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Space Shop! ~売られた地球を買い戻せ!~  作者: こっこ
第三章 子供も逃げ出す大冒険?
53/86

Episode:53

 昨日と同じように出入口をくぐり、宙を歩く。

 そうやってたどり着いた建物は、今まで見たどれよりも大きかった。


「何に使ってたんだろ」

「シミュレーションでは、何かの行政施設関連か、大型の集会場と出ましたわ」


 姪っ子が淡々と説明した。


「確率からすると、大型の集会場の方が可能性が高いですわね。

 部屋の広さが相当あるようですから」

「なるほ……すごっ」


 そんな会話を交わしながら広めの通路を抜け、開口部をくぐって踏み出した先は、確かにホールかそれに類するものだった。

 球場か劇場を思わせる造りで、中央部分が低く、周囲が階段状に高くなっている。


 エルヴィラたちが出たのは、その一番上の部分だ。ここから下へと降りていく構造らしい。


 言葉を失ったのは、そのスケールだった。

 建物の大きさを考えれば十分あり得るのだが、子供の頃連れて行ってもらったドーム球場くらいある。


 ただ地球なら付き物の、通り道に当たるものは見当たらなかった。

 ここの住人は飛べたようだから、通路は空中そのものだったのだろう。


「ここで何、してたんだろ」

「議会でも開いていたのでは?」 


 そっけない答えをイノーラが返す。


「……せめてオペラ座とか、競技場とか言おうよ」

「種族によっては存在もしないものを、例に挙げてどうするのです」


 本当にこの姪っ子、ひねくれている上に夢がない。まるでコンピューターだ。

 まだ探索が始まったばかりなのに、少し疲れを感じてため息をつきながら、エルヴィラは辺りを見回した。


 さっきも思ったが、銀河文明というのは本当に何もかもが「大きい」。


 このホールと同じようなものは地球にもあった。

 だがあくまでもそれは、地べたに建てたものに天蓋をつけただけで、こんな逆さづりビルの中に作る技術はない。


 だがここも今はがらんとした、ただの空間でしかなかった。何に使われていたかさえ、もう分からないのだ。

 これだけの技術があっても、時の流れの中に消えてしまうという事実に、自分の小ささを感じてしまう。


(銀河文明レベルのソドム人に対抗なんて、やっぱり無謀なのかな……)


 一瞬そんな考えが頭を過ぎったが、エルヴィラは首を払って追い払った。

 何もしないうちから諦めていては、何も出来ない。


 軽く床を蹴って、ホールの真ん中へと向かう。足元に広がるのはたぶん座席で、そこには無数の物体が転がっていた。

 冷たいものが背筋を伝う。


「あれ、たぶん全部、そうだよね……」

「意味がわかりませんから、主語をちゃんとおっしゃってください」


 空中でコケそうになったが、エルヴィラは何とか持ちこたえた。

 とかくこの姪っ子、空気やら雰囲気やらをぶち壊すのが上手い。


「えーとだから、あの座席みたいなとこに、転がってるもの」

「それが『そう』とは?

 ともかくおばさまの言うことは、言葉の形を成していませんわ。銀河標準語を一からやり直されてはどうです?」


 本当に地球のコンピューターのようだ。

 ため息をつきながら、エルヴィラは言い直した。


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