Episode:31
「あの、でしたら、第四惑星への着陸許可と調査権を!」
宇宙蝶に連れられて来た、あの地球に似た惑星。地上に遺跡のあるあの星へ、降りてみたかった。
とはいえ降りたくても、勝手には出来ない。ここは発生星系だから、管轄政府にお金を払って許可をもらわなくてはダメだ。
だからそれを、対価に欲しいと思った。
「あそこへですか? さすがですね」
「……へ?」
またまた予想外の言葉に、エルヴィラは首をかしげる。
「おや、ご存じない?
実はあの惑星、ネメイエス人でも滅多に入れないところなのですよ」
知らぬが仏と言うべきか、なにやらとんでもないことを言ってしまったらしい。
「話せば長くなるのですが、我々にはひとつの神話がありまして」
「そうなんですか?」
長くなったらイヤだななどと思いつつ、当たり障りのない相槌をうつ。
「その神話によれば我々ネメイエス人は、あの第四惑星の住人がこの星系の守人として、生み出したのだそうです」
「へぇ……」
面白い神話だ。
「我々もかつてはこの神話、ただの作り話だと思っていました。
が、実際に宇宙へ行けるようになって遺跡を発見しましてね。
だから神話は本当のことではないかと、今は言われています」
どこか得意気に語る相手の言葉を、エルヴィラは否定しなかった。
たぶん真実は、彼らにとってどうでもいいのだ。
伝えられていたことと合致する物があり、自分たちの拠りどころとなる。そのこと自体が重要なのだろう。
「そうしたら……着陸はダメですか?」
「いえ。
特例中の特例とはなりますが、この星を救うために尽力してくださるのです。誰も異論は唱えないでしょう。
それに何より、神話どおりですし」
「はぁ……」
神話続きで、だんだんどう答えたらいいか分からなくなってくる。
「その、えーと、今日のことが神話にでも?」
「神話といいますか、予言ですね。
『滅びの時、光に導かれたものが道を指し示す』、そうあるのですよ」
そんな曖昧な言葉、何にでも当てはまるのではないか……と思ったが、口にはしなかった。この手のことに異議を唱えると、後が怖いのだ。
なので、また当たり障りのない答えをする。
「異星人の私には、ネメイエスの神話のことは知識不足で分かりませんが、許可いただけるのなら嬉しいです」
「こちらこそ、喜んでいただけて何よりです」
こうして話はまとまった。