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Space Shop! ~売られた地球を買い戻せ!~  作者: こっこ
第三章 子供も逃げ出す大冒険?
64/86

Episode:64

 椅子にかけて、ペンを手に取る。

 地球にもあった、書いたとおりに画面に表示されるタイプのものだ。


 イノーラは自分でも、あまり地球人ぽくないと自身を思う。

 小さいうちに宇宙へ出てしまったために、ほとんどのことが銀河式だ。

 ただこの「手で書く」という行動だけは、今も捨てられないでいた。


 単にデータを入力するだけなら、パネルを使ったほうが早い。

 だがこういう数式や絵となると、やはり手で書くほうが早いのだ。きっと宇宙へ出る前から、手にペンを握っていろいろ書いていたせいだろう。


 人間の基本的な行動様式は、物心着く前に決まってしまうのかもしれない。

 そんなことを思いながら、次々と目を通していく。


「あら……」


 つい声が出た。並んでいる数式の一部が、重複していたのだ。

 イノーラは考え込んだ。


 いままでこれらの式は、関係はあってもそれぞれ独立しているのだと思っていた。

 だがこの重複部分を見るかぎり、「すべてでひとつ」の可能性がある。


 だとしたら、最初からすべてチェックしていけば、何か見えてくるはずだ。

 慌てていちばん最初の式へ戻る。


 ――大統一式。

 やはりここから始まるのだ。


 推測だが……大惨事の中、なぜかあそこに居合わせた者たちは脱出を諦め、この数式を書き記すことに没頭したのだろう。

 そして膨大な量にのぼる式を、手分けして書き残したのだ。

 つまり、それだけ重要な物と言える。


(何なのでしょうね……)


 命と引き換えにするほどの物が、そうそうあるとは思えない。

 だがあの場に居た者たち――おそらくは科学者――にとっては、命を賭けるに値する物だった。


 その理由は、この膨大な数式の中だ。

 数式の、おそらくは最終行と思われるものを見てみる。


(これはもしかして……?)


 まだこの星独特の記述方式がすべては分からないため、あくまでも直感でしかないが、ワープする際などに使われる「次元理論」で使われる物に似ていた。


 ペンを手に取る。

 この難関に挑めたのは幸運だ。


 何かが少し違えばこの式は、超新星爆発の余波で消えてしまったかもしれない。

 あるいは消えなくても、自分が目にすることはなかったかもしれない。


 だがそれがふとしたきっかけから、過去に作られた式が、よりによって自分の手元へ来た。

 ならば、解明する義務がある。


(でも、非科学的ですわね)


 偶然に意味を見出そうとする思考回路を自分で笑いながら、イノーラは式を解き始めた。



 例の機械のためにイノーラを引っ張り出せたのは、夕食時だった。

 思ったより早かったな、とエルヴィラは思う。下手をしたら取り掛かるまで、数日かかると覚悟していたのだ。


 数字が苦手なエルヴィラにしてみれば、あんなものに一人で挑むほうが無謀だし、何より行き詰らないほうがおかしいと思う。

 だがイノーラは、それがどうにも気に入らないようだ。


 才能があるというのは大変だなと思いながら、姪っ子の大好物を並べてやる。

 あれだけ頑張っているのだ、このくらいはしてやってもいいだろう。


 料理や何かは、エルヴィラの担当だった。

 といっても、けしてエルヴィラが上手いわけではない。

 イノーラが下手すぎるのだ。


 何しろこの姪っ子、エイリアンペットとして育ったせいなのだろうが……やることが逐一おかしい。

 食材の選び方自体がおかしいのに始まり、肉を焼くのにガスバーナーを出してきたり、冷たくするのに宇宙空間へ放り出そうとしたりする。


 しかも不思議なことに機械全般と相性のいいイノーラが、なぜか自動調理機械とだけは相性が悪い。

 正確には機械そのものは使えているのだが、きちんとした「料理」が出来上がらない。


 原因は、勝手に設定をいじるからのようだ。

 機械に任せておけばいいのにそれが出来ず、「微調整」と称していじっては、食べられない代物を作る。

 そんなわけで料理は、エルヴィラが担当するようになった。


「ほら、そこ座って座って」


 台所と食堂と居間とをすべて兼ねる部屋の、小さなテーブルに姪っ子を着かせる。


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