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Space Shop! ~売られた地球を買い戻せ!~  作者: こっこ
第三章 子供も逃げ出す大冒険?
54/86

Episode:54

「あの下のほうに転がってる物体は、死体かな、って。どう思う?」

「そう思いますわ」


 今度は問題なく通じたようで、姪っ子は言葉を続ける。


「ここは一種の閉鎖空間ですから、当時のまま保存されたのでしょうね。

 でもそうだとしても、ずいぶん状態がいい気はしますけど」


 二の足を踏むエルヴィラとは対照的に、イノーラはお宝でも鑑定するような態度だ。


 ――これも何とかしないと。


 物心つくかつかないかで地球から引き離されたために、地球人的な情緒にある程度欠けるのは仕方がないが、ここまで来ると度を越している。


 ただ、姪っ子を「まっとうな」地球人に戻すのは、ムリな気がした。


 銀河文明の中でベニト人に育てられた彼女は、思考も何もかもベニト式銀河式だ。

 要するに人格の基盤がそうなってしまっているわけで、それを今更書き換えるのは、至難の業だろう。


 後で最低限、「地球人とはこういうもの」というのだけは理解させようと決意しつつ、エルヴィラは辺りをもう一度見回した。


「逃げる間もなくて、遺体の回収にも来られなかった、ってことだよね、この状態は」


 感じたことの確認――あまり肯定されたくない――のために、あえて口に出す。


「ええ、そう思います」


 イノーラから肯定が返ってきた。やはり、直感は間違っていないようだ。


 遺体を放置する風習を持つ種族も居るが、それだって生活空間に置いてはおかない。

 居住空間は、極力清潔にするものだ。


 ましてやここは最初に見たどこかの家ではなく、たくさんの人が集っていたホールだ。


 個別の部屋ならまだ「見落とし」という可能性もあるが、これだけの規模のホールなら事態が落ち着けば、すぐに遺体を回収あるいは撤去するだろう。


 なのにこれだけの死骸が放置されたままというのは、そんな余裕さえないほどの危機的状況が、この町を襲ったことを示していた。

 そしてこの町と星は……棄てられたのだ。


 何があったかは知りたい。

 が、怖い。

 そんな二つの想いが、せめぎあっている。


 ここの住人をこれだけ死なせた「何か」が、まだ残っていたら。そう思うと踏み出せない。


「ねぇイノーラ、記録探すのいいけど、キケンじゃないの?」

 さすがに心配で訊いてみる。


「そういわれても、私たちの生命活動に影響を及ぼしそうなものが見当たりませんし。

 それに宇宙服を着たままですよ? 重粒子線も細菌も念波も関係ありません。

 昨日も同じ質問をされたのに、もう忘れまして?」


 姪っ子から、軽蔑の響きと共に答えが返ってきた。


「まぁ、そうなんだけどさ……」


 イノーラがそう言うなら、科学的に見て脅威は存在しないのだろう。だが「未知のもの」に対する恐怖というのは、そうそう拭えるものではない。

 ため息をつきながら、エルヴィラは姪っ子に訊いた。


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