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Space Shop! ~売られた地球を買い戻せ!~  作者: こっこ
第三章 子供も逃げ出す大冒険?
44/86

Episode:44

「……ちょっと待ってよこれ、降りられないじゃない」


 入り口へ着いての、エルヴィラの第一声はそれだった。


「降りられますよ。まぁ確かに、このままじゃ危険ですけれど」


 イノーラが、身も蓋も無いことを言う。

 二人が足を向けた入り口は、利用は可能だった。ここからなら、容易に中へ入れるだろう。


 ――無事なら、だが。


 どういうふうに使っていたのか、出入り口とおぼしき場所はただの縦穴だ。足をかけるところも、手で掴むところも見当たらない。

降りようと思ったら、飛び降りるしかなかった。


「昇降台とか、ないのかな?」

「見当たりませんね。この穴だけです」


 つまり……この穴はこの状態で、使われていたということだ。


「ここに住んでた人たち、飛べたのかな?」

「可能性はありますね。この都市構造の説明もつきますし」


 仕方なく、装備を整え直して出直すことにする。


 たしかに人間だって、ちょっとした段差や階段は気にしない。

歩ける人がほとんどだから、良いか悪いかは別としてそれで成り立ってしまう。


 この縦穴も、理屈は同じなのだろうが……自分が出来ない側に回ると、けっこう悔しかった。


「飛べない人のことくらい、考えてくれたっていいのに」


 ぶつぶつ言いながら、エルヴィラは再度縦穴へと向かう。


「降りるよ」

「どうぞ」


 出鼻を挫かれてしまったせいか、もう怖さは感じない。むしろ「見てやろう」という闘志が湧いてくる。


 持ってきた斥力場ベルトを稼動させてから、エルヴィラは縦穴へと飛び込んだ。相次いでイノーラも身を投じ、二人で落ちていく。


ただ、スピードはかなりゆっくりだ。展開された斥力場が、勢いが付きすぎるのを防いでいる。

 数メートルほど落ちたあと、二人は猫のように軽く着地した。振り仰ぐと、丸い穴から青空が見える。


周囲は屋上と同じ、クリーム色の材質だ。それがゆるい弧を描きながら、ぐるりと取り囲んでいる。

 そして、目の前には。


「うっわ……」


 出た先は、まるで展望台だった。それとも、出入り自由なぶら下がった鳥かご、と言ったほうがいいだろうか?


 辺りは思ったより明るかった。

 地球にいた頃、ガラスの天蓋に覆われたビルの吹き抜けを見たことがあるが、そんな感じだ。


「なんでこんなに明るいんだろ?」

「この素材、吸収した太陽光を内側に放つようになってますわ。だから、全体が明るいのかと」

「へぇ……」


 理系が苦手なエルヴィラには、何がどうなっているか見当もつかない。

 落ちないようにしながら身を乗り出すと、白っぽい八角形の柱が氷柱のように、びっしりと重なり合いながら、遥か下へと伸びていた。


 ここでどんな姿をした人たちが暮らしていたのか。

 なぜ打ち捨てられたのか。


 廃墟となった町を見ながら想像を巡らすうち、さっきまでの闘志はどこへやら、また背筋を怖さが這い登ってきた。

 静まり返ってぶら下がる建物群は、まさに「墓標」だ。

 そんなエルヴィラヘいつもと変わりなく、姪っ子が声をかける。


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