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Space Shop! ~売られた地球を買い戻せ!~  作者: こっこ
第三章 子供も逃げ出す大冒険?
63/86

Episode:63

 叔母のエルヴィラと話し合う必要はあるが、そこさえクリアすれば、どこへでも好きに行ける。


 そのことに初めて、イノーラは気が付いた。

 エルヴィラが切望して止まなかったもの、それがこの「自由」なのだろう。


 イノーラ自身は、まだ戸惑っている。


 実は銀河市民権を得ようと言われたときも、さほど乗り気ではなかった。

 一生心配があるわけでなし、今までどおり暮らせばいいではないかと思ったくらいだ。


 承諾したのは単に、「宇宙船を任せてくれる」とエルヴィラが言ったからだった。


 元々イノーラは、機械とはすこぶる相性がいい。

 見れば扱えるし、中で何がどう動いているかも、手に取るように分かる。


 そんな彼女にとって、宇宙船は憧れだった。

 他のことはともかくとして、自分の手で船を操作し、自由に宇宙を駆けてみたい。その思いだけは常にあったのだ。


 だから、話に乗った。他に意図は無い。


 イノーラにしては珍しい、行き当たりばったりに近い決め方だったが、後悔はしていなかった。

 宇宙に出て未知のものに次々と遭う生活は、十二分に面白いのだ。


 何より、船を操るのが楽しかった。

 エルヴィラは船を選ぶとき、イノーラに任せてくれた。そして彼女が選んだのが今の船だ。


 予算の関係で旧型のものしか買えなかったが、イノーラ自身は気に入っている。

 けして負け惜しみなどではなく、最新型も触らせてもらった上で、それでもこの船ならいいと思ったのだ。


 新型の船は、たしかに安定していた。それに最新鋭の機能が満載で、便利なものばかりだった。

 だが一方で何もかもが自動化され、誰でも操縦できる安直な船でもあった。それがイノーラには気に入らなかったのだ。


 この船はたしかにボロだが、システムはいい。

 エルヴィラには言っていないが、前の持ち主は何か改造しているはずだ。


 そのせいだろう、こちらの指示に対する反応がいい。

 また旧式なだけに手動部分が多く、そこも気に入ったポイントだった。


 自動のシステムは便利だが微調整が効かない。

 その程度、どうということは……と言う人がほとんどだろうが、イノーラにとってはその僅かな違いがどうしても許せなかった。


 僅かとはいえ明らかによりいい方法があるのに、自動操縦だとそれが出来ないのが、どうにもイヤなのだ。


 けれどこの船なら、そんなことはない。

 自動化されているのは本当に煩雑なところだけで、かなりの部分が手動だ。そのおかげで、思う存分操船できる。


 航行していると、操作盤に浮かび上がるさまざまなデータが実感を持って迫ってくる。

 船の内外で何が起きているのか、手に取るように分かる。


 今ではもうこの船は、イノーラの分身と言ってよかった。

 だから安穏とした生活を捨て、今のちょっと厳しい、だが魅力ある生活を選んだことに後悔はない。


 ただそれでも、時々思うのだ。

 ――もしかしたら両方取れたのではないか、と。


 暮らすに困らない箱の中の生活と、宇宙船を駆る生活、その両方をやれたのではないか。

 何もわざわざ、飛び出さなくても良かったのではないか。


 叔母のエルヴィラが聞いたらなんと言うか分からないが、イノーラはそう感じている。

 そうは言ってもただ箱の中に居るのと宇宙を駆けるのと、どちらかを取れと言われれば、迷わず後者を選ぶのだが。


 だが今は船のことより、この数式のほうだろう。

 飲み物を淹れながら、式の数々を思い出す。


 それぞれの式同士は、一見関係性が有りそうで無い、というどれも微妙なものだ。

 ただ式のどれもが間違いなく、大統一式とは関係がある。


 つまるところあそこで議題になっていたのは、大統一式を中心に展開する「何か」と見ていいだろう。

 それが何なのか。


(やっぱり端末の中、でしょうか)


 飲み物を立ったまますすりながら――いつも叔母に行儀が悪いと怒られる――イノーラは、また映し出されている数式の数々に目を落とした。


 やっと読めるようになりはじめた、この星の数式。

 これからはスピードも上がるはずだ。


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