Episode:52
「むしろあたしたちは、何をどうするか考えなきゃね」
「どういうことです?」
イノーラが怪訝な声を返した。
「どういうことって、だから何をどうするかだってば」
「何をどうするかと言われても、そもそもどういう事象に対してかが分かりませんわ。
そこが明確に定義されない限り、どうすると言われてもどうしようもありませんわよ」
エルヴィラの地球人らしい言葉に対して、まるでコンピューターのような返答が来たうえ、更に続く。
「まったく、おばさまはいつもそのへんが、いい加減過ぎますわ。
だから行き当たりばったりの行動が絶えないんです」
「はいはい分かった分かった、努力する」
分かる気も努力する気も無いのだが、とりあえずエルヴィラはそう言った。そうでもしないと姪っ子のお説教(?)は、延々と続くのだ。
エルヴィラは質問を変えてみた。
「イノーラ、あなたはさっきの〝呪われた〟って話、どう思う?」
「あの惑星の惨状がどこかですり替わって、呪われたという説明になったというのなら、一応理解できます。
あまり論理的ではありませんが」
「けど、データベースにはないんだよね……」
エルヴィラにしてみると、やはりそこが引っかかる。
呪われたという言葉が口をついて出てくるほど有名なら、なぜその事件がデータベースに無いのだろう?
それに現実的な答えを出したのは、イノーラだった。
「いずれにせよ、答えはこの惑星にあるんじゃありませんの?
少なくともここが発祥の地なのですから、回答の一端くらいはあると思いますけど。それに――」
そこで姪っ子が一旦言葉を切り、多分そうとは知らず、エルヴィラにとって決定的な一言を口にした。
「あるとすればそれこそ、銀河政府がなんとしても隠したいほどの〝何か〟でしょうね」
「――!」
それがあったと、エルヴィラは思う。むしろなぜ今まで気付かなかったのか、不思議なくらいだ。
無かったのではなく、銀河政府が消した。それなら辻褄が合う。
そして〝それ〟が何かは分からないが、少なくとも知られて困ること、ではあるだろう。そうでなければ、徹底的にデータを削除したりしない。
さらに大きな権力がそういう行動に出るときは、何かのパワーバランスを著しく壊すものが関わっている、というのがよくある話だ。
陰謀論とも言いたくなるが、火のないところに煙は立たない。そしてここは間違いなく、何かが起こった証拠だけはあるのだ。
「……調べるなら、どこがいいと思う?」
姪っ子に訊いてみる。
広い惑星をしらみ潰しにしていたら、一生かかったって終わらない。ならばある程度、絞るに限るだろう。
案の定、的確な答えが返ってきた。
「建物の配置や構造を分析しましたが、とりあえずこの惑星では、この都市が最大です。
そしてこの都市内では、中央の建物が行政府かその代行のようですわ。
ですから、その辺りから調べるのがよろしいかと」
正解とは限らないが、妥当な提案だ。
「じゃぁ次はそこ行くことにして、準備しよっか」
「何を準備すればいいのか、おばさまが分かってらっしゃるとは思えませんけどね」
またもやの毒舌にエルヴィラは肩をすくめながら、用意をするために立ち上がった。