Episode:07
「俺の取り分、二割でいいぞ」
「気前良すぎて気持ち悪いんだけど」
不審に思って詳細を訊くと、何でもその相手、どこぞの星の報道関係なのだという。
「宇宙蝶の特集やりたいらしくて、特ダネを血眼になって探してるのさ、あいつら。だからそういうのなら高く買うぜ。物によってはアカデミーの十倍出すとさ」
これなら取り分が二割でも、情報屋にとって十分な儲けだろう。エルヴィラたちにとっても、けして悪い話ではない。
「じゃぁ、お願い」
「まいどありー。いつもどおりの契約書で、金額のところだけ書き換えればいいよな」
「いいわ。でも誤魔化さないでよ」
「しねーよ。あんたらにヘンなことしてヘンな噂が立ったら、珪素系の情報が入らなくなる。俺に取っちゃ致命傷だ」
情報屋がエルヴィラたちに親切なのは、これがいちばんの理由だ。
この銀河は炭素系と珪素系、大きくこの二種類に分けられる。
例えば地球の生物は、すべて炭素から構成されているので炭素系に分類されている。
一方の珪素系は高温高圧下で発生することが多い、岩やガラスのような珪素で構成された生物だ。
そしてこの両者、特性が違いすぎるためにどうにもソリが合わず、けして仲が良いとは言えなかった。
だがエルヴィラたちはペット時代、珪素系が飼い主だったため、炭素系にしては珍しく珪素系に知己が多い。
情報屋が言っているのは、その辺の事情だった。
「あんたから紹介してもらった連中、今じゃ俺の大事な情報源だからなー。足元見たら俺のほうにツケが来るって」
「まぁそうでしょうね」
エルヴィラたちは本来なら、足元を見られて当然の弱小商人だ。それが何とかやっていけているのは、この辺のアドバンテージが大きかった。
「契約書送ったぞ」
「えぇっと……あぁ来た来た。今サインして情報と一緒に返すから」
銀河では、やり取りはすべて契約書が基準だ。何しろそれぞれが独自の感覚と文化を持っているから、こうやって第三者からも確認可能な形にしないと、何が起こるかわからない。
とはいえもう何年も付き合って、信頼関係ができている相手同士だ。契約といっても型通り、簡単に交わされる。あとはこれを銀河政府の契約センターに送って保存してもらい、成立だ。
「うっひょ、すっげー。よくこんな映像撮れたな」
「偶然偶然」
謙遜ではなく事実なので、ただそれだけ返す。
情報屋のほうはそれをどう取ったか分からないが、笑みでエルヴィラに返した。
「こんだけのもんなら、ブラックホールに突っ込むつもりで高く売ってくるから、期待しててくれ。んじゃな」
そこで情報屋からの通信は切れた。一刻も早く相手と交渉しようというのだろう。
(これなら予想以上の臨時収入かな?)
あの情報屋、ちゃらけた態度だがあれで案外、儲けの見積もりはシビアだ。その彼が「期待していい」というのだから、相当自信があると見ていい。
いずれにせよあとは彼の腕次第で、こちらができることはもう残っていない。エネルギーが補充できしだい、最寄りの中継ステーションへ行って、宇宙船の整備の算段をつけるべきだろう。
そんなことを考えていると、ドアが開いた。