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Space Shop! ~売られた地球を買い戻せ!~  作者: こっこ
第二章 あなたに惑星(ほし)の押し売りを
38/86

Episode:38

「早速目を通していただいて、ありがとうございます。ただそれについて、お願いが」

「なんでしょう?」


 移住先が決まったせいか、ネメイエス側はいつも以上に警戒心が薄く感じる。もしつけこむなら、今しかないだろう。


 ――とはいっても、やるわけにはいかないのだが。


 そんなことをしたら、最終的に地球側に被害が及ぶ。そうなれば儲けは取れても、夢から遠ざかる。


 ソドム人が聞いたら笑うだろうが、地球人のエルヴィラにには、やはり夢は大切だった。

 だから、切り出す。


「今すぐにでも、契約書だけ交わしていただけませんか?」

「すぐにですか? ずいぶん急ぎますね」

 ネメイエス側の声に、不思議そうな響きが混ざった。


「そちらの要望ですが、文明の進んだ我々――あ、これは失礼」

「事実ですから、お気になさらず。むしろだからこそ、教育を要望にあげてるわけですし」

 気にしていないことを告げて、相手に言葉の先を促す。


「心遣い痛み入ります。それで要望についてですが、我々がよく検討すれば、もっといい方法を見出せるかもしれません」

 口調に混ざる、諭すような響き。


「契約をすること自体は決まっているのですから、ここは待ったほうがそちらにも得では?」


 本当にこのネメイエスは誠実だ。神話の時代から「何事も相応に」を実践してきただけはある。


「そんなところまで気にしていただいて、本当にありがとうございます。でもこれには、理由があるんです」

 誠心誠意お礼を述べてから、エルヴィラは続けた。


「ご存知の通り、地球はソドム人の餌食になって、子供をペットとして輸出するありさまです。

 そしてこの契約を知ったら、彼らは必ずジャマしてきます」

「それはありそうですね」


 ネメイエスも同意する。ソドム人の悪評は銀河に鳴り響いているから、この点は楽だ。


「ですから今ここで、大枠だけでいいので正式な契約を。契約の代行権ももらいました」

 地球から送られてきた、証明つきのデータを送る。


「今、ネメイエスの星系内で契約してしまえば、ソドム人は手出しできません。お願いします」

「なるほど、それが最後に付け加えられていた、一文の理由ですか」


 合成画像がうなずいた。

「我々もあの連中には、ずいぶん手を焼かされましたからね。

 この契約を急ぐことが彼らへの嫌がらせにもなるというなら、反対する理由はありません。いま契約しましょう」

「ありがとうございます!」


 思わず声が大きくなったのは、仕方ないだろう。地球にとって転換点になるかもしれないのだから。


 そのあとは早かった。

 いちばん最初の話どおり、ネメイエス人の八百五十年間の木星居住権。


 対価として相応の教育、技術、異星人との契約の代行、それに移住の対価とは別枠で地球の防御。 

 詳細はあとでとなった、ある意味雑な契約が交わされる。


 最後にその契約内容が書き換え不能な状態で、ネメイエス、地球、それに銀河政府に送られて終わりだ。

 大きく息をつく。肩の荷が降りたというのは、こういうことを言うのだろう。


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