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Space Shop! ~売られた地球を買い戻せ!~  作者: こっこ
第三章 子供も逃げ出す大冒険?
59/86

Episode:59

 今だから笑えるが、ベニト星に着いたときエルヴィラたちの本来の買い主は、死んだか倒産したかで行方さえ掴めない状況だった。

 そのためソドム人のバイヤーは「このままでは儲けが出ない」と、二人を地下市場へ流すことも考えていたという。


 だがその行方不明者と知り合いだった飼い主が、他の後始末をするのと一緒に、エルヴィラたちも買い取ってくれた。


 売られてしまった以上、地球に帰ることは出来ない。

 仮に返しても「売れる」ことが分かっている以上、またソドム人に捕まって売られる。


 そうなったら次はどうなるか分からない。

 ならせめて自分のところで買って、可愛がろうと思ったのだという。


「帰りたいだろうなぁ、可哀想に。すまんなぁ」


 そんなことを言いながら飼い主はエルヴィラを撫で、よく地球の新しい映像や何かをくれた。

 せめてこのくらいは、ということだったのだろう。


 本当に恵まれていたと思う。

 だから今でも飼い主のことは宇宙で二番目、地球の親の次に好きだ。


 だがそこまでしてもらっても、「自由」の誘惑にエルヴィラは勝てなかった。


 外へ。


 箱の中ではなく、誰かに決めてもらうのではなく、自身で、広い世界へ。

 たくさんの人が居て、泣いて笑って怒って裏切られて、そんな荒波の世界へ。


 イノーラのように幼い頃から箱の中にいれば、考えなかっただろう。

 何しろ飼い主は、エルヴィラたちが死ぬまで困らないようにしてくれたのだ。

 そのまま変わらぬ生活を続けていれば、一生安楽に暮らせたはずだ。


 けれど十歳まで外で育ったエルヴィラには、やはり檻の中は耐えられなかった。

 だから飼い主の死というとても悲しい、けれど千載一遇のチャンスを、逃すことなど出来なかったのだ。


 そして、飛び出した。


 イノーラを説得し、二人で銀河市民権を取り、宇宙船の航行権も取り、宇宙船を買い……。


 たまに思う。

 あのまま安穏と暮らしていたほうが、良かったのではないかと。


 一人立ちする過程で、残してくれたお金のほとんどが消えた。だから後戻りは出来ない。

 後戻りが出来ないからこそ、時々振り返っては考え込む。


 今の自分達を見たら、飼い主はなんと言うだろう?

 裏切ったと怒るだろうか?

 それとも、笑って許してくれるだろうか?


 ため息をつきながら、シャワーを止める。

 今度は髪を乾かしながら、思った。どちらにしても今更、元には戻れないのだ。


 だったらとことんまで突き進むしかない。

 進んで進んで、胸を張れるところまで突き進めば、少しは飼い主に合わせる顔も出来るだろう。


 つやを取り戻したジンジャーブロンドの髪を梳き、久しぶりにラフな服を着た。

 ここしばらくはスペーススーツばかりだったから、その下もきちんとしたアンダーウェアで、けして楽とは言いがたかったのだ。


 しばらくぶりの楽な格好で貨物室へ戻ると案の定、スキャンは終わっていた。既に結果が表示されている。

 人工物――機械類――記録分析用。

 だが最後の結果を見て、エルヴィラは声を上げた。


「該当星系なしって……」


 そんなわけがない。これは目の前の、どこかが植民したネメイエス第四惑星から、この手で持ってきたのだ。

 しかもあそこで誰もが持っていたほど、普及しているものだ。


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