Episode:49
地球風に言えばインターネットとでも言うべきデータベースを、エルヴィラはあさっていた。
銀河系政府のデータベースは、既にあさった。そして何も出てこなかった。
最初は自分がきちんと探せていないのだと思った。
だが何度やっても同じ結果で、イノーラに頼んでチェックしてもらっても、やはり見つからなかった。
この第四惑星、銀河連盟に所属していなかったとはとても思えない。
銀河連盟の歴史はたしか十万年に及ぶはずで、ここがそれ以前に棄てられたなら、都市はもっと劣化してるだろう。
それなのに公式記録のどこを探しても、この星のことは出てこない。棄てられたことはもちろん、開拓や移住の記録もまったくなかった。
(――あり得ないよね。なんかおかしい)
頭を悩ませていたところへ、イノーラから声をかけられた。
「おばさま、通信が。あの情報屋ですわ」
「つないで」
姪っ子が頷いて操作すると、例のちゃらけた声が船内に響いた。
「いょう、カワイコちゃん。なんか救世主になったんだってな」
エルヴィラは内心舌を巻きながら答える。
「だからその言い方、ビジネスじゃ使わないって言ったじゃない。っていうか、救世主ってなに?」
「え? ネメイエス全土でそう言われてるって聞いたけど?」
情報屋の言葉に頭を抱える。きっとあの神話にかこつけて、そういう話にされかかっているに違いない。
「困るんだけどなぁ、そういうの。それにしてもアンタ、ずいぶん早耳ねー」
ネメイエスと地球の交渉をまとめてから、数日しか経っていない。なのにもう知っているのだから、情報屋の耳は恐るべき長さだ。
「このくらい分からないようじゃ、情報屋やってらんねーって。
ところでさ、いいだろ、この格好」
情報屋が着ているものを自慢する。
「うん、今回は悪くないかな」
エルヴィラも素直に褒めた。
今回の服装はかなりまともだ。
金髪に翠の目、なのに浅黒い肌と髭――なぜいつも髭なのだろう――を生やしたミスマッチさはあるが、着ているのは海軍の水兵に多い、セーラー服だった。
海の上で敬礼でもしたら、案外サマになりそうだ。
まぁあの熊オヤジバニーに比べれば、なんだってマシなのだが。
「なんかこういう服もさ、地球じゃ人気あるっていうからさ。
そうそう、ちゃんと下まで揃えたんだぜ」
言葉と同時にカメラが引いて全身が映り――エルヴィラは突っ伏した。
「この短さがキモなんだってな」
映った下半身は、超絶ミニスカート。
股間が見えないギリギリの長さで、故に毛だらけの野太い太ももと脛が二本、短めのソックスを履いた状態で晒されていた。
地球人としての感覚がおかしいイノーラは平気らしいが、エルヴィラとしては間違っても見たくない代物だ。
「絶対領域、って言うんだろ?」
「ひぃ」
思わずヘンな声を出しつつ、エルヴィラは視線を反らす。
画面の向こうの情報屋がくるりとターンし、ふわりとミニスカートが舞い上がったのだ。