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Space Shop! ~売られた地球を買い戻せ!~  作者: こっこ
第三章 子供も逃げ出す大冒険?
56/86

Episode:56

「なんかね、見たらあっちこっち書いてあるんだよね」

「あら……」


 イノーラが興味深そうに覗き込んだ。


「この式、片方は銀河標準数字ですわね。

 でも隣は……ここの数字でしょうか?」

「あたしに訊かないで」


 商売の交渉ならともかく、数式など間違っても見たくないエルヴィラだ。訊かれて分かるわけがない。


「あぁ、おばさまはそうでしたわね」


 姪っ子が嫌味たっぷりな声で返したあと、続けた。


「おばさま、私ここを全部調べて、すべての引っかき傷を書き留めてから帰りますわ」

「え……」


 数式が相当気に入ったのだろうが、イノーラの言うとおりにしたら、いつまでかかるか分からない。


「本気で、書き留めるの?」

「ええ。

 何となくですけれどこの式たち、何かを教えようとしてる気がするものですから」


 エルヴィラは考え込んだ。


 イノーラは、数字の申し子とでも言うべき存在だ。

 何しろ生体コンピューターの異名をとるベニト人でさえ、彼女の能力には一目置いていた。

 その姪っ子が言うのだ。可能性は高い。


「えーとさ、じゃぁね、画像じゃダメ?」


 提案してみる。

 なにしろこの広さのホールだ。

 引っ掻いて書いたものがどれだけあるか分からないし、全部書き写すとなると、かかる時間も膨大だ。


 何よりそのやり方では、エルヴィラは手伝えない。

 だが画像なら写すだけだ。

 ひとつひとつが短時間で済むし、これならエルヴィラでも手伝える。


「なるべく大きく撮って、船に戻って解析じゃダメかな?」

「あぁ、それでも構いませんね。

 むしろその方がデータベースが使える分、効率がいいでしょうし」


 イノーラの言葉を聞いて、よほど舞い上がっているのだな……などとエルヴィラは思った。

 何事も合理的な姪っ子が、目の前のことに気をとられて効率を忘れるなど、初めてと言っていいくらいだ。


 逆に言うならこれは、それほどの「大物」なのだろう。

 もしかしたら、あとで何か大きな話の一部に、繋がる可能性だってある。


「じゃぁ、あたしも手伝うからそうしようよ」

「ええ」


 珍しく、毒舌ナシに話がまとまる。


「じゃ、手分けしてやろう。

 上のほうと下のほうに分かれて、一段ずつ見ようか?」

「分かりました」


 内心、これで書き写すより早くここから出られると思いながら、エルヴィラは作業に入った。



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