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Space Shop! ~売られた地球を買い戻せ!~  作者: こっこ
第二章 あなたに惑星(ほし)の押し売りを
29/86

Episode:29

「欲を言えばもう百年欲しいところですが、贅沢は言えませんね」

「では八百五十年で」

 エルヴィラはあっさりと条件を飲んだ。


「お、おばさま?」

「黙ってて」


 あまりにも簡単に受け入れたせいだろう、声をあげた姪っ子を黙らせる。

 そして地球の言葉で続けた。


「これ、むしろチャンスだから」


 地球人にしてみればタイムスケールが大きすぎるせいで、七百年と八百年は大差がない。

 十年と二十年のほうが、よほど違って感じるくらいだ。


 だが銀河系の感覚では、百年の譲歩は相当のものだ。

 当然その分、支払われる対価は大きくなる。だったらそこを利用して、もっと引き出そうと思ったのだ。


「よろしいのですか?」

 ネメイエス側もさすがに驚いたのか、聞き返してくる。

 それに対してエルヴィラは自信を持って答えた。


「ええ、それで構いません。地球側もそれだけの期間が必要というのは、理解するはずです」


 大嘘だが、的外れでもない。この辺は口先三寸でどうにでもなるところだ。

 その上で、にっこり笑って付け加える。


「もちろんその百年分の代金は、上乗せすることになりますが」

「お安く願いますよ」


 第一段階の交渉は成立だ。

 慣例どおりここで互いに、自分が把握した交渉内容を、きちんとした記録で交わす。行き違いを防ぐためだ。


 ざっとチェックを入れたが、ここまでの食い違いは見つからない。


 ソドム人のような連中だと、この時点で既に罠が張られていたりするのだが、今回はなさそうだ。

 データバンクに記載されていたとおり、ネメイエス人は誠実な種族らしい。


 少しだけほっとしながら、それでも気は抜かないようにして、エルヴィラは話を続ける。


「具体的な地球への報酬は、どうしましょう?

 私は金額だけ決めて、内訳は移住の話がまとまってからのほうが、いいと思うんですけど」


 詳細を詰めるには時間がかかる。しかもまだ、地球が受け入れると決まったわけではない。

 一方でこうしている間にも災厄は迫っているわけだから、後でいいものは可能な限り先送りして、話を進めたほうがいいだろう。


「そうしていただけると助かります。何しろこちらは、時間がありませんので」

「でしたら金額は相場で、詳細はその範囲内ということで」


 星の買取り――正確には利用権の売買――というのは、銀河系ではたまに行われる。だから星の大きさや種類によって、だいたいの相場も決まっていた。


 本当なら向こうが切羽詰っているから、もう少し金額を吹っかけられるだろう。


 だがエルヴィラは、そうするつもりはなかった。末永く付き合わなくてはならない相手に対して、最初からトラブルの火種を作るのは愚策だろう。


 それに支払いに使えるのはお金だけではない。

 エルヴィラは持ちかけた。


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