表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Space Shop! ~売られた地球を買い戻せ!~  作者: こっこ
第三章 子供も逃げ出す大冒険?
41/86

Episode:41

 お茶だけ買いに行くのもどうかと思うが、成り行きでこんな近く――銀河スケールでだが――まで来てしまったのだから、寄り道くらいいいだろう。


 ちょっとうきうきしながら戻り、操縦室の前でドアが開くのを待ち……次の瞬間、エルヴィラは動けなくなった。


 先ほど操縦室に居たときも見ていたはずなのに、なぜ気付かなかったのだろう?

 それとも地表からまだ遠すぎて、見えなかったのだろうか?


 遥かに広がる翡翠色の海。

 黒っぽい大地。

 その上にそびえる幾つもの山脈。

 くねって流れる川らしきもの……。


 色こそ違うがそれは、かつて見た地球の様子に良く似ていた。

 だからこそ、動けなくなったのだ。


 また見たいと思っていた。けれど今まで叶うことはなかった、大気のある地球型惑星の地表。

 それが今、目の前にあった。

 カップをひとつ姪っ子に渡して、自分の席に座る。


「おばさま?」


 いつもと様子が違うことに気付いたのだろう、姪っ子が不思議そうに訊いてくる。


「ついに頭でもおかしくなりまして?」

「あんたねぇ……」


 何もここでそんなことを言わなくてもいいだろう、そう思ったが、エルヴィラは言わなかった。

 代わりに、彼女が黙るようなことを言う。


「地球に、ちょっと似てるんだよね」

「そうなんですか?」


 案の定、イノーラが黙った。

 これでしばらくは静かだ。


 少しずつ冷めていくお茶をすすりながら、ゆっくり近づいてくる地表の様子を楽しむ。

 そのうちふと、エルヴィラは思いついて訊いてみた。


「なんか生き物とか、居そう?」


 大騒ぎばかりで、そういう基礎データも見ていない。


「おばさま、とうとう思考力もなくなりまして?」


 返ってきたのは、またもや姪っ子の毒舌だった。


「文明の痕跡がありますのよ?

 何も居ないわけが、ないじゃありませんか」

「あー、それもそうか」


 何の理由でこの文明が滅びたかは知らないが、かつては知的生命体まで居たのだ。

 それが自然発生なら他の生物もたくさんいるはずだろうし、植民でも、微生物や故郷の動植物を持ち込んでいるはずだ。


「何で無人になっちゃったのかな」

「さぁ? 星を捨てたほうが早い事態でも起こったのでは?」


 たしかに植民星なら、それはあり得る。

 発生星系で、ここが故郷のネメイエス人でさえ、今回の超新星爆発では星を捨てようというのだ。


 植民しただけなら何か起こった場合、受け入れ先が見つかり次第、いや見つからなくても、とりあえず船に乗って脱出したほうが楽だろう。


 それにしてもこの星系、つくづく不運だ。

 せっかく文明を築きながらもこの星は滅び、その後栄えたネメイエスもまた、ここを去ろうとしているのだから。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ