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Space Shop! ~売られた地球を買い戻せ!~  作者: こっこ
第三章 子供も逃げ出す大冒険?
69/86

Episode:69

 だが、とエルヴィラは自分に言い聞かせた。

 過去には確かにそうだったかもしれないが、今は何でもないはずだ。そうでなければ、自分たちなどとっくに、わずかな時間で死んでいる。


 何よりこの惑星は、あと七年したら消えているかもしれないのだ。そうでなくても、あの建物群が無事で残るという可能性は低い。

 だったら逆に、調べてみるのは悪くないはずだ。


「イノーラ、もいっかいあの会場、行ってみない?」


「それはどうでしょう? あの数式を解いてからでも問題ないと思いますけど。

 今までずっとあのまま残っていたのですし、今更逃げるようなものではありませんし」


 何やら長い説明だが、要は「先に数式を解きたい」と言いたいらしい。

 考える。


 姪っ子の言うことは一理ある。確かにあの数式の内容が分かれば、何が行われていたかも検討がつくだろう。

 ただ問題は、それにどのくらいかかるかだ。


「その数式、すぐ解けそうなの?」

「数日で目処はつくかと。式自体はある程度読めるようになりましたから」


 つまり、すぐには解けないということだろう。

 となると、何が一番良い手なのか。


 数式が解けるのを待ってもいいが、時間がかかりすぎるのが問題だ。

 一方でイノーラの言うとおり今更あの会場へ行っても、数式や使い方がわからない端末以外は、特に見つからない可能性が高い。


 他に何かあれば――そこまで思ったとき、イノーラがふと思い出したように言った。


「そういえば、書かれていた文章にもそんな内容があったような……」

「え?」


 驚くエルヴィラに、イノーラが事もなげに言う。


「あらおばさま、言ってませんでしたっけ?」

「言ってない! というかそんな重要なこと、どうして黙ってるのよ!」

「数式のほうが重要ですから」


 床に突っ伏したくなる。なぜ読まないと心底思うが、彼女に行っても無駄だろう。

 ともかく文章と数式を並べて置いておくと、文章を無視して数式を読み始める性格なのだ。


 内心呆れながらもエルヴィラは訊いてみた。


「それ、もうまとめてある?」

「画像からデータベースにまではしましたけど、特にまとめてはいませんわ」


 だがエルヴィラにはそれで十分だった。一応でもデータベースに載っているのなら、あとは読んでいけば済む話だ。


「じゃぁさ、それ、あたしが読んでいいよね?」

「どうぞ」


 この言い方だと、やはり全く興味がないのだろう。カケラも読む気はなさそうだ。


「じゃ、イノーラ、あなた数式お願い。あたし部屋に戻って、文字の方読んでみるから」


 そう言ってエルヴィラは操縦席を後にした。



 読み始めた文字たちは、数式の解読など比べ物にならないほど簡単だった。


 というのは、ほとんどが銀河標準文字だったのだ。

 引っかくように、そしておそらくは急いで書いたためにひどく歪んでいて、ぱっと見たときにそうとは思えなかっただけだ。


 いずれにせよ銀河標準文字なら、エルヴィラには難しくない。しかも読み取った文字の整形は機械がやってくれたから、さっと読める程度にはなっていた。


「何であの子、こっちを先に読まないかなぁ?」

 数字が苦手なエルヴィラにしてみると、至極謎だ。


 だがあれが珪素系生物の中へ入ると、エルヴィラよりずっと高く評価される。彼らはほとんどが地球で言う〝理系〟で、数字と数字に強い人間を尊重するのだ。


「えぇっと……」

 ひとつひとつ読んでいく。


「この中にデータを、って、あの端末だろうなぁ」


 けれどその端末は、動かし方が分からないのだから手に負えない。それに時間が経ちすぎているから、動くかどうかも怪しい。

 その点、数式を引っかいて書き留めたのは正解だったと言える。


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