Episode:51
「まだしばらくそこに居るのか?」
「それなんだけどね……」
状況をかいつまんで話す。
「――っていうわけで、第四惑星に降りたんだけど」
「ちょっ! おまっ、あの呪われた星にかっ?!」
情報屋の驚き方は尋常ではなかった。
「呪われた星って……何かあるの?」
「それは知らねぇ。
けど呪われてるから絶対降りるなって、そこ有名なんだぞ」
「そうだったんだ」
呪われているという言葉には、ある意味納得がいく。
あんなふうに死体が放置されたまま捨てられた植民惑星など、そう言われても当然だ。
だが、何かが引っかかる。
理由はわからないけれど、呪われていて降りてはならない星。
銀河系の正規のデータベースには、何の登録もない星。
あまりにもいろいろ、おかしすぎないだろうか?
ほんの少しの間考えて、エルヴィラは決めた。
「ねぇ、このネメイエス第四惑星のこと、洗いざらい調べてくれない?
ちゃんと報酬は払うから」
「珍しいな、アンタがそんな依頼するのは。なんかあったのか?」
問われてエルヴィラは、降りてみたところ死体が放置されていたことや、銀河系のデータベースに当たったが情報が一切ないことを話す。
「おかしいでしょ?」
「おかしいな。よっしゃ、受けるわこの仕事。
あ、報酬はいいぜ。今教えてくれたことだけでも相当価値あるし、調べたこと自体は俺も知るわけだからな」
言うが早いが、契約書が送られてきた。
「ありがとねー、助かる。何か他に分かったら教えようか?」
「そうしてくれたらありがたいな」
そんな言葉を交わしながら互いにサインし、契約書をセンターに送った。これで成立だ。
「んじゃちょっと調べてくるわ、またな」
言って情報屋が通信を切る。
イノーラが不思議そうな声でつぶやいた。
「〝呪われた〟と言いながら、理由を知らないなんて。
理由がなかったら、そんな話にならないでしょうに。そこに今まで、誰も気づかなかったんでしょうか?」
エルヴィラにしてみれば「よくある話」でしかないが、全てに合理的な姪っ子からすると、かなり不可解なのだろう。
いずれにしても説明しきれるものではないので、ちょっとひねった答え方をする。
「誰も気づかなかったから、こうなってるんじゃない?
まぁ、言い出した人に訊いてみなきゃ、ホントのとこは分かんないと思うな」
「それはそうですけど……」
姪っ子はまだ不服らしいが、それでもそれ以上問うのをやめた。
どこかの誰かが言ったことをここで考えても、無駄なことに気づいたのだろう。