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Space Shop! ~売られた地球を買い戻せ!~  作者: こっこ
第一章 世話焼き飛行は損のモト?
4/86

Episode:04

(理由は……あたしと同じかな)

 あの小さい宇宙蝶に、イノーラも自分を重ねたのだろう。

 売られたとき、イノーラはわずか四歳だった。引き離されるのは相当辛かったはずだ。


(でも絶対、認めないだろうな)

 そういう徹底的にひねくれた子なのだ。十年以上に及んだエイリアン・ペットの生活が、ここまでひねくれさせたのかもしれない。


「そうそう、部屋にはまだ戻らないでくださいね。汚染されている可能性がありますから」

「はいはい」


 どこか楽しそうな姪っ子に逆らわず、エルヴィラは白旗を揚げた。

 さっそく点検に行こうというのだろう、イノーラが立ち上がり、ドアのほうへ歩き出す。


「……計算してみましたがあの星間生物、斥力場がなければ十分な針路変更は不可能でしたわ」

 通り抜けざまに姪っ子が言った。


「まったく演算せずに解を得るなんて、不条理にもほどがあります」

「珍しい、あんたが褒めるなんて」

「褒めてなどいません。なんの計算もない行動は、危険だと言ってるだけです」

 本当に素直じゃない子だと、エルヴィラは思った。


 イノーラにああ言われた以上、何かするわけにもいかず、エルヴィラは操縦席に座ったまま宇宙蝶の映像を再生していた。

 自慢のストロベリーブロンドを、本当は梳かしたい。シャワーも浴びたい。だが姪っ子が後始末に奔走しているのでは、自分だけくつろぐことはできなかった。


 臨場感たっぷりで、全方位スクリーンに宇宙蝶の群れが大きく映し出されている。膜や身体の一部が光る様子は、昔読んだおとぎ話の妖精にも見えた。


(これなら、案外高く売れるかも)

 宇宙蝶は割と知られた存在だが、漂流しかけの船が出会うケースが多いためか、しっかりした記録が意外に少ないという。ならば恒星フレアで飛ばされるところまで映っているデータは、かなり貴重だろう。


 売り込み用の映像にどれを使おうかと考えながら、チェックを入れていく。

 宇宙蝶の群れの観測は、船自体が観測カメラと連動して、自動で継続している。ただ、距離が開いてしまったため、データの質は期待できなかった。


――この辺が潮時かもしれない。

 そう判断したエルヴィラは宇宙蝶の映像の再生を止めて、とある場所へと連絡を試みた。

 相手は、懇意にしている情報屋だ。一匹狼で胡散臭いところもあるのだが、その情報の速さ広さ正確さは折り紙つきだった。


 繋がらなかったら面倒だな、そんなことを思いながら応答を待つ。だが幸い、さほど待たずに相手が出た。

 瞬間、エルヴィラは目の前が真っ暗になる。そしてほぼ同時に響き渡る、やたらノリのいい明るい声。


「はぁいカワイコちゃん、今日はどんなご用かなー? ……ってどしたんだい?」

 声の主が心底不思議そうに言ったが、映った映像にエルヴィラが受けたダメージは計り知れなかった。


 スクリーンに大きく映し出された相手は熊のごときむくつけき、無精髭まで生えた無頼漢オヤジ。

 まぁそこまではいい。だが今回は服装が酷すぎた。


 何しろ着ているのが、黒いビスチェに網タイツ、加えてご丁寧に頭に長い耳――どうみてもバニーガールだ。きっと後ろを向いたら、お尻に丸くてふわふわの尻尾もあるに違いない。

 確実に商談の格好としては間違っている。


 というか、ただひたすらに気色悪い。筋骨隆々、無精髭の毛深いオヤジが扮するバニーガールを正視出来る地球人など、果たしてどれだけいるのか。

 エルヴィラはなるべく画像を見ないようにしながら、絞り出すように返した。


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