえそれだけでは、姪っ子が行きたい理由は分からない。なのでエルヴィラは、再度訊いてみた。

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